41.森の中
まだ日は昇ってるはずなのに、木が高いせいで薄暗くなってる。何かがピーピー言ってるし、すごく不気味だ。
「不気味なところですね。」
「我々ベーアは普段大人しいが、危険がある。だから、人気のない場所を選んだんじゃよ。」
「というそうです。」
ベーアの声が自分にしか聞こえてないって不便だな。あれだ、翻訳○○にゃくみたいなのがあればいいのに。異世界だから、わんちゃんなんて考えるよね。
「んー聞いたことないね。」
「ふぁっ?!」
「今更なんだよ、その反応。」
いや、完全に自分の世界入ってた。一瞬全部口から出てたんじゃないかって思ったわ。
「そもそもモンスターと会話しようって思ったことないかも。」
「みんなが話せるようになる可能性はないのかな?」
「んー難しいな。そういうガーべがあれば、なんか作れそうだけど」
可能性があるなら、それを信じるしかないか。モンスターがなんでそこにいるのか理解できた方がいいだろうし。無造作に討伐していくのは、なんだか可哀想だ。
「生きるためには仕方ないってことだよね、理不尽だけどしょうがない。」
「そんなもんなのかな。」
「主は、我々モンスターを助けたいと思ってくれるのですか?」
「え?」
ベーアが急に話し始めた。助けたい、そうだな。モンスターにも生活はあるんだし、家族も仲間もいる。私たちとそんなに変わんないじゃないか。ただ、容姿が違うだけ。
「うん、思うよ。モンスターも人も一緒だもん。」
私はしっかりベーアを見る。これが本気だって伝えるために。
「優しき心の持ち主ですな。」
「そうかな?」
ベーアも案外怖くないかもしれない。この子を信じてもいい気がする。と、周りを見ると四人はよく分からなそうな顔でこっちを見ている。そりゃそうか、傍から見ると私は一人で話してるわけだ。
「楽しそうですね。」
「すいません、話しが通じないのに」
「いいんですよ、カリノ、すごくワクワクしてるように見えるから」
そんな風に見えてたのか。ちょっと恥ずかしいな。でも、こんな異世界に来てオタクがワクワクしないはずがない。憧れだったし。日本とは全然違う新しいことばかりだし、何より充実してる。人とふれあうことがこんなにも楽しいことだって知らなかった。人に恵まれたってのもあるのかな?
「そう思ってくれてよかったよ。」
アイリスはにこやかに言った。
「お?なんの話だよ。」
「キキョウには、ひみつー」
「アイリスちゃんうちはー」
「サフラもだよ、カリノと僕のひみつ」
ひみつにする必要があるのかは分からないけど、アイリスが楽しそうだからいいか。
「主、もうそろそろですぞ。」
「そっか、気を引き締めよう!」
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