痛いわ。
『福寿草』
(『春の季語。黄色で、花弁の多く可愛らしい花をつける。有毒。花言葉は幸福、思い出。』)
宵闇照らす窓辺より、ふくきる影の垂れる前髪
(夜、電気のついた部屋から明かりが漏れている。「服を着る/福を切る」、その影はうつ向いて前髪が垂れている。)
『なるかみ』に よく似た機嫌 君の眉
(『鳴神、夏の季語。積乱雲などで天気は荒れている。』君の機嫌も空模様に似て眉尻が上がったかと思えば今にも泣きそうでもある。)
腕を引き止め駒をてすさぶ
(「きびすを返す君の腕を掴み引き止め/リストカットをするその腕を引き止め」、話をする間にも、君は手元のカミソリをもてあそんでいる。)
『炎天下、水泳、
クーラー』きらずとも
捲るに捲れず、きるにきれない
(まぶしく暑い夏。「今、腕を切らなくても傷痕があるから袖は捲れないし、水泳の授業があるから切りたくても腕を切れない。/クーラーの電源を切らず、裸でいるには少し肌寒いが、いま腕を切ったばかりで血がつくとわるいから服は着れない。脱がずに袖を捲って切れば良かった。」)
袖をきる 君の舌鋒あかく染め
(「流れた血も渇き袖に腕を通す、/袖口の腕を切る、」君の舌は流れ出た血を舐めて赤く染まっている。)
『立待月』に我はつうじず
(『秋の季語。立って待つ月。』月の出る頃、「私の言葉の意味は君に通じていない/電話を掛けても通じない。」)
『きりぎりす』
(『秋の季語。「昆虫、キリギリス』/腕を何度も切っている様子。」)
腕を散らして跳ぶ君を
(「腕を広げてキリギリスが跳ぶ。/腕を切って君は夢の世界へ跳び立つ。」)
やめよと走り 雨に打たれる
(「今から跳ぶから、雨よ止め、キリギリスの邪魔をしてくれるな。/やめてくれと、雨に打たれながら君のもとへ駆ける。」)
しゅ『襟巻』 指先までも、袖の内
(「朱色の『マフラー。冬の季語。』襟巻きを巻いている。/首の痕をマフラーで隠しているが、そのマフラーが赤く染まってしまっている。」指先も寒くて外に出さないようだが、そこには傷痕はないのだろうか。)
怒鳴る我らも はやかなてうち
(「喧嘩をした私たちの声が張り上げられる、奏で上げられる。/怒鳴り合い、喧嘩をした私たちも早く手打ちにしよう、仲直りしよう。」)
『初カラス』
(「『年始の季語。初鴉。元日の明け方に鳴く。』/初枯らす。年が明けてから血を枯らしている。年一番、腕を切ろう。」)
アドレナリンのアドレスに、デンワデモカケルカァと鳴く声
(脳内麻薬を分泌させよう。アドレナリンに連絡するために、「腕を切ろうかなぁ。/電話を掛けようとすると、鴉がカァと鳴いた。」)
かなわない
(「願いは叶わなかった/私は君の欲求に敵わなかった」)
足元濡らすひがんじお
(『彼岸潮。春の季語。春秋の彼岸の頃、潮の満ち引きが大きくなる。』「彼岸潮で海が満ち、足元を濡らしている。/悲願叶わず、涙で足元が濡れている」)
手元満つまま
(「潮は手元まで来たのか。/手元の傷痕は減っていないまま、)
我にもひとつ……
(私にもひとつ、傷痕ができてしまった。)
踏まえて、あらすじの季語と掛詞はなんでしょうか。