人形
私は愛を知らなかった。
愛を知れなかった。
幼いときに親を殺された。
その犯人に育てられた。
いや、飼われた。
「今更傷が増えたって何も感じないだろ。大人しく啼いてればいい。人形。」
感情というものを捨てられた。
名前も捨てられた。
心も捨てられた。
そして、壊された。
そして、捨てられた。
それから幾日。私は街を彷徨っていた。
そんなある日、奴隷になった。
私は買われた。
扱いがどうだったかなんて知らない。
私は心をもたないから。
だけど、私は恋をした。
主人に恋をした。
主人は優しかった。
心が無くてもわかった。
そして、触れてしまった。その温もりに。
「綺麗だよ。ノア。 君は美しい。」
傷だらけの私にそう言ってくれた。
名前もくれた。
私は彼を受け入れてしまった。
私の体中の傷を撫でてくれた。
私の心の傷も。
舐めるように、溶かすように、治すように。
ある日私は胸の内を主人に伝えた。
「・・・ご主人様?」
主人は黙っていた。
何かを考えていた。
しばらくして、静かに私を抱きしめる。
アイツに穢された私を。
そして、
「っ!?」
強烈な痛みが走った。
そして、強烈な眠気が襲って来た。
「奴隷の分際で。汚らわしい。スカー。」
私は「傷」と呼ばれていたのだ。もう一人の、いや、本当の彼に。
目が覚めた場所は拷問部屋だった。
「悪い子は躾けなければな。別にこれ以上傷が増えたって何も感じないだろ。大人しく啼けばいい。スカー。」
私の中で何かがはまっていった。
何かが重なった。
そうか。こいつも一緒か。
所詮世ノ中ナンテソンナモノ。
心の奥底から、何かが吹き出してきた。
気が付くと
主人だった肉が部屋中に飛び散っていた。
ソイツにやられたのだろう。
私の服もボロボロで、傷が丸見えだ。
アイツにつけられた。
いや、違う。
人形として創られたときの縫い目が。
腐りかけた縫い目から蛆虫が湧いてきた。
そして、左手が落ちた。
ああ。思い出した。
私は、いろんな人の部品から生まれた人形。
幼い頃、家が焼けた。放火だった。
炎はそれほど大きくなかったが、煙が酷かった。
両親や姉達は煙によって死んだ。
私は生き残った。
身体は少し焼けてしまったが。
犯人は身寄りのなかった私を引き取り、手術した。
両親や姉達の身体で新しい私を作った。
私は縫い目を全て切り裂いた。
切り裂いて。切り裂いて。切リ裂イテ。
気が付いたら私は私を見下ろしていた。
別に今更何も感じない。
人形だから。
ってことで、とりあえず初投稿。
FC2にあげてるのをちょこっと編集した感じ。
うへー。日本語って難しいー。