44.大事件-カリノ
「え、なんだよこれ、、、」
サフラの変な感じってこれだったのか。
「ベーア、あまり見ない方がいい。」
「主、もう気配でわかる。何者かがここに侵入し、皆を殺したと!!」
さすがの私でもわかる。ベーアの雰囲気が変わった。そりゃそうだ、目の前には仲間の死体が広がっている。アイリス、聞こえてるといいんだけど。巣穴にいたベーアがみんな死んでる。もしかしたら、まだ近くにいるかもしれない。気をつけて。
「了解したよ、そっちも気をつけて。」
よかった、通じてるみたいだ。とりあえず、どうしようか。ベーアの討伐クエストどころじゃなくなってしまった。
「ベーアはどうしたい。私は巣穴を探索しつつ、ガーべでみんなを回収してお墓を作りたいんだけど、いいかな?」
「お墓、とは?」
「なんて言うのかな、亡くなった人に安心して眠って貰って、私たちが会いに来れる場所、かな。ごめん、あんまり伝わんないね。けど、元いた世界ではみんなそうしてたの。」
ここにいたベーアたちは、きっと何もしてない。理不尽に殺されてしまった。そんなベーア達をこのまま放っておくわけには行かない。
「主、お願いします。」
「うん、じゃあとりあえず探索しようか。もしかしたら、まだ近くに敵がいるかも、二人とも気をつけてね。」
私たちはベーアが眠っている場所に、足を踏み入れていく。離れているとあまり分からなかったが、30頭くらいはいるんじゃないか。一頭一頭チェックしながら、回収していく。ここにある死体の共通点、全員に大きな爪痕が複数ある。
「だいぶ悲惨だな。」
「うん、そうだね。こんなことする奴、絶対に許しちゃいけない。」
誰だこんなとした奴。本当は今すぐ探して、懲らしめてやりたい。だけど、今の私じゃ無理だ。もっと強くならなきゃ、もっとガーべを学んでもっと。
「主、そいつで最後だ。」
「ほんとだね。」
私はそっとベーアを撫でる。まだ少し暖かい、討伐されてから時間が経ってないんだ。もう少し早く到着していれば。
「え、なんで。」
私はベーアの爪痕の周りに触れた。すると、爪痕の周りだけが、異常に冷たい。一体だけもう一度その場に出す。このベーアもだ、冷たい。私は立ち上がり、ベーアを回収する。
「外に出ようか。」
「もう探索はいいの?」
「うん、アイリスにも聞きたいことがある。ベーア、いいかな?」
「えぇ、我はいいですぞ。」
「ありがとう」
私たちは元来た道を進み始める。私が思っていることが確かだとしたら、そいつを今すぐぶん殴りに行きたい。
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