20.なんかしちゃったかな
どうしよう、こんな面倒くさいような人たち相手したことない。本当のことを言おうにも、この世界にはアニメやマンガはない。日本で異世界ものを見ようとしよう、それがこっちでは日常だ。逆に日本での日常を見たとしたら、異世界ものになるという事だ。説明に困る。
「こっちにも学校はあります。だけど、カリノさんはガーベを習わなかったんですよね。それどころか、この世界の事を知りませんでした。では、何を学んでいたのですか?」
「何を、か。私が得意だったのは数学かな。」
「数学ができるのですか?それなら、研究者になれますよ?!」
そんなに驚かれる事なのか?ただ、私は頭のいいキャラに憧れて猛勉強しただけ。オタクさんの中には、私以外にもその経験がある人は必ずいると思う。
「研究者は大袈裟ですよ。さすがにそこまでは出来ないです」
「この世界では日常で使う程度の計算しか習わないんだよ。」
「だから、脳筋が多いんですか?」
私は、タニアさんとアイリスさんの方に視線を移しながら言った。その本人たちは、なんの事か分かっていないのか、首を傾げていた。
「んー、たぶんそうかな。君がいた世界よりも知能は低いと思うよ。勉強もほぼ自主制だからね。」
「アイリスさんは、自主的に勉強したんですか?」
「どうしてそう思ったの?」
「え、いや何か。すごく物知りだし、説明も上手くて、何でも知ってて頼れる人って感じがするから」
「たぶん、カリノが思ってるほど良いものじゃないよ。」
少し、アイリスさんの声のトーンが落ちた。何かマズイことを言ってしまったのだろうか。アイリスさんは遠い目をしている。
「カリノさん、カリノさん!やっぱり元いた世界とこちらは、全然違いますか?」
しまった。ぼーっとしていた。えっと、返事しないと
「そうですね。そもそもガーベのような能力もなかったですし。街並みもこんな豪華じゃないですよ。あんな大きなお城もないです。」
「そりゃあいいな。行ってみたいもんだぜ。」
なんか、急にみんなの空気が重くなってしまった。なんでだろう。知りたい、だけど今日この世界に来た新参者が聞いていいような内容じゃない気がする。なんでかは、分からない。だけど、私の本能がそう言っている気がする。
「あ、あの!今日は皆さん、初クエストでお疲れだと思うので!また明日、今後について考えましょう!もう休みましょう。」
「そうだね。今日はそれぞれ宿を取ろう。また明日、ここに11時集合で」
そう言ったアイリスさんは、みんなにお金を渡し、ギルドを出て行った。お金をもらった三人もそれぞれ、お疲れ様と言って、ギルドを出て行ってしまった。振り返って見た四人の背中は、少し寂しく見えた。
「私、明日から大丈夫かな。」
一人になった私は、そうつぶやいてギルドを後にした。
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