37.傷つけないために
「なるほど!カリノさんの氷結型を使えば冬も作り出せるんですね!」
「ベーアがいる周りだけを冬にしてしまえば、大人しくなるはず!」
そうと決まれば、今すぐ実戦だ!
「キキョウ!いい案が出たから、ベーアから離れて!!」
「了解!」
キキョウは足をうまく変形させ、飛んできた。
「それで?いい案ってのは?」
「まぁ見てればわかるよ。」
(まずは、ベーアの周りの地面を氷漬けにする!)
地面が急に氷漬けになったため、ベーアは足を滑らせていた。たしかに、あれだけ見ていれば可愛いのかもしれない。
(ベーアを乗せるソリを氷で作る、それで巣穴まで移動できるようにする。)
ベーアは氷で出来たソリに乗せられた。日光によって体温が上がるのを防ぐために屋根付き。それと気温に負けないよう、溶けにくいものにした。
「ほんとにベーアが大人しくなっちゃった。」
氷のソリに乗せてからのベーアは、周りをキョロキョロしながらキョトンとする。ただのかわいいクマだ。
「あとはこれを移動させれば、」
「でもよ、ちんちくりん。ベーアは何体もいるんだぜ?」
「巣穴の周りを冬にしちゃえば?」
でも、そう簡単には行かないよな。実際、ベーアがどれだけいるのかも知らない。無茶な作戦だったのか。
「ねぇカリノさん。なんかベーアがこっちをずっと見ている気がするのですが。」
ほんとだ。すごく視線があっている。ベーアが仲間にして欲しそうにこちらを見ている。という、セリフが流れてきそうだ。
「そのとおりじゃ!よくわかったな譲ちゃん。」
「誰?!」
「どうした?カリノ、誰も話してないぞ?」
でも、今はっきりと声が聞こえた。このパーティには男はいないはずだ。なのに男性の声がした。え、怖いです。普通に怖いです。私にしか聞こえてない声ってなに?!心霊現象だよ。私そういう系統の話は苦手なんだよ。
「なにを言っておる。わしだよ、わし。」
わしってなんだよ。オレオレ詐欺ならぬ、ワシワシ詐欺かよ。もういいから、誰なのか言ってくれよ。反応からするに私が考えてることはわかってるんだろ?
「カリノ、誰と話してるの?いつも以上に心の声がうるさくなってるよ?」
「いや、なんか声が聞こえるんだよ。譲ちゃんだとか、わしだとか。」
「慣れないガーベを使って、頭おかしくなったんじゃないか?」
「キキョウにだけは言われたくないよ!」
ほんとになんの声なんだよ。
「だから言っておるだろうに。わしだよ、譲ちゃんの目の前におるじゃろ?」
は?まさか、この声って・・・。
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