31.フロスト
「なぜわざわざ、私たちのところに来たのですか。フロストさん」
タニアさんが怒っている。やっぱり、あのとき四人の目が変わったのは見間違いでは、なかったようだ。
「久々に会ったというのに、なんだその態度は。それに今様があるのは、お前らじゃない。こいつだ」
フロストは私の肩に触れながら言う。ガーベの影響なのか、手がひんやりとしている。
「だから何だよ。カリノから手を離せ」
初めてキキョウから、ちゃんと名前を呼ばれた気がする。って、そこじゃなくて。キキョウもかなり怒っているようだ。フロストの腕を掴み、振り払う。すると、フロストのすぐ側でキンっと何かが弾かれるような音がした。
「そんなに警戒するな。サフラもあまりガーべを使うと、あの時みたいになるぞ?」
咄嗟にサフラの方を振り向く。目が開いている。初めて見た、その目は赤黒くて、今にも吸い込まれてしまいそうだ。
「私に何の様ですか。出来れば、手短にお願いします。」
「では、手短に言う。カリノと言ったな。お前は、俺たちのパーティに入れ。」
周りがざわついている。フロストがこんな新人をスカウトすることが珍しいのだろう。
「ふざけんな!誰がお前にカリノを渡すかよ!!」
「キキョウ落ちついて。なぜ私なんですか。少なくとも、もうすでに仲間がいる人を強引にスカウトするようなパーティには、入りたくありません。」
フロストが私をスカウトしてから、空気感がすごく重たくなった。この人がいるだけで、こんなにも違うのだ。
「お前にとって、その選択はミスだ。」
「あなたにミスかどうか、決められる筋合いはありません。」
「そのパーティにいても、お前は成長できない。」
誰かに似ている。フロストの目元が。
「いい加減にしろよ、フロスト。」
「出てくるな、アイリス。」
あ、アイリスさんだ。この二人、目元が特にそっくりだ。でも、兄妹だとしても、こんなに仲が悪いものなのか。
「とにかく!私は、このパーティに残ります。タニアさんのそばにいると約束しました。もう結論は出ています。」
「タニアのそばにいるか。やはり、お前の選択は間違っている。」
「間違っていても、それを乗り越える覚悟は出来ています。お引き取り願います。」
すると、フロストは後ろを向き出口に向かって歩いていく。
「アイリス、時間の問題だぞ。」
立ち止まったと思うと、そう言ってギルドを出て行った。何が時間の問題なのか。
「ごめんね、カリノ。こんなのに巻き込んじゃって。このパーティが嫌になったら、解約してもいいから。」
「するわけないじゃん。言ったでしょ、タニアさんのそばにいるって。タニアさんのそばってことは、みんなとも一緒にいるってことだよ。自分からは解約しない。もう決めてるから。」
「カリノは、優しい奴だな。」
アイリスは少し笑っていた。でも、それは作り笑いだろう。
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