26.パーティの楽しさ
「はぁ、はぁ。アイリス、追いかけ回しすぎ・・・。」
「だって、カリノが・・・。」
私とアイリスは、少しじゃれるつもりが、だんだんとガチになってしまった。こんなに走ったのは久しぶりなので、心臓がバクバクしている。しんどすぎる。
「お前ら、やり過ぎだろ。」
「大丈夫ですか?はい、水置いときますね。」
「ありがとうございます。」
私はテーブルに置かれた水を頂いた。冷たくて気持ちがいい。アイリスも頂いている。私たちは飲み干したコップをテーブルに置いて、立ち上がる。急に立ったから、少しフラついてしまう。そこをサフラが支えてくれる。
「大丈夫?」
「うん、生まれつき貧血気味なんだよね。」
「無理だけはしないでね。なんかあったら、うちの肩使って」
「ありがとう。」
私はサフラの肩を借りながら、イスに座る。そういえば、晩御飯まだかな。話に夢中になってたから、時間の感覚がよく分からなくなった。
「もうそろそろだね。メニュー頼んじゃおうか。」
と言うと、店員さんを呼んで、パーティセットというものを頼んだ。いちいち考える必要がなくて楽だな。
「そういえば、キキョウの服装って、ギルドで働いてても違和感ないよね」
「ん?あ、そうだな。別の服装でもいいんだけど、なんかこっちのがしっくり来るんだよ。」
そんなもんなのか。まぁ、確かに自分にしっくり来るものってあるもんな。
「カリノもその服装が落ち着くの?」
あ、そうだ。ガーベを使って服装を少し変えていたのだが、パーカーが一番落ち着くのでそこは固定だった。
「そうだね。私もこれが落ち着く。」
「いいね、似合ってるよ」
「褒めても何も出ないからね」
「わかってるよ。」
でも、この日本で当たり前だった服装は、この世界で少し浮いている。変えた方がいいのか、と考えたときもあったが、面倒くさくてやめてしまった。異世界に来たら、世界観に合わせた服装で冒険したいと妄想したこともあった。だけど、実際にその立場になるとどうでもよくなってしまった。
「別に変えなくていいよ。カリノなら見てるだけで満足でしょ?それに、カリノはカリノの個性でいいんだよ。」
「途中バカにしてたような気がするけど、まぁ私の個性で行くよ。」
そんな会話をしていると、続々と人が集まって来ていた。アイリスが言ったからには、何か理由があるんだろうけど。
「さぁ、もうすぐ始まるよ。カリノは特にちゃんと見ておくんだぞ。」
何人かが前方へ集まっている。何が始まるんだろう。
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