106.レザンとトラウベ-2
トラウベだけが傷ついて、私は守られているだけなんて嫌だ。トラウベを守ってやれない自分が憎い。
「お姉ちゃん、ここのお肉がやっぱり一番だね!いつもここで食べられるなんて、僕は幸せ者だ!」
「そうだね。」
もっとしてあげられることはないのだろうか。私にできることなら、なんでもする。強くなるしかないのか。強くなって、トラウベを連れ出すしかないか。口で言っても、聞いて貰えない。そんなのもう分かりきったことなんだ。
「トラウベ、そろそろガーべが出始める時期だね。」
「うん!僕はどんなガーべなのかな。お姉ちゃんのガーべはどんなものなの?」
「トラウベ、私たちの家柄は女性にガーべを聞いてはいけないんだ。もちろん、使うこともね。」
「あ、そうだった。ごめんなさい。」
「別にいいさ、まだ教えられたばかりだろう。」
この規則も私が何も出来ない要因になっている。私自身、ガーべを使うことに抵抗はないが、何年も使っていないと加減がわからなくなってしまう。そんなガーべをいきなり使って、父親に負けたりなんてしたら、その先どうなってしまうのか。トラウベを守りたいがためにやったことが、逆にもっと酷いことになるかもしれない。
「お姉ちゃんを守れればなんでもいいや!」
「ねぇ、ずっと思ってたんだけど。なんでそんなに私を守ることにこだわるの?」
「昔からお姉ちゃんが難しい顔してたり、不安そうな顔を沢山見てきたから、笑顔にしたいって思ってたんだ。きっと辛いことがあるんだろうなって。」
自分では、ずっと取り繕えてると思ってた。トラウベにはお見通しだったんだ。
「そっか、ありがとう。でも、お姉ちゃんは大丈夫だよ。お姉ちゃんは、強いからね!」
心配させないようと思ってたのが、逆に、か。なにを隠そうにも無理な気がしてきた。今考えてることも見透かされてるんじゃないかって思うくらい、トラウベの目は澄んでいる。私と比べたら、ほんとうに姉弟かっていうくらい違うんだろうな。
「たらふく食べるんだぞ。」
「うん!!」
こんなに優しい子をあそこに居させる訳には行かない。私もなにか行動に起こそう。まずは、ガーべの特訓からか。私のガーべが使えれば、家からの脱出も簡単だし、人を傷つけることも出来る。効率よく特訓して、少しでも早くトラウベを連れ出そう。
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