第八話:夏休みの予定
冬なのに真夏の話って……。ま、いいっすよね?
俺はあれから数日後に退院した。退院後、警察の事情聴取やら何やらで、しばらく落ち着けなかった。さらに、学校の方にも当然話は広まっていたが、各先生が生徒に、何も質問するなと言ったため、俺が質問責めにあうことはなかった。
まあ、俺がこんだけ大怪我をしたため、親父から心配の電話があったが、適当に受け流しといた。
俺の姉妹達は、俺が退院してからしばらくの間は、とても親切にしてくれた。とくに奈々と里沙は、どんな小さな事でも、親切にやってくれた。いやぁ、ホントに感謝します。
一番変わったのは佐沢だった。学校では今まで通りだが、二人になると、今までよりも積極的に俺と接するようになり、俺のことを慶大と呼ぶようになった。
そして、あの事件から二ヶ月後、とうとう終業式の日がやってきた。
「ちあ〜」
「おう慶大」
「おはよう慶大くん」
翔太と葉月が挨拶してきた。あれ?我らが天使佐沢の声が聞こえない。 「おはよう!矢賀くん!」ああ、よかった。聞こえたよ。この声を聞かずして、俺の一日は始まらない。
「そういや、明日から夏休みだよなぁ」
「そうだよねぇ〜」
「なぁ、夏休みにみんなでどっか旅行いかね?」
翔太が弾んだ声で言った。こいつ、以外とこういうの好きなんだよな。
「俺はいいよ。葉月と佐沢は?」
「あたしは別にいいよ。むしろ大賛成!」 「私も別に大丈夫」 「よし、んじゃ、この四人で……」
「「ちょ〜っと待ったあ!!」」
鼓膜が破れそうなでかい声が聞こえた。教室ででかい声出すなっつーの!ほらぁ、何事かと皆さんがこっちを見ていらっしゃる。てか、声の主はだ……
「大樹!!それに奈々まで!大樹はまだ分かるとして、なんで奈々がここにいるんだよ!」
「いいじゃねえかよ。お前らが俺らに内緒で旅行の計画立ててるからいけないんだ」 「そうよ。ま、私は行っても行かなくてもどっちでもいいんだけど、どうしてもって言うなら……」
「ふ〜ん。んじゃ、どうしてもじゃないから、お前は連れてかな……ゴフ!!」
「連れてきなさい……」
奈々が俺の腹にパンチ入れやがった。いってぇ。
すると、佐沢が不思議そうな目で俺を見てきた。そして俺の耳に囁いてきた。
「ねぇ慶大。その女の子誰?」
「ん?ああ、まだ話してなかった。俺の同い年の妹で、奈々っつーんだ。妹っつっても数カ月しか誕生日違わないけどな」
「ふ〜ん」
「で!?何処に行く話をしてたのかな?」
未だに不機嫌な奈々が聞いてきた。
「いや。まだ別にまだ何も決めてねぇよ」
「ふ〜ん。じゃあさ、湘南らへん行かない?」
「湘南!?めっさ混むぜあそこ」
俺は一度行ったことがあるから知っている。あそこの混み具合は半端ない。
「大丈夫よ。穴場知ってるから」
「んじゃ行こうよっ!私海行きたかったし!」
「私も行きたいな」
葉月と佐沢が賛成してしまった。もうこれで俺に勝ち目はない。
「わーったよ!翔太と大樹はそれでいいのか?」
「「おう!」」
はぁ。決まっちゃった。ま、別にいいんだけどよ。
こうして、湘南の穴場旅行が決定した。
(な〜んか一悶着ありそう…。ま、いっか!)