109.秘密の特訓-3
朝食を食べたあと、トラウベはいつものように連れて行かれてしまった。抵抗はした。解放してあげて欲しいと。私の意見になど耳を傾けず、食堂を出ていった。私も自分の部屋に戻り、時計を持ってから家を出た。トラウベを待たせることがないように。
「よし、今日も石を切るところから始めよう。」
私は、自分の気持ちを入れるために独り言を話す。紙で練習したおかげなのか、少しずつ切れ目が中心に近づいて行っている。昨日よりも疲れが溜まりやすくなっている気がする。
「、、、大丈夫。」
まだしんどいほどじゃない。私は自分に信じ込ませるように、呟いた。でも、
「うぅぅ、なんだよ、、これ。」
急に自分の体が自分のものではないような感じがした。自分の体を制御出来ないのだ。
(君だけの、強力なガーべが欲しいのだろう?)
「だれ、、、だ。」
聞いたことの無い声。いや、よく考えてみると今のがちゃんとした声だったかどうかも怪しい。私は、何を聞いているんだ。
(君は素質がある。是非、我が配下として育てたいものだ。)
「意味、、わかんないこと言ってんなよ。」
ほんとうにやばい。今にも自分の体が奪われてしまいそうな感覚。私の全身が伝えてくる。こいつは危険だと。
(いいのかい?私の元に来て強くなれば、君の弟を救える力なんてすぐにつくさ。)
そんなわけないだろう。私はずっとガーべを使って来なかったんだ。そんな簡単に強くなれるわけが無い。実際、私ぐらいの年代の子は、学校でガーべを習う。努力の末の力だろう。
(君はそう考えるのだね。じゃあ、今から少しその力を体験してみるかい?)
「何を言って、、、?!」
それは一瞬だった。さっきまで自分の力で制御出来ていた体が、別物になってしまった。苦しい、痛い、自分の中から力が溢れ出てくる。でも、こんなに大きな力が今出たら、、、。
(あぁ、やはり素晴らしい力だ。)
制御出来ない。今の私の体は、声の主が操っていつのか。周りの木や岩を細かく刻んでいく。攻撃は無茶苦茶に見えるが、ちゃんと狙ったところにガーべを使っている。その考えが頭を駆け巡っている。
(今日はこんなところか。どうだい、君の本当の力は。とても強力で美しいだろう。)
頭が痛い、ぼーっとする。これが私の力。ダメだ、体が重い。トラウベ、、トラウベのところに行かないと。
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