第四話:味噌汁という名の劇薬
矢賀家での、のほほんとした朝の風景です。かなり短い文です。
佐沢が転校してきてから一ヶ月が経ち、彼女もだいぶ学校に慣れてきたようだ。しかしその一方で、佐沢に告白する男子が増えてきた。最初は、学校に戸惑っていた彼女にいきなり告白はまずいだろうと、みんな遠慮しがちだったが、慣れてくると、みんな積極的に告白するようになった。しかし、佐沢はその告白をことごとく断っているらしい。
俺はというと、いつものように平凡な日々を送っている。
「ジリリリリリリ!!」
「んーー!!ああ〜。あ〜、マジ眠ぃ」
俺は、眠たい目を擦りながらリビングへと降りて行った。
「おはよー。あれ?おい奈々、綾姉と里沙は?」
「おはよう。綾姉は大学に用事で、朝一で出掛けてった。里沙は昨日から友達の家に泊まってるわよ」
「ふ〜ん……?ちょ、ちょっと待てよ?ってことは今日の朝飯は……?」
「あたしが作ったに決まってるでしょ?さ、もう出来てるわよ。早くしなさいよ」
……。俺はこの時死を覚悟した。そう、奈々の料理はホントにまずいのだ。魔女がグツグツ煮ているあの紫色の液体、あんな感じだ。
「ほら、早く食べなさいよ。お味噌汁冷めるわよ」
奈々が
「お味噌汁」と言ったその液体は、もはや茶色ではなくなっていた。何で味噌汁が茶色じゃないんだよ!味噌の跡形もねぇじゃん!はぁ……。さあて、死にませんように。
「いただきます」
ズズズー……。コト。
「ど、どう?美味しい?」奈々が不安そうな表情でこっちを見つめてきた。なので俺は、満面の笑顔で言った。
「うん!美味いよ!」
「……!そ、そうよね!私が作ったんだから、美味しいくて当然よ!」
奈々は、頬を赤らめながら言った。
それから十数分、俺は生死の淵をさ迷い続けた。
ちなみに俺は、ちゃんと味噌汁作れます!1番美味いのは、わかめと玉ねぎ(もしくは大根)の味噌汁。あれマジ美味い!