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FLOOD!!!  作者: nozomi
1/22

危険手当は300%増しで

内容修正しました.


 人類は地球をいつぶした。

 そして宇宙そらにトンズラした。



 時代はいわゆる宇宙世紀。

 とはいっても、モビルスーツとか宇宙戦艦とかそんなもんはありゃしない。

 あんなのコストかかりぎだろうよ。

 そんなもんは実現しやしなかった。


 けど月や火星には、ドーム状の都市が建設されたし、周辺の宇宙空間には産業用のコロニーが開発された。

 気温・湿度は完全管理!いつでも小春日和こはるびより!虫ゼロ!ウイルスゼロ!

 月面や火星表面のドーム内は、リアル桃源郷とうげんきょうだ。

 とうぜん選ばれたエリートしか住めない。



 あんまり努力しなかったのね、俺の先祖よ。

 というわけで、俺みたいなのは地球にのこされたわけ。



 さて、人間は宇宙そらせるほど知識や技術を増やした。

 もちろん、クリーンにではない。むしろ全然なりふり構わなかった。

 掘れるだけ資源を掘りつくして、あと、ほとんど放置。

 そりゃあ、地球だって怒るって。ヒステリーだってこしちゃうよ!

 天変地異てんぺんちいのオンパレード!エブリウェア洪水!常に海面上昇中かいめんじょうしょうちゅう



 人間は地球をサバイバルエリアにしちまった。

 俺たち地球の人間は、いつだって住む場所を追われる覚悟をしながら、でもがんばって生きている。

 俺の名前はショーン。地球連邦・北米州ほくべいしゅうシカゴ市在住、20歳、性別男。どうぞよろしく。






「えぇ?ニューヨークですか?いまさら、あんな廃墟(はいきょ)特集してどうするんですか?誰得(ダレトク)?今、本社のデスクに廃墟マニアいましたっけ?」


 俺は、携帯端末の画面の向こうで、涼しげにコーヒー飲んでる編集長にむかって文句を言った。


「今度うちの傘下さんかのWEB雑誌で、下院議員の若手NO1、最近じゃ大統領候補とまで噂されているマイケル=デイビスの特集組むんだよ。政界じゃ()うてのイケメンだ。彼をあつかえば、売上UP間違いなし。それで編集会議で彼のルーツも調べることになったんだけどねぇ」


 編集長は頬杖突いて気だるそうに、ソーサーに添えられていたチョコを頬張った。

 赤い包装紙には、ハートのクイーンが描かれている。

 月面都市限定販売の高級チョコ。うまそうだ。


「まぁこの御時世よくあることだけど、月面都市移住前の彼の経歴が月面のデータベースではよくわからなくってな。唯一わかったのは、ニューヨークマンハッタン地区の住所アドレスだけ。というわけで、北米地区の特派員とくはいんである君に取材を頼みたい。現地にいって、その建物の画像を入手し、できたら情報も得てきてほしい。」


「編集長、いまのニューヨークの状況わかってます?あそこは海抜かいばつマイナス10Mメートル地帯に指定されてるんですよ?ガンガン液状化えきじょうかが進んでる上に、高層建築物がそのまま放置されてるんですよ?めちゃくちゃ危険地域です!確かにおもしろい企画ですけど、俺はまだ死にたくありません。衛星写真とか、昔の映像とか、合成でもなんでもして誤魔化してくださいよ」



 シカゴの安アパートで、昼飯作りながら俺は叫んだ。

 俺は副業サイドビジネスの一つとして、通信社ネオロイターの地方特派員ってのをやっている。

 本社は月の首都ルナパレスにある。

 もちろん月の本社に行ったことはないし、編集長と直接会ったこともない。

 こうやって、いつもモニター越しに指示しじを受けている。

 編集長は月面に住むエリートだから、たまに常識はずれで無茶なことを言いだしたりするんだよな。


「うーん。でも、この企画、オーナーがなんだよね。企画の発案者のオーナーのおいは、合成画像嫌いのリアリストだし。オーナーに嫌われると出世に響くしねぇ」


 そんな本音ホンネは聞きたくない・・・。


「よし、危険手当はずむから!通常の200%しで!これでどうだ!」


 少しそそられたが、でもいやだ。

 時代が進んでも、今のところは、かねいのちは買えません。


 無視したら編集長の目つきが変わった。

 あ、やばい。

「うん。別にめてもらってもいいんだよ?君の代わりはいくらでもいるんだからね」

 出た、伝家の宝刀。編集長の必殺技。

 はいはい、行きますよ。行けばいいんでしょ。

 だけど、危険手当は300%しでお願いします。




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