Memories No.4
読み取り開始(ID:No4)
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ミリアです。
今日は生い立ちの話をします。
この2年間、言葉や常識?を一杯勉強した成果も兼ねて喋りたいと思います。
えーと、2080年の頃、だったかな。
物心が付いた時、私は既に“大人の姿”をしていたの。
どうやら“体外受精”っていう方法で生まれたらしいけど…それが何かは、後で知ったの。
そう言えばずっと液体の中にいた時はたまに背中が寂しかった記憶があった気がするなぁ。
当時は”子供“という概念が私には無くて、気にも留めず、これが普通だと思ってた。
その時から現在に至るまで、ずっと、施設の皆のお手伝いをしてるんだ。
施設の名前はスヴァンバル世界種子貯蔵庫本社。
本来は地球規模で災害が起きた時の為に、世界の種子を保管をしているんだって。
世界の北部にある寒い場所の地下深くにあるんだ。
外に出れないような極寒の地で私は生まれたの。
だから、ずっと施設内で育ってきたから最近まで外の世界というのものも一切知らなくて。
最近日本に来たばっかなんだ。
施設の皆んなは、白衣を着て毎日欠かさず研究してます。
皆んな植物の研究や種子の世話に没頭だよ。
でも皆んな優しくて、だから不満を思う事もなかった。
外には出歩けなかったけど、施設はとても広いから、一人でよく施設の中を散歩、してたかな。
施設は色んな植物があって、室内が木々や茂みに覆われている部屋が幾つもあってね。
中にはもっと地下へ続くらしい、入り口もあったんだよ。
でもそこだけ入らせてくれなかった。
そもそも奥が暗くて怖かったから、中へ入る気にもならなかったんだけどね、へへ。
施設の植物は、月に一度くらいで新しい種類に変わるんだよ。
まるで季節が変わるみたいで、私はその度に“新しい世界”に来た気がして、楽しかった。
そうそう、その時初めて、だったかな。
二人の女の子が、施設に訪れてきたの。
その子達、他の国にも同じ施設があるからって世界を飛び回ってるんだって。
赤めなピンクのセミロングヘアが良く似合ってて、聡明な子だったなぁ。
元々日本人らしいんだけど、学生の身でありながらも、施設に融資してる子らしくて。
飛び級制度のない日本で学校に通う意味が無いからって席を置いているだけなんだって。
隙のなさそうな我のある女の子、って感じだったけど明るくて取っ付きやすいから一緒にいて楽しかった。
でもどことなく上品な子って感じだったな。
まだ学校に通ってた小中学生の頃、とある男の子の話しをしてくれたの。
学校でよく目立つのにクラスの中心人物じゃなくて、恥ずかしがり屋さんだったんだけど、どこか頼もしくて。
なんだか不思議と物知りで、分からない事があった時はたまに教えてくれたんだって。
その男の子との会話は突拍子もない事ばかりだったけど、それがおかしくて面白かったって言ってた。
その子はとても教えるのが上手だからって、彼に教わる子がちらほら集まってきたっていうのに、学校の成績は悪かったらしいの。
そんな変な男の子が居たんだって。
でもその男の子、小学生の時に母親を亡くしちゃったんだって。
それから段々とヤンチャがおかしくなって、中学生になった時には悪い子達?に良く混ざるようになっちゃったって残念がってたの。
何だか不良とか先生とかと仲が凄く悪かったんだって。
なんだか可哀想なような面白いような複雑だけど、実際どう言う状況だったのかな?
そういえば名前も聞いたっけな。
あれ?なんか凄い聞き覚えのある発音だった気がするんだけど…あーんもう、なんで忘れちゃうかなぁ。
えーと、く…くぅる…ぁ、クロウって言ったっけな。
うーんだめだぁ、思い出せないや、忘れちゃった。
因みに女の子の名前は希里江ちゃんって言うの。
あ、もう一人の子も凄い子なんだよ。
ミラちゃんって言うんだけど。
それはもう、その場にいるだけで誰もが目を奪われてしまう異様な存在感を放ってたよ。
私も見惚れちゃうくらい可愛らしくて儚げで、それがもう抱きしめていたい位、とても不思議な雰囲気を纏った子だったんだよ。
神秘的とも言うのかな。
きめ細かな銀の結んだ長髪を肩から垂らしてね、耳もチュン!って尖ってて可愛らしくて!
でもいつもフード付きのロングケープでフード被っちゃってて、お顔を隠しちゃってて勿体無いんだよ。
寒いからって言うのもあるかもだけどね、あはは。
でもね、少し別の事で気になった事があったの。
彼女、私と同じ瞳の色だったんだ。
施設には色んな国の人がいたんだけど、同じ色の瞳は今まで見かけた事がなくて。
他の人達は多少の違いはあったけど互いに同じ色をしてた人が多いのに、私だけ同じ瞳の人が居ないから仲間はずれみたいに感じちゃって少し気にしてたの。
私と同じ瞳の色を持っている事にホッとしたというか仲間が出来たみたいで嬉しくなってね「同じ瞳の色しているね」って言ったら、ミラちゃんも照れた様子で「うん」と一言頷いてくれた。
あまり喋らない子だから答えてくれた事にも何だか嬉しくて、小さくて可愛らしいこの子を見て何だかお姉さんになれた気分でとても嬉しかった。
その子はとても物静かな女の子だったのに、でも何か大きな意思と思想を持っていて研究施設では彼女の知識はとても頼られてるカリスマ性に溢れてる子だったイメージだね。
聞くところによるとね、世の中にある数々の発明と発展は、彼女の貢献によるものでもあるみたい。
活動は人知れずにしているんだって。
因みにミラちゃんも希里江ちゃんと同様で学生に身を置いてるらしいんだけど、やっぱり施設で働いてるみたい。
頭のいい人は皆んな学校に行かずに働くのかな?
たまに彼女達のお手伝いもしてたんだ。
大きな機械の中に入って寝そべっているだけで何もする事はなかったけれど、彼女は何かのデータを収集していたの。
数日が経ってから、ユグドラシルと言う大樹に纏わる研究だと教えてくれたんだよ。
人と植物は違うのに、私なんかのデータが何の役に立てるのかと疑問に思って聞いてみたんだ。
そしたら彼女が言ったの「研究テーマは『ミドガルズの未来と永劫』」で『ミドガルズの戦争を終わらせてアスガルズに証明する為』でもあるんだって。
ミドガルズ?アスガルズ?
私にはまだ難しくてよくわからないけど…なんだか、すごく大切なことらしいの。
何かの言い回しなのかな?
希里江ちゃんが言うには神話に登場するらしいよ。
神話とかよく分かんないから今度読んでみようかなあと思います。
でね、分からなすぎて、私を見た彼女が不思議と笑ったの。
それがもう、笑顔がもう尊くて!
難しくてよく分からない話なんて彼女の笑顔でどうでも良くなっちゃった。
それから歴史の勉強をしてくれて、過去の映像を見せてもらって色んな事に驚愕した。
施設の中で、こんなに外の植物にたくさん触れて、色んな想像を膨らませて、美しいんだろうなって思ってた外の世界は、実は愚かさと醜さにとてもガッカリしたよ。
自分達の住む世界を自分達で悪くするってどういう事なんだろうって、ガッカリだよ。
因みに『子供』という概念は映像で知ったよ。
このちっちゃい人は何?!
超可愛い!!
って驚いたよ、あははは。
それで私に子供だった記憶ってないなって気づいたんだ。
自分の境遇に違和感はあったけど。
映像を見た時に思ったのは、人々が自ら自分達の住む世界を戦争をきっかけに世界を壊しているという内容が悲しくて、こんなにも地球が悲しみに溢れてるなんて知らなかったから、自分の悩みなんて、ちっぽけすぎて…何だか、考えるのもやめたくなっちゃった。
彼女たちが言うテーマはその問題を解決する為の研究。
ユグドラシルを世界に生み出す事が研究目標。
ユグドラシルが新たな力と新たな幸福を与えてくれて。
人同士の戦争をなくして、その大樹から生み出されるものから人に新たな挑戦に没頭できる日が来るんだって。
ユグドラシルが世界を幸福の未来にしてくれると良いなって私も信じています。
ふぅ、いっぱい喋っちゃった。
ぁ、余計な事まで録音されちゃう!
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