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神科学種の魔法陣  作者: なんごくピヨーコ
オアシス編
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A.D.α 2024/12/07 8:02 

神奈川Y市


「皆さんお早うございます。

 今はとても寒い朝になりました。

 東京の高尾山で初雪が観測されたそうです」

 十二月に入った途端、関東地域は急激に冷え込み、例年よりも早い冬の到来を告げた。

 テレビ画面は微かに雪の積もった駅前の映像が映し出し、男性アナウンサーが早口でニュースを読み上げる。


 朝、僕はいつものように起きたはずだけど、全身が鉛のように重い。

 寒気がして震えが止まらず、体の節々に筋肉痛のような鈍い痛みを感じた。

「ハッ、ハクチュ、あっすみません。

 はい、調理栄養士科一年十四番です。

 今日はヘクチュ、風邪で、欠席します」

 クシャミで汚れた携帯画面をパシャマの袖で拭きながら、脇に挟んでいた体温計の数字を確認する。

 三十八度二分

 やばい、体温を確認したら余計に体がだるくなってきた。

 しかし貧乏苦学生は、学校を休んでも夜の居酒屋バイトは休めない。

 年末は何かと物入りが多いし、無理してでも風邪などねじ伏せ、家賃と食費を稼がなくてはならない。

 僕は食器棚の引き出しの奥から探し出した風邪薬を、冷たい牛乳と一緒に胃に流し込む。

 押入れから真空パックしていた毛布を一枚引っ張り出して、薄い布団の上に重ねた。


「熱はあるけど頭はまだ痛くないし、学校休んで寝てるだけじゃ時間がもったいないよ。

 そうだ、ゲームの地下鍾乳洞ダンジョンクエストをクリアしたいな」

 僕はふらつく体を起こすと、枕を二個重ね背もたれにして、頭の位置を高く固定する。

 右目にモノクル(片眼鏡)をかけて小さなイヤホンを耳に差し込み、シルバーリングのチョーカーを首に巻いた。

 リング表面に埋め込まれた、まるで宝石の様な操作ボタン。

 右端の赤い起動ボタンを押すとモノクルの透明なグラスが赤く変化して、シルバーリングが微かに発光する。


 ==========

 ≪ゲーム使用上の注意≫ 

 体調がすぐれない時や変化を感じた場合などには、VBWバーチャル・ブレイン・ワールドシステム使用はお控えください。

 ==========


 ほんの一瞬、警告ページが出るが、すぐに画面は切り替わる。


『VBW バーチャル・ブレイン・ワールド』


 四年前タッチパネルがメインだった携帯型通信ゲームから、開発期間わずか一〇〇日で突如現れた電脳体感型ゲームシステム。

 モノクルと呼ばれる網膜投影機器と簡単に体に装着する専用機器で、視覚と聴覚、首の中枢神経を介して脳に特殊な電気信号を送ることで、場所を選ばす手軽にバーチャルなゲーム空間を体感できる。

 モニター画面もキーボードも無く、指先や音声で操作する必要すらない。

 ただ念じるだけで全ての指示が出せる。

 VBWは無料会員登録&無料機器貸出、人気ゲームも基本無料プレイという信じられない大盤振る舞いで、ユーザーを爆発的に増やしていた。


 僕の目の前には現実の六畳一間のアパートの室内と、ゲームのスタート画面が重なって見える。

 消し忘れたテレビのワイドショーは新種インフルエンザの流行、都内中学で学級閉鎖の話をしている。

「この風邪は、まさかインフル?

 昨日のバイト帰りの終電の中で、隣で咳き込んでいるオジサンにうつされたかもしれない」

 僕はそんな事を呟きながら、VBW提供無料ゲームの中で一番人気を誇るオンラインRPGゲーム『神科学の終焉』のログイン場面にパスワードを入力する。



******************************


『End of God Science -神科学の終焉-』


 神科学の時代は【黒い蝶】の厄災により終焉を迎えた。

 魔法の時代は、種が絶えたエルフとともに終える。

 今、力の時代は、巨人の欲と破壊により終焉に差し掛かった。


 女神ミゾノゾミが守護する亜空間霊廟に眠るのは、紅い右目の『神科学種』

 科学の知識と魔法と力を兼ね備えた者たちが、精霊の導きで終焉世界に蘇る。




 彼らは、

 世界を豊穣へと導くのか、

 破滅へと導くのか。

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