51.白い天井
白い天井。体はまだ思うように動かない。頭がズキズキする。なんで倒れたんだ、前兆はなかった気がする。いきなり倒れられて、タニアさんびっくりしただろうな。途中で来た人は誰だったんだろうか。
「カリノ!!」
タニアさんの声がした。と声がした方向に視線を移そうとした途端、人が勢いよく覆いかぶさってきた。少し痛かったけど、そんなの関係ない。覆いかぶさってきたのは、予想通りタニアさんだ。起き上がったタニアさんの顔を見る。涙でグチャグチャだった。
「急にだおれだから、びっぐりしました。」
「すいません、自分でもよくわかってなくて。」
タニアさんの涙を拭いたいけど、体が動かない。動いてくれよ。腕に思い切り力を入れようとする。力も入らない、でも諦めなければ、
「カリノさん、体を動かそうとしちゃダメだよ。」
声がした方向に視線を移す。この声、どこかで。
「どうも、私がプリエだ。私の店前で倒れていたんだ。」
「あ、えっと。すいませんでした。」
「そのすぐ謝るの辞めたらどうだ。」
「え、」
そんなことを言われたのは初めてだった。元の世界でも何かと、すいませんって言ってた気がする。
「すいません、ごめんって謝られるためにやってない。それなら、ありがとうの方がやってよかったと思える。」
なんだろう、少し不思議な雰囲気がする。ありがとう、か。
「助けていただいて、ありがとうございます。」
「おう、やればできるだろ」
プリエさんは表情をあまり変えない。だけど、雰囲気が優しくなった気がする。その間も、タニアさんは私の胸に顔をあてて泣いている。動きたい。
「プリエさん、私なんで倒れたんですか?倒れるほど疲れも溜まってなかったですし、」
「お前がそう思ってただけだ。ガーべの使い過ぎで倒れたんだよ。」
みんなで多量のガーべを使うことがなかったから気にしてなかったけど、たしかエネが必要だって。
「今なにを思っているかは、アイリスじゃないからはっきりとわからんが、たぶんお前の思っている通りだ。ガーべを使うのにはエネが必要になる。エネを使い過ぎたら、体が思うように動かなくなる。」
「今の私、」
「そう、だけど少し気になることがある。お前は自分で倒れるような要素を感じなかったんだろ?」
「はい、気づいたら倒れていて」
「エネの使い過ぎは、徐々に頭が痛くなったり、疲労感を感じたりする。」
私はなにも感じなかった。他の人と違うことでもあるのだろうか。思い当たる節ないけどな。
「これは私の憶測でしかないが、カリノ。」
「はい?」
「お前はもしかしたら、エネの上限がないのかもしれないな。」
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