18.初めての食べ物
「気持ちよかったー!」
「お?いい声だね。」
「腰の疲れがよく取れました。」
そう、クエストの帰りにタニアさんをずっとおぶっていたのが響いていた。久々に背負ったからか、引きこもっていたことを少し後悔した。
「よっしゃー!飯だ、飯!!」
「あ、落ち着けって!」
アイリスさんの声は届かなかったらしく、三人は走って行ってしまった。タニアさんとキキョウさんは分かるが、サフラさんまで。そんなに楽しみなのか。
「大変ですね、アイリスさんも」
「まぁね、君が来る前は四人だったからさ、僕まで走らされてたんだ。だけど、今は君がいるから別にいいかなって。」
なんか、ちょっと嬉しいな。こんな風に誰かに必要とされた覚えがないから。妄想じゃなくて、ちゃんと言葉にされるのがこんなに嬉しい事だなんて、知らなかった。こういう、しんみりとした事を考えているとアイリスさんは突っ込んでこない。気を使ってくれているのか。あ、ちょっと耳が赤くなってる。
少し歩いてギルドのテーブルに腰を下ろした。アイリスさんが注文をしてくれたから、後は待つだけだ。やっぱり、三人共そわそわしている。小動物みたいで、なんかかわいい。
「ハーゼって、どんな味するんですか?」
「めっちゃ美味いぞ!なんかこう、ジュワッ!って感じで!」
「そうそう!あのジュワッ!って感じがいいんですよ!」
あー、この人たちに聞いたのが間違いだと思った。肉なんて大抵、ジュワッ!としないか?
「食べてみるのが一番早いね」
「そう、ですね」
どんなのが運ばれて来るのか楽しみだ。この世界は温泉もあったし、日本とそんなに変わらない気がする。街並みは全然違うけど。てことは、ウサギと同じような感じなのかな?食べたことも食べたって聞いたこともないけど。
「お待たせしました。」
「おぉ!」
こんな料理は見たことがない。ハーゼはたぶん大きすぎるから、部位ごとに分けられているのだろう。皿の数はすごく多い。その一つひとつがキラキラしてて、香ばしいいい匂いがする。サラダと一緒に盛り付けられたり、骨がついてたり、とりあえずキラキラしてる!!アニメのご飯みたい。って、これじゃ二人と感想が変わらないじゃん。私も語彙がなかったわ。
「かんぱーい!!」
「ほら、カリノ。君が最初に食べな。」
「え、いいんですか?」
「あぁ、実際、今日一番頑張ったのはお前だ。」
たまに見えるキキョウさんの優しさが染みる。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
私は一番近くに置かれていた、骨付き肉を手に取った。
読んでいただきありがとうございます。