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女神のお告げ

 寺田綾香(てらだあやか)28歳、喪女。彼氏いない歴イコール年齢の、独身会社員。漫画とアニメが趣味で、ブラック気味な会社に勤める、至って平凡なアラサーだ。


 私は今日もいつも通り、ヘロヘロに疲れ果てた体を引きずりながら、コンビニ弁当片手に帰宅した。


 だけど私は今、薄暗いアパートの玄関で、ボーゼンと立ち尽くしている。だって目の前に、キラキラ輝くドレスをまとった金髪フワフワ超絶スタイルな美女がいるんだから。疲労のあまり幻覚が見えてるのか。それとも間違って他人の部屋に入ったのか?

 いや、彼女の背後に広がる腐海のような汚部屋は紛れもなく私の部屋。それによく見たら美女には真っ白い翼がついてる。コスプレなの?どこの遠い国から来たの?ヤバイ人なの?

 すると彼女が艶めく唇を開き、透き通るような声で言った。

「貴女、テラダアヤカは100日後に死ぬだろう」

「ハイ?リ、リピートぷりーず……」

 私は平凡なりに、清く正しく生きてきたと自負している。それなのに、なんなんだこの状況は。

「だから、貴女の余命は残り100日だ」

 これ、夢?新手の宗教の勧誘?それともドッキリなの?私は疲れた頭をフル回転させる。

 ドッキリ仕掛るほどパーリィピーポーな友人は私にはいないんですけど。ああ分かった、疲れて幻覚見えてるんだね。忙しすぎて死にそうだとは思ってたけどここまでとはね。

 ていうか私、死ぬの?

 ゾクリとする。

「私は異界の時の女神エリス、貴女にお願いがあって参った」

 女神と名乗った背の高い美女はたわわな胸を揺らしながら、私に歩み寄ってきた。

「いやいやいや、私死んじゃうんでしょ。お願いとか無理だから!それどころじゃないから!」

 死ぬって。頭の中混乱し過ぎて……ええと、まずは至急、下着散らかり放題の汚部屋を片付けなきゃ。パソコンやスマフォの2次元BLフォルダ消してから、親兄弟に見られたくない薄い本始末しなきゃ!ていうかこれやっぱり夢なんじゃない?死ぬとか、怖いんですけど。

 女神は形の良い眉をひそめため息をついた。

「お願い……と言ったが、貴女に拒否権は無い」

 美女が不機嫌そうな表情をすると迫力がある。情けないことに私は怯んでうっと呻く。

「100日後、貴女はこの世に未練を残して亡くなる。ちょうどその頃、私共の世界で召喚魔法が使われ、偶然にも貴女が悪魔として召喚された」

 へええ、なんてぶっ飛んだ話なの。突っ込みどころが多過ぎて私は曖昧にうなづくことしか出来ない。

「貴女は100年で悪魔として力をつけ、ついに魔王となり世界を混乱に陥れた」

「あの、人違いだと思いますけど」

 思わず声をあげる。この人畜無害な私が魔王とか、どうしたらそこまで闇落ち出来るのか。フォースよりパワーだとか言っちゃう?100年の間に何があったんだ私。

「とにかく貴女は私共の世界にとって害となる存在。しかし私の時の力を持ってしても貴女を消すことが出来なかった」

 絹のような睫毛を伏せ、儚げに哀しみながら、サラッと私を消すと物騒なことを言う女神。私は力なく、はあ、と相づちを打つ。

「私共の世界の者では、もう魔王である貴女に太刀打ちできない。そこで、まだ人である貴女が責任をとって、魔王を倒して欲しいのだ」

ええー……。開いた口がふさがらない。そもそも魔王にただの凡人である私が勝てるのだろうか。それに余命が100日なんだけれども。あ、そうか。閃いた。

「あ、あの、それってもしかして魔王倒したら余命が延びたりするんですか」

 期待を込めつつ、恐る恐る質問する。

「私は時の女神。もしそれが可能だと言ったら?」

 そう言って意味ありげに口をつぐむ女神。そうですか。出来るかどうか分からないパターンってやつですか。これやっぱり夢だよね。私の頭は現実逃避したくてたまらない。でも女神の鋭い視線が痛く、いかに魔王となった私が恨まれているかがよく分かる。

 死ぬのは嫌だ。でも死ぬなら、せめて誰かの役に立ちたいような気がする。しかも未来の私が人様に迷惑をかけているらしい。このまま普通に暮らしながら余生を過ごしても、死ぬ前に思い出して後悔するかもしれない。それに、もしかして女神の力で余命が伸びる可能性もある。あやふやだけど心は決まった。

「ええと、とりあえず、やってみようかな?」

 もごもごと呟くと、女神は初めてフワリと花のような笑顔を見せた。

「ご協力感謝する。タイムリミットは貴女の余命100日だ。それまでに必ず魔王を倒してくれ」

 私は上手いこと説得されてしまったのかもしれない。ややブラックな会社に勤めていた私には分かってしまう訳アリ笑顔の女神だった。


 こうして、私はやや刺々しい女神に導かれ、異世界に旅立つことになったのだ。

 家族や親戚一同に見られたら恥ずかしいものの処分が、一切出来ないままだったという未練を思い出すのは、大分後の事だった。

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