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異端教室  作者: おゆ
1/1

新学期

澄んだ空気の中、重たい門扉をくぐると、そこには広大な石畳の中庭が広がっていた。

 その中央に建つ重厚な建築物——国立第一学院は、名門と呼ばれるにふさわしい威容を放っていた。


 黒髪に少しクセのある少年、ノア・エリオットは、背負ったカバンの重さを感じながら門を通り抜ける。

 制服はまだ少し身体に馴染んでいない。けれど、それ以上に、ここに来ること自体が異質に感じられていた。


 そんなノアに声をかけてきたのは、彼と同じ制服を着た一人の少年だった。


「君も、新入生?」


 明るい金茶の髪、どこか港町の潮風を感じさせる雰囲気の少年は、気さくな笑顔を向けていた。


「そう。君も?」


「ああ。レオ・グレイス。漁港の方から来たんだ。」


「ノア・エリオット。よろしく。」


 それだけのやりとりだったが、不思議と気が合いそうだと感じた。

 ノアにとって、「話せる相手」ができたこと自体が、少しだけ気を楽にさせた。


数日後。授業が始まり、寮生活にも慣れ始めたころ。


歴史の授業では、この国の過去が語られていた。

それは教科書の中の話ではなく、いまもなお根強く残る“現実”の話だった。


「では今日の授業では、異能族と非異能族の関係史を扱います」

 教師が板書をしながら言った。


「大昔、異能族は突如として人類の中に現れ、最初は共存の道を歩んでいました。ですが、異能を恐れた王政や宗教が“異能者は神に背いた存在”と断じ、統治のために迫害へと舵を切ったのです」


 ノアはその言葉を、淡々と聞きながらノートを取っていた。

 (事実を知るほど、居心地が悪くなるな……)と、心のどこかで感じながら。


 その日の放課後。中庭のベンチでグレイスと並んで座っていたとき、ノアはぽつりと口を開いた。


「君、今日の授業……どう思った?」


「異能族の歴史のこと?」


「……うん。なんというか……あんなふうに語られるのが、正直つらいなって思った」


 ノアはしばらく黙っていたが、やがて静かに呟くように口を開いた。


「あの、その苗字って異能族の友好族だよね?」


 レオは驚いて、ノアの顔を見た。

「君もしかして異能族?」


「ああ。友好族ってだけでも命を狙われるよね。友好族は異能族には有名だから初めて会った時は安心した。でも、なんで自分まで命を狙われるんだって思わない?レオはさ、異能族への迫害のことについてどう思ってるの?」


「親からこの家は友好族と教えられた時、正直、なんで自分が異能族の友好族なんだ、とは思った。

だけど、、俺は異能族を迫害することをよく思わない。俺は異能族とは仲良くするつもりだよ。」


 その言葉は、ノアの胸に静かに染み入った。

 “異能”というだけで命を脅かされるこの世界で、初めて出会った「理解者」だった。

文書くのむずい

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