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東方旧乱記  作者: オツリッサ
3/11

マヨヒガの訪問者

―マヨヒガ


ここ、マヨヒガにも訪問者が現れていた。


???「ここはどこなのです…同じような家がたくさん並んでいて道が覚えにくいのです」


訪問者は一人でそうぼやきながら、とぼとぼと道を歩いていた。


???「ここに迷いこんだら最後!」


そういって訪問者の前に現れたのは、化け猫、橙である。


???「お!人がいたのです。早速ここの出口を教えてほしいのです。」


橙「人の話聞いてた?人じゃないけど… ここに迷いこんだら最後、2度と戻れないわ」


???「それじゃあここに住むのです!空いている家はたくさんあるみたいだし…」


橙は呆気にとられた。見た感じでは普通の人間だ。博麗の巫女や白黒の魔女のように力があるようには見えない。それなのにこれほどの余裕をかませるとは…力を隠しているのか、よっぽどの馬鹿なのかは定かではないが一応始末しておいたほうが良いだろう。

訪問者が背を向けて歩きだした。その瞬間、橙は爪をたてて襲いかかった。


橙「覚悟!」


???「うわっ!」


訪問者は間一髪のところで爪をかわした。橙はにやりと笑みを浮かべた。こいつはただの馬鹿な人間だ。さっさと始末してしまおう。


???「いきなり何をするのです!戦うならそうと言うのです!」


橙「言っても言わなくても同じだと思うけど?ただの人間が妖怪にたてつこうなんて考えるだけ無駄よ!」


そういうと訪問者は明らかに怒った顔をした。


???「低級妖怪が偉そうなことを言うものじゃないのです!あんたなんかこの『ふらわ~戦車』で十分なのです」


そういうとどこからともなく、一台の戦車が現れた。訪問者はそれに乗り込み笑みを浮かべた。


橙「何!?でも所詮、人間の悪あがきよ。そんなおもちゃで妖怪の速さをとらえられるかしら?」


???「おもちゃじゃないのです!戦車技師、里香の力をとくと目に焼き付けるのです!」


里香という少女は戦車から弾をいくつも発射した。


橙「くっ!人間の割にはやるじゃない。でも…」


橙は弾をかわしながらスペルカードを唱えた。


橙「仙符『鳳凰卵』」


しかし、いくつもの弾幕が戦車に命中したが、戦車は無傷であった。


里香「ふふっ…その程度の攻撃では戦車に傷をつけることもできないのです!くらえっ!反撃だあー!」


里香の戦車からさらにたくさんの弾が飛び出してくる。しかし橙はその弾を軽々とかわしていく。


橙「ふん!所詮人間の弾ね。遅すぎるわ!」


橙は再び体制を作り叫んだ。


橙「次はさっきほど甘くないわよ!翔符『飛翔韋駄天』!!」


橙は目にも止まらぬ速さで動き回り、厚い弾幕を戦車にぶつけた。戦車は弾幕の勢いで少し傾いた。


里香「くっ!!なんて力なのです!」


橙「まだまだ!!くらえ!陰陽『晴明大紋』!!」


今度は橙が星の形を描くように飛び回り、弾幕をばらまいた。大きい戦車は弾幕をよけることができなくまともにくらった。戦車が大きくへこんだ。


里香「まずいのです!早く脱出を…」


橙「逃がすものか!これでとどめよ!方符『奇門循甲』!!」


鮮やかな弾幕が戦車に雨のように降り注いだ。そして、爆発音がして戦車から煙があがった。しばらくしてから、中からぼろぼろになった里香がでてきた。


里香「ぐっすし…油断したのです。」


橙「油断していなくても結果は変わらなかったわ。あんたもよく頑張ったから今回だけは見逃してあげる。だからさっさと帰りなさい!」


里香は不思議そうな顔をして橙に尋ねた。


里香「もしかして、もう勝った気でいるの?」


橙「当たり前じゃない!それとも何?今度は生身の状態で戦おうっていうの?無謀すぎるわ!」


里香はやれやれといった顔をして立ち上がった。


里香「あたいのふらわ~戦車は負けた。でもまだあたいには最終兵器が残っているのです!」


橙「最終兵器?どうせそれもさっきとたいして変わらないんでしょ?止めておくことをおすすめするわ」


里香は笑みを浮かべながら頭から赤いマントを羽織った。


里香「まあ1度見てほしいのです。これがあたいの最終兵器『イビルアイΣ』なのです!!」


橙はまたもや突然現れた戦車に度肝を抜かれた。いや、これは本当に戦車なのか?どちらかというと目の怪物みたいだけど… その戦車は目に黒い羽が生えたような奇妙な姿をしている。里香はそれに乗り込んだ。


里香「どうしたのです?驚いて声もでないのですか?」


橙「これ本当にあんたが作ったの?まるで妖怪じゃない!」


里香「あたいは優秀な戦車技師なのです!そして恐ろしいのは見かけだけではないのです!」


そういって突然攻撃をしてきた。さっきとは比べ物にならないほどの弾だ。とても避けきれない。


橙「うわっ!…」


弾が橙に直撃した。鋭い痛みが走る。反撃しなければ… 橙は即座に構えをとり叫んだ。


橙「鬼神『飛翔毘沙門天』!!」


橙は再び目にも止まらぬ速さで弾幕をばらまきながら飛び回った。この技は橙の最終奥義。ただの人間相手にこれを使うとは思っていなかったが、あの弾を1度受けただけでわかったのだ。本気でやらなければ負ける。橙は力の限りまで飛び回り弾幕を里香にぶつけ続けた。






橙の主である八雲藍は地面に倒れている式神の髪をなでた。そして穏やかな口調で話しかけた。


藍「橙、よく頑張ったね。あとは私に任せなさい。あんたの仇は必ずとってやるから」


そういって藍は空中に浮いている里香とイビルアイΣを見上げた。その目には憎悪の炎が宿っていた。

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