57.苛立ち
プリエさんが何もしていないってことがわかった。それだけで十分だ。私がこの男を殴ってしまいそうだ。それだけは絶対にダメ。私もこいつやアイツらと同じになってしまう。それはごめんだ。
「関係ないってか、」
「あ?なんか言ったか?」
「関係ないわけねぇだろ。プリエさんはパーティに入ってなくても、私は仲間だと思ってる。プリエさんが思ってなくても、私が助けたいから、今こうしてんだよ!」
もう後悔なんてしたくない。
「そんな奴にまた仲間ができたって?冗談はよせよ。お前らが後悔するぞ!まぁ所詮、出来たばっかのヘボパーティだろうけど、」
私はまた、思わず行動をしてしまった。男の胸ぐらを掴んでいた。
「いい加減にしろよ。てめぇに何が分かんだ。このパーティのことは所属している私たちが決める。てめぇみたいな心の底から腐ってる様な奴は何か言われる筋合いはない。」
「なんだとっ!」
「あ?」
男を睨み返す。
(できるかわかんないけど、この男だけに怖い幻覚を見せたい。そうだな、大きいドラゴンとかが私の後ろで威嚇しているような。)
「ヒィッ?!」
男の顔が青ざめた。見えたのかな?私は男の胸ぐらから手を離した。男はガタガタと足を震わせている。
「お、おぼえとけよ!」
と言い残して、ギルドから出ていった。私のイライラも男の怯えた表情を見て、どっかに行ってしまった。
パチパチパチ
「ん?」
周りは拍手が起こっていた。何が何だかわかっていないのは、私だけのようだ。そんな時、肩に軽く手が置かれた。振り返ってみると、その手の主はプリエさんだった。
「ありがとな、カリノ。あいつにはうんざりしてたから、助かったよ。」
「あ、いえいえ。私が苛立って行動しちゃっただけなんで。」
「あ、あの!」
今度は後ろの方からだ。また振り返ってみる。そこには、私にプリエさんは何もしてないと教えてくれた女性がいた。
「「ありがとうございます!」」
「あ、いえ。私の声を聞いてくれてありがとうございます。」
「こちらこそ、声をかけて頂いてありがとうございます。」
こんなにいい人の二人なのに、あの男の所にいたのか。クソが。女性は私の後ろ側に視線を移して、ニコッとした。あ、プリエさんだ。私は二人の邪魔にならないよう、身を引いた。久しぶりに会ったんだろう、楽しそうにお互いの手を持ちながら話してる。イライラしてよかったなって、少しでも思える。
「カリノ、もう一度礼を言う。本当にありがとう。」
「なんもですよ。」
少し、昔の自分から成長できたかな。そうだといいんだけど。
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