30.ガーベ発表会が終わり
ガーベ発表会の方も少し落ち着いてきた。私の発表が終わった後からは、みんなでテーブルを囲んでご飯を食べている。
「にしても、ちんちくりんはすごいな」
「どうしたの?急に」
「いや、あのフロストを前にして同じようなガーベを使うなんてさ。氷結型があまりいないのもそうだが、誰でもかなり勇気のいる事だ」
正直あのときは、みんなのことしか頭になかった。フロストが出てきてから四人だけ表情が違った。必ず何かあると思った。そんなときにアイリスから自分を信じろって。しかもタニアさんもそう言うなら、やるしかないだろ。
「ほら一番だって言ってたから、宣戦布告みたいな?」
「これから大変になりそうですね。」
まだ始まったばかり。元の世界では、妄想しかして来なかったけど、ここではたくさん挑戦して行きたい。前を向いて生きていきたい。
「今のままじゃ一番には、程遠いよな。」
「そうだよね。」
「ガーベを鍛えるだけじゃダメってこと?」
「そう、うちらは今、ギルドの中でもほぼ底辺。一番を早く目指すなら、レベルの高いクエストをたくさん受けないと」
なるほど、パーティにもクラス分けがあるのか。難しいクエストを受ければ受ける程、クラスが上がっていく。フロストはどんどん難しいクエストを受けるだろうから、離されて行ってしまう。
「難しいクエストを受けるだけじゃないけどね。」
「何でですか?そのほうが効率よく行くのに。」
「難しい分、体力の消耗がすごいんだ。それに、知名度が上がるほど、指名のクエストも来る。」
「フロストたちへの指名は多くの貴族から来ています。」
フロストって、そんなにすごいのか。そりゃ、みんなが歓声を上げるよな。ヒーローみたいなもんだ、みんな憧れる。そんな人たちに勝てるのかって、過去の私に言ったら、絶対に無理だって言う。だけど、こんな短い時間で人は、変われる。絶対成し遂げてやる。
「いい意気込みだよ。みんなで成し遂げよう。簡単なクエストを通して、全員のガーベを再確認だ。」
「よっしゃ!やってやるぞ!」
なんか、青春を送っている気がする。仲間ってこんなに良いものなんだ。
「さぁ、早く食べ終えて、早く寝よう!また明日、クエストを受けて確認しようか。」
「そうしましょう。」
明日から一番を目指してやっていく。充実した日々になるだろうか。
「おい、お前さっきの奴だよな。」
「え?」
急に肩に触れられた。顔を上げてみるとそこにはフロストがいた。
「なぜわざわざ、私たちのところに来たのですか。フロストさん」
そう言ったのは、タニアさんだった。顔を見ずとも分かる。声がすごく怒っているようだ。
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