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FLOOD!!!  作者: nozomi
2/22

ベンチの足元に生首男(なまくびおとこ)

 ルート80をひたすら東進とうしんして、ニューヨーク・マンハッタン地区へ向かう。

 自治体なんて名ばかりで実質とっくに崩壊してるから、道路整備なんてものはない。

 陥没かんぼつしたら、地元の人間が有志ゆうしつどって、穴をめるぐらい。

 だからルート80は進めば進むほど人けが無くなり、とんでもない悪路になっていった。

 俺の愛車はとうとう()をあげた。

 有輪ゆうりんじゃここらが限界だ。あぁ、ホバーエンジンが欲しい。

 

 

 無人の摩天楼まてんろうがかすかに見える。ここからは徒歩である。

 俺は、取材用の携帯端末や必要最低限の水と食料などをザックにんで、とぼとぼと歩き始めた。

 

 

 

 

「ええと、デイビスの住所アドレスはっと・・・トライベッカ、トマスst.200番地?レッドゾーンどなかかよ」

 端末で取材場所を確認しながら、ひたすすむ。

 海浜地区に近づくほど、泥土でいどが増えて、足取あしどりは重くなった。

 

 

 しばらくしてようやく、マンハッタンの入り口ジョージワシントン橋が見えてきた。

 アメリカ合衆国(今はもう存在しない国だ)の初代大統領の名前をかんした橋は、かろうじてまだかっていた。

 とはいえ老朽化ろうきゅうかが激しいうえ、路面ろめんの高さは海面すれすれ。

 足をはずせば命はない。

 全長1067Mメートルの橋をおっかなびっくり渡り切った。

 対岸にたどり着くと、俺は軽くガッツポーズを決めた。

 

 

 そのまま南下してようやくセントラルパークに辿たどりいたとき、俺の疲労はピークに達していた。

 とりあえず休憩しよう。取材はそれからだ。

 ちかけたベンチに腰かけた。

 

 

 

 セントラルパークとは言っても、昔のようないこいの地ではない。だだっぴろいだけのただの沼地だ。

 塩害えんがいの影響で、いまや一本の樹木も見当たらない。

 大きなモニュメントはまるで墓石はかいしのようだった。

 ねじれた水道管からき出した水が虹を作り、それだけがこのさびしい都市公園に奇妙ないろどりをえていた。

 

 

 その時の俺は、それまでの長距離移動の疲労がまって、目を開けたまま気絶してたようなものだったんだろう。

 最初はその弱弱しい小さな声に全く気づかなかった。

 

「ちょっと、そこのアンタ・・・イケメンのお兄さん・・・こっち向いてくれよ!イロオトコ!・・・なんでもするから!ご主人様!!!」

 

 つぶれてかすれた小さな声が、足元あしもとから聞こえてくる。

 目をむけると、少し離れた地面の上、大きな水たまりのかたわらに若い男の顔がえていた。

 

 


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