5.出会い
タニアさんと共に大きな道からは少し外れた路地を歩く。
ついて来てください、と言われてからは終始無言だ。いつもなら誰かと一緒にいて、無言になってもどうだっていい。その時間が来るといつでも妄想をしていたからだ。
だけど、今は違う。いつもとは違うからだ。妄想の素材となる推しにそっくりな人が目の前にいる。
立体的に見えている分、もっとリアルに妄想できるのだろうが、さすがに別人だし、心が痛む。
「カリノさん」
「え?」
名前を呼ばれたと思ったら、私が壁に激突していた。注意喚起だったのか。
危ない、とか言ってくれたら立ち止まったかもしれないのに。まぁ、悪いのは前向いて歩いていない私だけど。
(おでこを冷やすものが欲しいな)
そう思うとやっぱり氷のうが降ってきた。なんて便利な力なのか。
この世界では、こういう特殊能力が普通なのかな。元いた日本よりも退屈しなそうだ。
「冷たくて、気持ちー!」
少しだけタニアさんから目線を感じたような気がした。気のせいか。
そのまま私たちは、十分ほど歩いた。
「カリノさん、ここです。」
私は周りよりも少し古びれた建物の前に立っていた。
扉を開け、タニアさんが建物に入っていく。それに続いて私も足を踏み入れた。
そこは、バーのような場所で、先客が三人いた。
まず一人目。メイドさんのようだけど、少し目がきつい。見た目は怖いけど、人には尽くしそうなタイプに見える。
二人目。さっきのメイドさんとは打って変わり、とてもニコニコしていて笑顔の可愛らしい人だ。でも、こういう人に限って裏の顔が恐ろしかったりする。
三人目。特に特徴がない。この子とは仲良くできそうだ。
「この子が例の方なんじゃないかと」
「あぁ?こんなちんちくりんが?」
あ、前言撤回。一人目のメイドさん、見た目も性格も怖い。めっちゃ顔をジロジロと見られる。私、もうそろそろ足が震えそうです。
「こらキキョウ、やめなって怖がってるよ。」
メイドさんの名前はキキョウか。ニコニコさんはやっぱり笑顔で止める。なんか、微妙に楽しんでいるように見える。
「サフラも楽しまないの。ごめんね、こんな面倒くさい奴らばっかで。ぼくはアイリス、よろしくね」
やっぱり楽しんでたのか。アイリスさんはこの中で一番落ち着いていそうだな。まぁ、全員悪い人ってわけではなさそう。
けど、この四人の共通点ってなんだろう。なんか意外なメンバーだな。
「カリノさん、お願いがあります。私たちと一緒にこの世界を救ってくれませんか?」
読んでいただきありがとうございます。
カリノが出会った、タニア、キキョウ、サフラ、アイリス。個性的なメンバーと世界を救う?!