21.思っていること
異世界生活一日目にして、ほとんど寝れなかった。完ぺきに原因は、私の発言なんだけどな。何が何だか分からなくなってしまった。気が重いけど、ギルドへ足を運んだ。
「あ!ちんちくりん、遅いぞ。」
「え、いや、でも、まだ十時半ですよ?!」
「僕たちが早過ぎたんだよ。一番早かったのは、お嬢だけどね。」
タニアさんが?少し意外だ。てっきり、アイリスさんかサフラさんが一番だと思っていた。
「カリノさん、昨日はすいませんでした。」
私が席につくなり、タニアさんが深々と頭を下げた。
「いや、顔を上げてください。皆さんは何も悪くないですよ。たぶん、私が何か言ってしまっただけで」
「そうじゃないの、違うの。」
タニアさんの声が震えていた。絶対に何かある。それは、この状況からして誰でも分かることだ。でも、やっぱり聞くことはできない。こんな泣きそうな声で言い出そうにも言い出せないような。
「タニアさん、涙を拭いてください。私は別に何でもいいですよ。皆さんが何を抱えていようとも、絶対に話してくれとは言いません。話したくなったり、知って欲しかったら、いつでも言って下さい。最後まで聞きますから。後、私が邪魔でも言って下さい。二度と皆さんの前には現れませんから。」
それしか言えない。この返答次第で私のこれからが決まる。でも、こんな泣かせてしまうほどだ。解雇されてしまうかもしれない。
「それだけは、絶対にありえません!!」
タニアさんは、机を叩きながら言った。涙ぐんだ目でこちらを睨んでくる。小動物だと思っていたが、そうではないようだ。
「カリノさんは、訳のわからない世界で訳のわからない私を助けてくれました。あの出会いは、運命です!あなたは優しすぎます。だから、私たちがもし、本当に邪魔だと言ったら、二度と出会えないでしょう。そんなの絶対に嫌です!確かに、まだ言えないこともあります。だけど、いつか必ず言いますから、いなくなるなんて言わないで下さい。私のそばにずっと居てください!」
タニアさんは、だいぶ感情的になっている。本格的に泣き出してしまった。こんな展開、妄想の中でしかなかったのに。本当に自分の身に起きてしまうとは。人生なにがあるか、分からないものだな。
「そんなに泣かないで下さい。大丈夫です。私はタニアさんの側にいます。」
「ほんと?」
「はい。約束します。」
思い返してみると、プロポーズのような所もあったが、まぁいいだろう。私はタニアさんのそばでみんなを守って行こう。
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