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プロローグ

初投稿作品です!

拙いところもあるかもですが、温かく見守ってくれると嬉しいです!

ケータイからの投稿は、指が疲れますね……。


 カワセミの高く、細い鳴き声が早朝の青空に響く。

 雲が緩慢に流れる情景に目を向けながら一呼吸して、新鮮な空気で身体を満たす。

 空気は清浄に澄み切っており、気温は春らしく丁度いい。


 真っ白な教会の窓から外を眺め、寝起きの頭を1回左右に振って目覚めさせるとゆっくり、目を瞑った。

 瞼の裏に再生されるのは古い記憶。

 血腥くて、恐ろしい、過去の情景。

 そうしてまたゆっくり目を開くと、綺麗な朝の景色。


 赤く滴り落ちる血も、鼻の機能が死滅してしまいそうな腐った臭いも、地面に数え切れないほどの山を作る死体も、無い。

 その、平和な日常を今日も記憶に刻み込む。


 ——知っているから、この光景がいつ終わってもおかしくない事を。

 ———知ってしまったから、この景色に足を踏み入れる人の全てがいい人ではないと。


 今日もまた、信じてもいない神に祈る。


 いつしか日課になった祈祷を終えれば、後は山積みの仕事が待ち構えている。

 机に山盛りされた書類の山を思い出し少し顔を顰めるが、それもまた日常の一つであると思えば納得できた。


 ふと、教会の窓から見える空を見上げると、雲が先程より多い。

 ——この分じゃきっと雨になるだろうな。

 特に意味もないことが頭に浮かんでは薄れていく。

 朝の貴重な時間を無駄にしないように動き出す頃には先程自分が何を考えていたのかも覚えていなかった。



 **********



 「シュウさ〜ん、オレもう無理っスよ〜!」

 泣きそうな声が向かい側に座る、シュウさんと呼ばれた少年に如何にもという風に嘆く。

 ———無視。


 悩ましげにポンポンと書類の山に手を置き、暫くすると良いことを思いついた!と言わんばかりに顔をぐりんとシュウに向ける少年は、先程泣きそうだった声の主である。

 だが先程とは違い、底抜けに明るい声でシュウに提案する。


 「せめて4分の1くらい書類減らしてくれれば、効率いいと思うんっスよ!

 オレの脳の情報処理スピードを考慮して提案しましたっ、可否はっ!」

 「否」

 「ガアアアン、即答っ!!」


 少年はガっと頭を両手で抑え座ったまま天を仰いだ。

 塩対応にオーバーリアクションで返す、という何ともコストの無駄遣いを体で表す少年は、リュートという名前だ。


 言っていることから分かる通り、書類仕事が苦手で肉体労働の方が良いという事務職に向かない性格。

 少しくすんだ赤髪は、錆色とも表現できる。

 しかし本人が赤髪だと主張するのならば、それを尊重しよう。

 瞳の色は優しい茶色で、いつも笑っているような少年だ。

 しかし今は疲れたように目を伏せっている。

 リュートは徐に立ち上がるとシュウの肩を掴み前後に揺さぶり始めた。


 「シュウさんシュウさん、今日はとっても良い天気っスよ!たまには外に出ましょうよ〜!」

外は曇りだったが。

 「上層部から書類仕事以外の仕事が回されたらな」

 それを聞いて「来るわけないじゃないっスかぁ」とシュウの肩から手を離し、よろよろと机に突っ伏したリュートは黙々と仕事を熟すシュウを見て小さくため息をついた。



 「シュウさん…《魔力融合炉の開発にあたる問題点の要約》って教会の神父がやる事っスか……?」

 「そういう書類が送られてきたら、それはやる仕事に分類されるだろうな」

 「じゃあ《最前線の戦線が滞りなく収束する考えられる限りの戦略》て……なんっスか、これ。」

 戦争が滞りなく収束するなんてこと有り得ないっスよね〜と呆れたように書類を眺めてため息をつく。

 「シュウさん、これも神父に聞くことっスか……?」

 「聞かれたなら自分が答えられる範囲で答えるだろうな」

 頭が固いなー、オレだったら絶対にやんないのになー、と書類を横目で見てなんとなしに時計に目を向けると、午後の3時半、教会の診療所が開く時間が3時だ。


 「……うぇあ!?…シュ、シュウさんシュウさん!!もう時間とっくに過ぎてます…っ!?」

 リュートが慌てて声を上げる。

 語尾の、っスが抜けてるぞ。

 と言おうとしたら、リュートはガタッと勢いよく立ち上がると「診療所開けてきますー!!」と廊下を走って行った。


 廊下を走るなと毎回注意をしているが、全く聞いている気がしない。

 はぁ、とため息をつくと、シュウもリュートの後を歩いて追う。

 と、言っても診療所に来る人はほとんどいない。

 だからそんなに急がなくていいんじゃないか、とシュウは思うが、「それは遅れていい理由にならないっスよ!」とリュートが力弁していたので納得をしておく。


 リュートより遅れて診療所と書かれた札が掛けてあるだけの部屋に到着する。

 ガラッと扉を開くと、珍しいことに今日は人がいた。

 1人は診療所を開けるために走ってシュウより先に来たリュート、そしてもう1人が——女の子だった。


 女の子といっても5歳くらいの見た目の幼女だ。

 そんな小さい子が大人も連れずに1人で、近くの村からは少し離れたこの丘の上の教会に来た、ということに驚いた。


 「えぇっと、君のお名前はなんて言うんスか?」

 普段接しない幼女相手にしどろもどろになって質問をするリュートは少し面白い。


 「……」

 リュートの質問に対し沈黙で返す幼女。

 不安気な顔でこちらを向くと、その目に涙を溜めて俯いた。

 ……なんなんだ。


「(シュウさんシュウさん!顔怖いっスよ!)」

リュートが小声で失礼なことを囁いてくるが一睨みして黙らせる。


このままじゃ埒が明かないので眉間を軽く押して無表情よりはまだ少しマシくらいの顔にする。

そして幼女の前にしゃがんで目線を合わせる。


「…あー、名前は…いいか。親御さんとかどうした?それとも1人でここまで来たのか?」

声をなるべく優しくなるように心掛ける。

これがなかなかに難しいが、リュートが後ろで「ひぃぃ…シュウさんの声が優しい……」と言っているので大丈夫だろう。

リュートには後でお仕置きが必要だな。


「……」

またも沈黙。

これじゃあ埒が明かないな、と頬をかいているとポツリと幼女が何か呟いた。


「……お父、さんとお母さん、は、いない。私、とお兄ちゃんお姉ちゃん、…3人で一緒、暮らしてる。から、私迷惑かけないように1人、で来たの」

たどたどしく言葉を紡いで話し終えた幼女はチラリと不安そうにこちらを見つめる。


「ちゃんと話せて偉いな、ありがとう」

なるべく安心させるようにゆっくりと頭を撫でると、ようやく緊張がとけたのか嬉しそうに顔を綻ばせた。


「私、百合です……!」

頬を薔薇色に染めて唐突に幼女が言った言葉に花の百合を思い浮かべたが、もしや名前か?と考えた。


「えっと、良い…名前?だな」

名前で合っているか分からなかったで、言った後幼女の反応を見ると、満面の笑みを浮かべていたため間違っていなかったようだ。


「百合ちゃんって言うんスね!オレの名前はリュートって言うんスよ、こっちの人はシュウさんっス!」

リュートはニコニコと自己紹介ついでに俺の紹介もする。


2人が仲良く話し始めたので少し後ろに下がり傍観する。

見たところ百合には外傷も見当たらないし、それほど急ぎの患者がいる訳でもなさそうだ。


一応説明すると、百合の外見はここら辺では珍しい方だ。

まぁ、ここら辺には一つの村を除き近くにある町などはない、そのため自ずとどこから来たかも分かる。


それはさておき。


白い髪は絹のように滑らかで、腰まである髪は動く度に柔らかく流れる。

その白は老婆の白髪とはまた違うものだと、一目で分かるほど美しさには差がある。

瞳は赤く、紅い。

その目を見て連想するのは朝焼けだろうか、輝かしい陽の光が瞳に収まっている。

虹彩は角度を変えて見るとほんのり青い、主張しすぎない程度の深海の煌めきがある。

まるで精巧に作られた人形のようだ、と思ってしまう。


「シュウさ…ん、……なんで傾いてるんスか?」

「いや、ちょっと人間観察」

変質者を見るような視線だ、良いだろ暇だったんだから。


「……えっと、百合ちゃんは()()だそうっスよ」

コソコソと小さな声で伝えてくるリュートに、本当かという意味を込めて目を向ける。

リュートはそれに1度小さく頷き肯定をした。



依頼とはこの教会が請け負う3つの仕事の中で最もマイナーな仕事だ。

依頼されたら何でもする。

飼い犬の捜索、——ちなみに木の上にいるところを捕獲。

夫の浮気調査、——現場を奥さんに見せ、調査終了。

等、他愛もないこともする。



しかし、一定数いるのだ『()()()()()()』を持ってくるやつというのは。

俺の第六感が言っている、これはきっと面倒くさい依頼だろう、と。





シュウさんは割と大雑把な性格です。

リュートは意外と真面目なんですねー。

ロリっ子は良いぞ。

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