三話
さらに南下していくと、彼らは海辺に辿り着きます。
生まれて初めて見る大海原や白い砂浜に心奪われましたが、喜びもつかの間、彼らは自分たちを待ちうける運命を知ります。
海を渡った遠く向こうに、鬼ヶ島が邪悪な気配を漂わせて佇んでいました。
力を合わせていかだを作ると、ひとりと3匹はさっそく海へと漕ぎ出します。
桃太郎は腰に錆びた刀を帯びています。
犬が道中で見つけた、錆びて先端の折れた刀です。
雉は辺りを警戒して飛びまわり、猿と犬は必死に船を漕いでいます。
鬼ヶ島に近づけば近づくほど、その邪悪な姿がより明確に見えてきます。
ゴツゴツした黒い岩だらけの島は、来訪者を寄せ付けることを拒んでいます。
鬼に気付かれる前に上陸しなければ……桃太郎も船を漕ぐのを手伝い、鬼ヶ島へと急ぎます。
さらに鬼ヶ島が近づいて来ると、桃太郎と3匹のお供は違う不安を感じるようになってきました。
岩らだけの島には土などなく、鬼とはいえとても暮らしていけるような島には見えません。
家を建てる木材すらもないこの島では、風雨を凌ぐ洞窟があるくらいのものでしょう。
……本当にここに鬼がいるのでしょうか。
桃太郎たちは鬼ヶ島に接岸すると、島の探索を始めました。
「鬼は人々から金銀財宝を巻き上げると鬼ヶ島へ帰っていきました」
そうあるべきはずの鬼ヶ島には、鬼も居なければ財宝もありません。
草木も生えず、虫すらも生息していません。
でも確かに、ここは鬼ヶ島です。お爺さんお婆さんが示した鬼の棲む島のはずです。
鬼ヶ島とは何であるのか。
鬼の棲む島。
では鬼とは?
鬼とは人でないもの。
では、自分たちは?
桃から生まれた桃太郎……ひとでなしと蔑まれた、人でないもの。
そしてお供は、獣の道から外れてしまった者たち……外道。
――あぁ、私たちこそ鬼であったのだ。
この世界に鬼などいない。
金銀財宝を溜めこんだ島などない。
「ひとでなし」を追いやるための方便であり、夢を求める愚者を追放する装置であったのだ。
そのことに気付かされても、ひとりと3匹はもう嘆きません。
生きていくことの困難なその島で、皆で力を合わせて生きていくことを誓い合います。
今後自分たちのような『鬼』が現れた時に、この鬼ヶ島で迎え入れるために……。
ひとでなしの、ももたろう。
―完―




