50.始まりの場所
「タニアさん、ここって。」
「そうです、私たちが初めて会ったところですよ。」
タニアさんの荷物が盗まれて私が初めてのガーべを使った場所。ずっと前な感じがするけど、まだ四日ほどしか経っていない。今までで一番濃密な時間を過ごしている。
「さぁ行きましょう。」
トコトコとタニアさんが歩き出した。
「待って!」
私は咄嗟にタニアさんの手を掴んでいた。心配だからだ。こんなところではぐれたら、まずい。ずっと見つからない気がする。
「手、繋ぎましょ。ここで迷子はまずいですから。」
「そうですね、カリノしっかりついてきてください!」
まるで自分が発案したかのように、胸を張って言う。かわいいから腹立たないけど。でも、私がやばいな。緊張で手汗をかいてしまいそうだ。タニアさんの手、すごく柔らかい。ダメだ、こんなことを考えてたら。
「カリノ、そこ曲がりますよ。」
暗い路地を曲がる。あまりいい雰囲気ではない。タニアさんがこんなところに入って行くなんて、不安になってしまう。少し歩くと、提灯のような明かりが見えてきた。
「ここが私たちがよくお世話になってる、雑貨屋さんサリュです!」
「雑貨屋、ですか。趣のあるお店ですね。」
「私たちは子供の頃から通ってます。今は外出しているようですが、マスターのプリエはカリノを成長させてくれると思います。」
私の成長、プリエって人は何者なんだろうか。このお店の雰囲気だけで想像すると、すごく怖そうだ。
「ほんとはすぐにプリエと会って欲しいんですけど、タイミングが悪いですね。」
「もう少し待って見ますか?」
「そうですね、いいですか?ここで時間が経ってしまいますけど、」
「いいんですよ、プリエさん気になりますし。」
私とタニアさんは、店前の階段に腰掛けた。さっきの人混みから一本入っただけなのに、こんなにも静かなのか。まぁ東京とかもこんな感じなのかな。
バタンっ!
あれ、なんだ。体が動かない。
「カリノ!どう、、たの?!カ、、、!」
私が倒れたのか。どうしよう、意識がもう、保てない。タニアさん、辛そうな声を出さないで。起きろよカリノ。悲しませるな、頑張れ。
「タニ、、、!ど、、、した?!」
「プ、、ん!どう、、よ。くる、、、るよ?!」
「まか、、、な!」
誰か来たのか、頼む、タニアさんを。
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