117.私がするべきこと
今のは一体なんだったんだ。レザンの記憶なのか。レザンの目線でレザンの痛みが痛いほど伝わってきた。
「カリノ!今の見えただろ、、。あれが姉さんを襲っている記憶だ。あれから姉さんは、酒で記憶を飛ばすようになった。姉さんは、僕が非力だったから大切な人を失って、こんな風に。」
息を切らしながら、トラウベが言う。なるほど、そのお酒がなくなった今、レザンを留めるものがなくなったってことか。トラウベのガーべは人の記憶を見せることもできるのか。消費エネの方は、膨大なんだろうな。
「それは違うと思うよトラウベ。姉さんを思うんだったら、そんなこと思っちゃいけない。レザンはきっと、トラウベのせいだなんて思ってないよ。」
「でも、、、。」
「レザン、君の気持ちが全てわかる、とは言えないかもしれない。でも、私も大切な人を一度失っているんだ。私にはその人しかいなかった、居場所と呼べるものは全部壊れてしまったんだ。」
「カリノ、、」
「でもさ、きっとレザンは違うだろ。もちろん私よりも負った傷は深くて消えるものじゃないと思う。けど、レザンにはまだトラウベがいる。君の居場所はそこにあるんだ。」
レザンは頭を抱えてうなされている。私が記憶に入ったからなのかは分からないが、声が届くようになっている気がする。
(私とレザン、トラウベが入るように鋼の箱を作る!)
何も無いところから、現れた鋼が私たちを囲む。私は壁になったところをグーで軽く殴ってみた。相当硬そうだ。これで、周りにかかる危害が少しは軽くなるだろう。あとは、トラウベをどうするか。私が対人ガーべを使えれば良かったんだけど。
「カリノ、僕なら大丈夫だ。さっきよりも姉さんを見やすくなってる。攻撃を避けることくらいは出来ると思う。カリノは姉さんに集中してもらって構わない。頼んだぞ。」
「わかった。」
私は深く深呼吸をする。頭の中で自分が出来る動きを想像する。どんな攻撃が使えるかは分からないが、レパートリーがないよりもマシだろう。私ができることは、レザンを理解することじゃない。レザンとトラウベを繋ぎ止めるきっかけを作ることだ。
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