俺たち勇者のカタクリズム
初の短編作品です。続編も一応考えています、ぜひ何回かに分けて読んでみて下さい。
ドゴォォォォォ······迷宮最深部の天井が崩れ落ちる、ボス的モンスターが暴れ回り、挑戦者も全力で戦った。
激闘の末、挑戦者は、最深部に隠されている宝、
"破壊剣"を手に入れ、伝説の勇者となった。
『カタクリズム』は大きさは両手剣並みの大きさの剣だが片手で振り回すことができる。一撃一撃の重さが尋常では無くまさに「破壊」の一言に尽きる。
ガサッ ゴソッ······ガツッと言う鈍い音が響いた、頭を強打したようだ。
「ーーって。」
平穏な休日にこの様な事が起きてはさぞ不機嫌だろう。
このだらしなさそうな者こそ、世界を救うであろう勇者カワグチ、出身はこのロスト王国一番隊隊長、軍の中では一番上の位だ、現在は部隊を抜けフリーの勇者をしている。
だが、フリーとなった現在も城が攻められたり、モンスターが街で暴れたりしたら直ぐに駆け付け、日々王国を守っている。
「···そろそろ大災厄の時期だな。」
この世界は一年に一回、赤い月の日があり、その月の光を浴びたモンスターは異常に凶暴化し、様々な災厄をもたらす。この影響ですぐ隣の王国が滅びた。だが、この王国はとある防御兵によって何年も無傷のまま守られている。その名も「がく」。
「やぁ「がく」。」
「おぅカワグチ。」
この者こそ何年もこのロスト王国を守り続けて来た、防御兵「がく」(読み方は"かぎかっこがく")だ。
「こんにちは、カワグチさん。」
話に割って入って来たのは、現在のロスト王国一番隊隊長の#イノッチ、(これが本名)15歳でありながら、類まれなる剣のセンスで今年の春から一番隊隊長に就任した。美少女である。
「おう、どうした#イノッチ」
「俺の話を無視するな。」
「そろそろ大災厄の時期でしょ、だから手合わせ願いたいの、カワグチさん。」
「いやお前じゃ俺に勝つのは無理だよ、だって俺、今カタクリズムしか持ってないもん、勝負になんねぇよ。」
「···カタクリズムは使わないで!木刀で勝負よ、いい?」
「ならいいか。」
「俺は···?」
「よし、かかってこい。」
カワグチは余裕の表情だ。
「じゃあこっちから行かせてもらうわ!」
#イノッチの得意技は全力ダッシュから繰り出される突き技、様々な物を貫く。
カワグチはその攻撃を正面から迎え撃つ、カワグチは相手の持つ武器の一番弱い部分を見つけることができ、そこを尋常では無い力で打ち付け、相手の武器を破壊し、強い衝撃を与え、神経を麻痺させ、行動不能にする。
「くっ、動けない。」
「ふははは、どうだ俺の力は!」
「大人げ無いわね。」
ようやく麻痺から開放された#イノッチはとてもグッタリしている。
「その戦い方本当に外道だよな。」
「がく」が引き気味な声で話しかけた。カワグチは笑って返す。
「これが俺の戦い方だ、絶対に心は曲げん。」
「もう少し手加減してくれてもいいでしょ?」
「俺はお前の事を思って手加減しないんだ、解れ。」
もう時間は昼頃、飯の時間だ。
「ん、もう昼か、よし、飯を食いに行くぞ。」
勇者カワグチ一行は街の外れにあるレストランにやって来た。
「いらっしゃい」店主は年老いたジジイ、だが作る料理は絶品だ、いろんな意味で。
カワグチらは店のテーブルに腰を掛けた。
カワグチはメニューを見ないで注文する、随分長い事通っていて、毎回同じものを注文する。
「毎回同じの頼んでよく飽きないな。」
「俺にはみそラーメンしか無いんだ、これ以外は頼まん。」
「じゃあ俺はチャーハン。」
「私はカルボナーラのパスタ。」
「あぁー美味かった。」
「俺一回食べた事あるけど、超濃かったぞ。」
「それがいいんだよ。」
「意味がわからないわ。」
「じゃあ私はこれで、護衛の任務があるから。」
「おぅ、またな。」 #イノッチは小走りで城の方へ向かっていった。
「さて、「がく」今日は飲みにでも行くか。」
「奢れよ。」
「おし!んじゃあ行くか。」
「お前ぇもっと攻撃力つけろよ、守ってばっかじゃ意味ねぇんだよ。」
「んだと、今までこれで良かったから今もこれでいいんだよ」
この口喧嘩は翌朝まで続き、カワグチと「がく」は酒場のカウンターで寝ていた。
「おい、おきろ。」
店主がカワグチたちに呼びかける。
「ん、何事だ?」 「がく」は起きない。
「何事じゃねえ、金払え。」
「おらよ。」 カワグチは適当に2万円を払った。
「よし、ピッタリだな、早く帰れ。」
「まだ寝る。」バタッ、カワグチはまた寝始めた。
「ん〜よく寝た。」 カワグチは店の前で寝ていた。
「なんでこんな所にいるんだ···まぁいいや」 そして、カワグチは自宅に向かって行った。
カワグチかが家に帰ると、何やらロスト王国の兵士と見られる男がドアをバンバンノックしていた。
「カワグチさーん、いらっしゃいますかー。」応答は無い。
「クソッ、居ねえな。」
「はい、家に何か用ですか。」
突然後ろから声をかけられた兵士は少し慌てていた。
「はい、そろそろ大災厄の時期なので、今年も貴方に王国の防衛を頼みたいのです。」
「そう言えばそろそろだな、よし、引き受けた。「がく」はいるか?」
「はい、「がく」さんにも防衛の依頼をしております。大災厄は1週間後の予定なので4日後には城に集まって下さい。」
「よしわかった、もう帰っていいぞ。」
「はい、ではまた。」 と、兵士は帰っていった。
「やっとこの時期か、最近暇だったんだよなー、魔王もすぐ倒せちゃうし。」
これは別に変な事を言っている訳では無い、カワグチには普通の事だ、絶対的な力を持つ魔王でさえ、カワグチには敵わない、一発攻撃を食らっただけでほぼ全ての敵を粉砕するが、カワグチはカタクリズムのカウンターだけで魔王を倒してしまった。
以来、魔王はカワグチを恐れ、ロスト王国には攻めて来ないようになった。
そして、何も起きぬまま4日が経ち、集合の日になった。
「よーし、城に向かうとするか。」
カワグチの自宅から城までは2kmほどある、歩いて1時間位かかるので、よほど重要な任務でない限り行かない。
「はぁー遠いな、引っ越そうかな。」
歩き始めて30分程経った、長い事歩くのが嫌いなカワグチはぼやいている。そしてまたカワグチは歩きだした。
「やっと着いたぜ、長い道のりだった。」
「そこまで歩いてないでしょ。」 #イノッチが出迎えた。
「すぐに大広間に集まって。国王の公表があるから。」
「えー〜〜〜〜〜〜〜」 と話は1時間続いた。
「くっそ長かったわ。何故意味のない話を延々聞かなきゃ行けないんだよ。」
「仕方ないでしょ、国王は話さないと死んじゃうから。」
「「がく」はどこだ。」
「まだ来てないわ、多分話を聞きたくなかったのね。」
「くっそ、あの野郎···噂をしてたら来たな。」
すると、「がく」がやって来た。
「ご機嫌よう。」
「よくねぇよ、てめぇなんで来なかった、オイ。」
「寝坊しちゃって。」
「とぼけんじゃねぇ。」
「喧嘩は止めなさい。」 #イノッチが止めに入った。
「覚えてろよ。」
大災厄の3日前にはいつ起こってもいい様に城に集まって待機をする。
「さて、寝るか。」
「おい、まだ昼だぜ。」
「やる事ねえじゃん。」 「がく」は言い返せなくなった。
「おやすみ。」 カワグチは寝始めた。
「ああーよく寝た、おはよう。」 時間は真夜中、「がく」は寝ていた。
「まぁいいか。」 また寝ようとしたその瞬間、警報が鳴り響いた。
『大災厄が発生しました、直ちに大広間に集まってください。』
「まじかよ、おい起きろ「がく」招集だ。」 起きない、スパン、と「がく」の顔をビンタした。
「なんだ!?」
「招集だ、行くぞ。」
「えー予想していた日ではありませんが、大災厄が発生しました、では今年も王国を全力で守りましょう、全体、直ちに自分の担当する箇所に移動!」
「よし、頑張ってこい、「がく」俺の守る場所はこの城だ。」
「はっ、言われずとも。」
「ぐわぁぁぁ!」と悲鳴を立てながら、次々と兵士が亡くなっていく。その中でカワグチは口笛を吹きながら城にいる。
「カワグチさん、南側の前線に移動してください、バハムートの群れが襲来しました。」
「#イノッチがいる方か、わかった、バハムートか、倒しがいがあるぜ。」
カワグチは脅威のスピードでわずか3分で前線に到着した。
「カワグチさん!」 #イノッチが叫んだ。
「おお、やってるやってる、いくぜ!」
カワグチはバハムートが吐いた火を跳ね返し、バハムートにカウンター、ジャンプしてバハムートに飛び乗る。そして破壊剣を1振り、その瞬間衝撃波が発生しバハムート達は吹き飛ばされ爆発、たったの1撃で何人もの兵士達を亡きものとしたバハムートを粉砕した。
「やっぱり、バハムートでも俺には敵わんか。じゃ俺は城に戻るわ。」
「カワグチさん、応戦ありがとうございます。」 #イノッチが言った。
「なあにいいよ礼なんて、俺は俺より強いやつと戦いてぇ、それを邪魔するやつは薙ぎ倒すよ。じゃあな。」
カワグチはすたすたと歩いていった。
「キャァァァ!」 カワグチが帰ろうとした途端#イノッチの悲鳴が聞こえた。
「どうした、#イノッチ!」
#イノッチ達の前には大魔王サタンが君臨していた。
「おぉ久しぶりだな、大魔王さん。」
「あん?我に逆らえる物など······すいません許してもうしません。」 大魔王サタンくんはカワグチを見た途端に怖気づき、土下座をしだした。
「あー?聞こえねぇな、そうれ行くぞー!」
「くっ、やるしか無いようだな。」 大魔王サタンともあろう者が吐いた台詞は完全に勇者側の言葉だ。
ドゴォォォォ······カワグチがカタクリズムを振り回しながら
サタンに接近する、1振1振が強い衝撃波を生み出し、サタンを後ずさりさせる、そしてサタンに直接ヒット、爆発を伴う一撃はとてつもなく重い、サタンは吹き飛んだ。
「どうした、こんなものか?お前の、力は。」 完全に立場が逆転する。
「うぉぉぉぉぉ!!!」 サタンは雄叫びを上げた。
巨大な図体からは想像できないスピードでサタンが接近する、サタンは武器を持たず、魔法もしくは物理攻撃のどちらかだ、サタンは拳を振り上げ、カワグチに向かって叩きつけた、だがカワグチの持つカタクリズムには敵わず、カウンターに破られてしまった。
「クソッ、最後の手段だ。我のこの身は何度滅びようとも復活する、うぉぉぉぉぉ、大爆発!」
「なにっ!?」 流石のカワグチでもこの技を防ぎ切る事は出来ず、巻き込まれてしまった。
大魔王サタンの身体は跡形も無くなり、その場にカワグチが倒れ込んでいた。
「うそ、カワグチさんが、しっかりしてください、カワグチさん!」
「ゴホッ、ガハッ···何だか喉が痛ぇわ。」
「カワグチさん、ふざけないで下さい!本気で心配したんですよ。」 #イノッチは涙目になっていた。
「すまんすまん、もう朝だ、今年は何だかやり甲斐があったぜ、誰かのど飴ちょうだい」
こうして、ロスト王国は今年も守られた。
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「がく」心の叫び。
「俺いる意味ねぇじゃん!!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「誰かのど飴くれないの?」
byカワグチ
終わり
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