121.誰かの声
私はレザンとトラウベから少し離れ、呼吸を整える。レザンが暴走する様子もないので、ガーベで作った鋼の壁を少しずつ消していく。これだけのものを作ってしまうと、消すのにも体力がいるようだ。
「カリノ!!」
体力、エネの使いすぎだ。体の力が抜け、私は倒れてしまった。私の体は、レザンとトラウベによって支えられた。
「ごめん、安心したのか力が抜けちゃって。」
「いいんだ、カリノ。カリノは少し休んだ方がいい。」
そう言われつつも、私は壁を消すのをやめなかった。時間が無いんだ。正直、私の体はもう限界まで来ていた。カミツレさんに回復はしてもらったが、完全ではない。それに、ナハトの時よりも激しい戦いだった。オンブルは全員倒した。あとは先代だけ。体に鞭打ってでも進まないといけない。あの人のために。
「あれ、、?」
「どうしたんだい、カリノ。」
「あの人って誰だ。私はなんのために。いや、でも私にとってすごく大切な人、守りたいと思った人、、なのになんで思い出せないんだ。」
何も分からない。私は誰を助けようとしてこの屋敷に入ったんだ。わからない、わからない、わからない、わからない、わからない。
「カリノ大丈夫か!!」
アイリスの声だ。よかった、みんな無事なんだ。あとはあの人だけ。いや、だからあの人って誰なんだ。頭が混乱してる。
「おいおいおい、ひでー怪我じゃねぇか。」
「いまカミツレちゃん呼んでくるね。」
私は壁を壊し終わり、床に手を着いた。私たちのパーティはアイリス、キキョウ、サフラ、そしてカミツレが新しく入った五人。そうだ、じゃあなんのために。
(バカか!もう1人忘れてる、タ、、、、!!)
誰の声なんだ、お前は誰だ。なにを言っているんだ、忘れてる?誰を。私にとって大切な人は、仲間と兄ちゃんだけのはず。パーティに入っていない仲間といっても、プリエさんしか思い当たらない。お前が誰で私が忘れているのは一体誰なんだ。教えてくれよ!
(だから、私は私だ、カリノだよ!お前が忘れているのはタ、、、、だよ!)
私からの声?なんで私の声が聞こえるんだよ。それに、誰を忘れてるって?その部分がさっきから全く聞こえないんだよ。こっちは私自身の声が聞こえてるってことも、信じ難いんだ。
(それもそうだよな、つい感情的になってしまった、ごめん。でも、私がカリノだってことは事実だ。信じろってのは難しいかもしれないけど、覚えておいてほしい。)
わかったよ。
「なぁカリノ、さっきから誰と話してるんだよ。」
読んでいただきありがとうございます。長らく休んでしまい、すいませんでした。また今日から投稿を再開していきたいと思います。よろしくお願いします。




