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異世界へ

 気がつけば私は芝生の上に立っていた。心地の良い風が頬をかすめる。

 つい先程まで真夜中でアパートの玄関にいたはずだけど、空を見上げると抜けるような青い空。私の横には重厚な石造りの高い塀がそびえ立っている。ここは一体どこ?

「勇者の任命式がある城の中だ」

 声に振り向くと、女神エリスがいた。改めて見ると迫力ある美女だ。彫像のように神々しい。そうか、ただの神か。

「それはそうと、ほらご覧」

 女神はどこからともなく丸い鏡を取り出す。その鏡は宙に浮いている。手品?それとも魔王がいるし、この世界には魔法的なものが存在するのか。

 ほほう、と感嘆の声をあげ拍手をしかけていると、ずいっと鏡を目の前に突きつけられる。そこには、初めて見る少女がいた。 

「さすがにそのままの姿では、すぐに魔王に貴女の存在が知られてしまう可能性があるからな。変えさせてもらった」

 黒く濡れたような艶のあるロングヘアに、濃紺の瞳に長い睫毛。スレンダーな体にはゲームの初期アイテムのような軽い甲冑を纏っている。顔はかなりかわいい部類ではないか。胸はささやかなサイズだが。

 ……この至って特徴のない感じ、少しモブキャラっぽいような気がする。

 それにしてもこの顔と体、既視感がある。昔やっていたゲームでキャラメイクした時こんなキャラ作ったっけ?確か初めてのゲームだし控えめに作ったのか、どことなくモブっぽくなったんだよね。深層心理でも反映されるんだろうか。


 キョロキョロと体を確かめていると、女神が何かを投げて寄越す。私は手でもてあそびながら慌てて受け取った。つるつるとした石のようだけど、謎の模様が掘られている。これまるで飛◯石……ゲフンゲフン。

「それは勇者の証だ。今日、その証を持った者が城に集まり、勇者の任を授かることになっている。もうそろそろ集合時間だ。早く大広間に向かうといい」

「あの、着いてきてくれないんですか」

「私は人の前に姿を表せる時間が限られている。そろそろお別れだ」

 え、知らない場所で心細いんですけど。初めての場所では子羊みたいになるタイプだし、口下手だし。

 それに勢いでここまで来てしまったけど、私の寿命、頑張ったら本当に伸びるの?いや、そもそも私が魔王になったから、責任とってこうなったんだっけ?

 聞きたいことがまとまらず、口ごもってオウフゥと変な声を出していたら、いつの間にか女神は消えていた。

 サヨナラの挨拶も無しかい。


 しばらく立ち尽くしていた私は、諦めてとぼとぼと高い塀づたいに歩く。幸い、しばらく歩くとすぐに広場につき、そこには城の兵士や使用人と見られる人が忙しそうに行き交っていた。

 でも私、初めての場所ではコミュ症気味だからこのガタイのいい兄ちゃんや、きれいなお姉さん達を呼び止めるの、物凄く勇気がいるんだよね。あのう、もしもし、と口ずさんだけれど、声が小さいのか全く呼び止められない。ひょっとして言葉通じないんじゃ。冷や汗が出てきた。

 アワアワしながら勇者の証の石を前にかざしていると、

「もしかして式典出席者の勇者様ですか。もう始まりますよ。早くこちらへ」

 一人の美人メイドが気づいてくれた。やったー。言葉が分かる。今だけ女神様に感謝だ。

 気づいてくれてありがとう。お礼をモゴモゴ伝えながらメイドさんに着いていく。

 通る道にはグレーの石造りの広い廊下に、立派な柱。ここはファンタジーの世界のようだ。

「こちらからどうぞ」

 メイドさんが装飾の入った扉を開ける。そこは天井にきらびやかな絵が描かれた豪華な広間だった。前に立つ王様らしき人を見るに、もう式典は始まっているようだ。大勢の人々がその話を聞いている。え、この人たちもしかしてみんな勇者?勇者多い。

 そう思いながらもこれ幸いと、そっと大勢の人々の間に紛れ込んだ。

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