白騎士
突然現れた男は、白い鎧に金髪に青い目という王子様な雰囲気で、見た目は華やかでカッコいい。主人公クリスのライバルキャラ的ポジションって所かな。私は勝手に推測する。クリスは私達を庇うように立って口を開く。
「王宮騎士団の白騎士様が、わざわざ見送りに来てくれたのか?」
「まさか、通りかかっただけだ。田舎者が調子に乗っているようだから思わず声をかけてしまってな」
白騎士は正義感満ち溢れ見た目とは裏腹に、口が悪いようだ。相当クリスのことが嫌いらしい。一体何をしたんだクリス。私が首を傾げていると、フィアナがそっと耳打ちしてくる。
「聞いた話ですと、この前の宮廷試合でクリス様が白騎士様を打ち負かしたようです。それに、白騎士様は勇者に選ばれると注目されておりましたが、結局選ばれなかったようですね……」
なるほど、性格悪そうだし勇者には向いてなさそうだ。それにしてもさすが主人公クリス。とんでもない奴に憎まれて大変だね、と他人事のように感心する。白騎士がチラリと蔑むように私を見た。
「女に装備も用意してやれないとは、甲斐性のない男だな」
え、私絡まれてる?思わず、自分の簡易な装備を見下ろす。確かに初期装備って感じなくらい軽装だ。
「おい女、この私が装備くらい貸してやろう。心もとないだろう?」
性格悪いけど、親切な奴か?いや、ただ人前でクリスを貶めたいだけだろう。ええと、なんて断ろうか。
私が口ごもっていると、フィアナがずいっと前へ出た。
「アヤカ様の装備は、変える必要がございません。軽装に見えますが、女神の加護を受けた一級品です」
ええっ、何それ?私はフィアナをガン見する。
「聖女である私でもお目にかかったことがない程、女神の強い祝福を受けた装備です。それにアヤカ様も勇者です。この祝福の強さといい、ただ者ではございません」
周囲で成り行きを面白そうに見ていたギャラリー達も、オオーッとどよめいた。注目が一気に私へ集まる。わあ、恥ずかしいよおお。注目になれていない私はモジモジする。
白騎士は私を見て、忌々しそうに舌打ちをした。
「その男に着いていくと後悔するぞ。所詮、経験不足の田舎者だからな。別れるなら今のうちだ女。見たところ戦に不慣れな様子だな。私なら戦の方法も教えてやれる」
はあ、と曖昧に頷いていると
「きっとアヤカ様がカワイイ方だから狙われているんですよ」
フィアナが慌てて耳打ちする。え?そんなシチュエーションなのこれ?どの点がフラグなの?長いこと喪女やりすぎて全然分からなかった。私モテてる?どんな反応すればいい?
混乱のあまりフリーズした私を背に、クリスが言う。
「アヤカは俺に着いていくと、昨日誓ってくれた。それに今から出発の準備で忙しいんだ」
おお、ヒロインの奪い合いみたいになってる。すごい。リアルで初めて見た。渦中にいるのが私っていうのが微妙な気分だ。
「フン、せいぜい愛想を尽かされないよう腕を磨くんだな」
捨て台詞を残して白騎士は去っていった。なるほどね、両手に花な勇者クリスに嫉妬したのか。分かりやすいライバルだなあ。思わず軽く合掌しながら見送る。
クリスは気まずそうに私を振り返る。
「不快な気分にさせてすまない。迷惑をかけたな」
いえいえ、面白いもの見せてもらったよ。私はぶんぶんと首をふる。クリスは続けて言う。
「それにしても、すごい武具を身につけていたんだな。恥ずかしながら全く気がつけなかった」
お、クリスの私を見る目が変わったぞ。ただの邪魔物から、ちょっと役立つモブに昇格したみたいだ。ここはより一層株をあげておきたい。どや顔を堪える。
「まあ、言う必要もないかと思ってたからね」
よし、さも当然という感じで言ってやった。
「そうですよ。アヤカ様はすごいんですよ。私も最初にお会いした時は、初めて仲間ができたと思いました」
フィアナが優しい笑顔で言う。そうだったんだ。だから私になついてくれたのか。今度こそふに落ちた。
クリスはよし、と気合いを入れ直す。
「では、東の砦へ出発する王国軍に合流しに行こう。これからしばらくよろしくな」
私達頷きあい、早速合流先へ向かった。