45.大事件ーアイリス
カリノたち大丈夫かな。二人プラス一匹が巣穴に入ってから約五分。相変わらずカリノの妄想癖は続いてる。あいつの頭の中見るのが一番楽しい。
「アイリス、私たちはどうしましょうか。」
「今は入口前で見てるしかないね。なにか予知があったりした?」
「いいえ、なにもないです。でも、それが逆に心配というか。」
なにもないならいいのだが、確かに今回は少し不安だ。
「なぁ、なんかザワザワしねぇか?」
「ザワザワ?」
「あ、周りがじゃなくてよ、嫌な予感がするというか。」
キキョウの予感は当たりやすい。なにかあるのか、このクエストに。まぁなにか起こらない限り、下手に動くこともできない。カリノたちの情報か、タニアの予知待ちだ。
「静か過ぎねぇか?」
「そうだね、少し妙だ。」
こんな森の中でベーア以外のモンスターがいないなんてことあるのか?それくらい、ベーアが凶暴なのか、それとも何か、
(アイリス、聞こえてるといいんだけど。巣穴にいたベーアがみんな死んでる。もしかしたら、まだ近くにいるかもしれない。気をつけて。)
ベーアが全部死んでる?!いや、ベーアは巣穴一つにつき、二、三十頭はいるって話がある。それほどのことが簡単に出来るわけない。ましてや、巣穴の中は暗い。自由に身動きが取れない状態で討伐をするなんて。いや、相手はモンスターかもしれない。だとしたら、静か過ぎる。人間の仕業なのか?
「了解したよ、そっちも気をつけて。」
「どうしたんですか?」
「巣穴の中にいたベーアが全部死んでたって。」
二人とも目を丸くしている。心の中も穏やかじゃなさそうだ。討伐されてからの時間もそんなに経っていないようだけど、僕たちはなにも見てないし、感じられてもいない。それに、僕のガーべが一切反応しなかった。人間だったら、声が聞こえてくるはずだ。
「とりあえず、まだ近くにいるかもしれない。緊張感持っていこう。」
「わかりました。」
「おう、任せとけ。」
今回のクエストどうなってる、今までこんな状況聞いた事ないぞ。モンスターがどうかはよくわからない。だけど、一人だけ怪しい奴がいる。僕のガーべをすり抜ける奴。
「これは、大事になるかもな。」
僕が思っていることが確かだとしたら、そいつを今すぐぶん殴りに行きたい。
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