第六話:暴行事件編 (後編:暗い夜道で…)
更新が一日遅れてしまいました。申し訳ありませんでしたm(__)mそれでは、暴行事件編後編、お楽しみ下さい!
放課後になり、生徒達が、帰宅したり部活に勤しんでいる頃、俺は、狭苦しい会議室で、役員やら何やらを決めていた。
(ああ〜、だりぃ〜。早く帰りてぇ〜。あと数分で終わってくんねぇかな……)しかし、そんな願いもむなしく、会議は5時半頃まで続いた。終わった頃には、日が沈みかけていた。
会議が終わった俺らは、教室に戻って帰宅の準備をし始めた。そして、いざ帰ろうとした時、不意に佐沢が声を掛けてきた。
「あの…、矢賀くん…、ちょっといい…?」
「……え?あ、うん」
「今日の委員会で言われた、各クラスが必ず作るっていう旗の事なんだけど、早めにHRでみんなに提案しといたほうが良いから、今日のうちに、いくつか案を考えておきたいんだけど、少し残ってもらっても大丈夫?」
「ああ、校舎の壁に垂らすっていうあれね?いいよ。まだ時間あるし。よし、んじゃ、ぱっぱと決めちゃおう」
「うん。あのね、私さっきいくつか思いついたんだけど……」
そして、俺達はこの後更に遅くまで残り、話し終わった頃には完全に暗くなっており、時計をみたら7時を回っていた。
「んあ〜!!やっと終わったぜ〜。ってか、もうこんな時間じゃん!!」
と、その時、教室の扉が開いた。そこに立っていたのは担任だった。
「おい、お前ら。まだ残ってたのか?もうこんな時間だぞ。さっさと帰れ」
「「はい……」」
「あ、それと矢賀。こんな時間まで女の子を残らせた罰だ。佐沢を送っていけ。いいな?」
それは違うと言いかけた佐沢を遮り、俺は了承をした。
先生が立ち去った後、佐沢が不安そうな目で俺を見ながら言った。
「ホントに大丈夫なの……?」
「別に全然大丈夫だって。俺の事は気にすんなって。それよか、暗い夜道を女の子一人で歩かせる方がよっぽど良くないって」
「……ありがとう」
「いいって。さっ、帰ろうぜ!」
「うん!」
それから俺らは、暗い夜道を並んで歩いた。
「つーかさ、佐沢ん家って何処?」
「えっと、茜坂町ってとこ」
「……。やっぱ俺、送るべきだったわけだ」
「え?どういうこと?」
「ニュースでやってんじゃん。茜坂町で暴行事件って。しかも、狙うのは若い女性ばかりって」
「……!知らなかった」
「まっ、そゆことだから、家まで送るよ」
「……ホントにごめんね。ありがとう…」
「だから、気にすんなって!」
すると、佐沢は少し目に涙を浮かべながら俺を見て言った。
「矢賀くん……、優しいのね……」
「え……、あ、うん。ありがと……」
その後しばらくお互い黙り込んで、沈黙が続いた。
お互い何も喋らずにしばらく歩いていると、大きな公園に着いた。
「こんなとこに公園なんてあったんだ。なあ、佐沢、少し休んでいこうぜ」
「……うん」
「じゃあ、ごめん。俺ちょっとトイレ行ってくるから、ベンチに座って待っててよ」
「……うん。分かった」
この時俺は、トイレに行くべきではなかったということは、知るよしも無かった。
トイレが終わり、俺は佐沢の姿を捜した。
「お〜い佐沢〜。あれ、どこにもいねぇなあ。どこ行ったんだ?」
暗い夜の公園で、女の子が一人になっているという現状に少し焦りを覚えた俺は、必死になって捜した。すると、公園の外の方から何やら話し声が聞こえた。
「……!……。……」
「……」
(もしかして、佐沢か!?だとしたら……)
最悪の事態が一瞬浮かんだが、そんな事はあるはずないと言い聞かせながら、声のする方へ向かった。
声のする方へ近付いて行くと、段々と会話が聞こえてきた。俺は、木陰に隠れて様子を伺った。
「……!や、やめて……!い、いや!」
「グヘヘ……。ニヒヒ…」
「だ、誰か…、助けて……!」
「……グヒヒ。ヘヘ」 佐沢は、いかにも異常者と思われる男に襲われていた。佐沢が着ていた制服は引き裂かれ、その白い肌と下着が見えていた。俺はすぐにでも飛び込んで助けに行きたかったが、男が持っているものが、それを躊躇させた。
男はナイフを持っていた。
(や、やばい。あいつ、ナイフ持ってる。ってか、暴行事件の犯人が持ってるのって鈍器じゃなかったのかよ?)
そうやって俺が躊躇している間にも、佐沢は更に服を引き裂かれ、とうとう下着だけになってしまった。
(どうする?どうしたらいい!?いや、どうしようもないじゃないか!今近くにいるのは俺一人。助けられるのは俺しかいないんだ!やるしかないんだ!)
俺は近くに捨ててあった傘を手に取り、木陰から飛び出して男目指して走り出した。
「やめろ〜!!!」
俺が飛び出して来たことに気付いた男は、ナイフをこちらに向けた。
(やばい!……でも怯んじゃいけない!!佐沢を助けるんだ!!)
「うおーー!!!!」
俺は、剣道のつきの要領で、男の腹目掛けて傘をついた。しかし、男はそれをヒラリとかわし、俺の腹に蹴りをいれてきた。
「ぐはぁ……!」
「や、矢賀くん!!」
「グヒヒヒ……!邪魔するなぁ……!」
男は不敵な笑みを浮かべながら、再び佐沢に刃物を向けた。
「ヒヒ……!そろそろ本番といくか……」
「や、やめ……!い、痛い!!」
男は佐沢の綺麗な髪を乱暴に掴んだ。そして……、
バシッ!!
「痛い!!やめて!!」
男は佐沢の顔を思いっ切り叩いた。
(く…そ…。体が…動かねぇ……)
そして、体が動かず倒れている俺を尻目に、とうとうナイフが佐沢の肌に触れた。
「い、や、もう……ホントに、やめ…て…!」
(くそ……、くそ……、動け、動け動け動け動け動け動け………)
「動け〜〜!!!!」
男がこちらに気付いた。だが、俺は無我夢中で男のふところに飛び込んだ。
「うおら〜〜!!!!」
突然のことに驚き、また、距離も近かった為、今度は避けられることなく、男に組みかかった。そして、もつれあったまま、二人一緒に倒れた。
ドサッ!
倒れた時に頭を打ったのか、男は気を失っていた。
俺は佐沢の怪我を確認するため、起き上がり、佐沢の所に向かった。
「よっこい…しょ。おい!佐沢大丈夫か?」
「や、矢賀くん!うん。私は大丈夫……!や、矢賀くん!!その怪我……!!」
「ん?」
俺は、佐沢の指注した俺の腹を触ってみた。すると、何か生温かい液体に触れた。
血だ。
恐らく、もつれあって倒れた拍子に、男が持っていたナイフが刺さったのだろう。すでに、俺のズボンにまで染みていた。
(そういえば、さっきから少し……、いし…きが…朦朧と……して……)
さっきまでは、佐沢の事が1番に気になっていたため、血に気付かなかったが、出血を意識した瞬間から、クラクラし始めた。
そして俺は、再び地面に倒れた。
「…賀くん!!……!」
佐沢の声が遠くに聞こえたが、それに答える事が出来ず、世界が暗闇に包まれた。