012 ブラックカーテン
都市総合病院 (病室) ーーー
「・・・えっと」
「お前、織田真斗だな」
「どちら様ですか・・・?」
何なんこいつ図々しいな、誰だ?
あの持ってる四角い箱もなんやねん。
カタコトの日本語だし、日本人じゃなさそうだ。
「依頼で来た。お前にこれ渡せ言われた。」
「箱?依頼?誰から?名前書いてないやん」
「名前言えない、しかしお前がよく知る人物だ。」
「えぇ…」
名前の言えない、良く知る人物って。
そんな人この世におるん…。
うわぁ、箱受け取りたくないんだけど…。
「受け取れ」
「偉そうやなぁ…しゃないか。」
カチカチ落とせんだろなぁ…んん、せんな。
振っても音は…うわぁ中から細かな金属音がする。
チャラチャラシャラシャラ色々あんな。
「やめろ、壊れる。」
「え」
壊れるって事は、精密機器か?
盗聴とかGPSの類?
めんどいなぁ調べて貰うか、捨てたらあかんかな。
目を付けられて来たなぁ。
んー…段々と自分の人生終わってきた感。
「伝言がある。」
「聞きたかない。」
「貴方の過去奪った事件と関わる人物が写真の人物だ。」
「はん?無視かい!って。」
過去を奪ったって、俺の個人情報が漏洩したって事か?
えぇ…スヴァンバルしかいないじゃん。
プライバシー利用規約どうなっとんねん。
誰やこの写真の男女。
黒髪のショートロング、めっちゃ美人やないかい。
で、男はなんかイケメンぽいけど地味だな、
ツッコミどこ多。
「両親知っている。二人ともNAXAの宇宙飛行士だ。当時の事件に関わる内容ここに書かれている。らしい。」
「お、おう。」
何でそんな事まで知ってるんだ?
てか両親もうおらんのやが。
どうせ質問したところで守秘義務がどうこうってろくな返答ないんだろうよ!
「この、気になる箱の中身はなんなん?」
「見れば分かる、お前が組み立てるか知らない。」
「組み立てるのか。説明書とかあんでしょ?」
「ない。」
ないんかい!
他人の創作物を説明書無しでどうやって作んねんて!
「依頼人の目的は?」
「世界、騒動が起きる。ウーベン…ゴホンッ。日本側の阻止じゃないか。詳しいこと知らない。」
たいして答えになってないやん…。
「とりあえず爆弾だとか麻薬だとか、自分に害になることはないんやな。」
「ない、見せなければ。」
「じゃやべー奴やん!!ーーぁ。」
やっべ、つい口出しちまった。
所持してるだけでやばい金属ってなんだよ!
ぁ、まさか…。
「放射線物質とかじゃないだろなぁ」
「違う、ワタシが危なくなる。自分に害ないと言った。」
「自信が危なくなかったら良いみたいな事言うやんな。まぁそれなら帰って見るわ、気は進まんけど。」
「そうしろ、他言もするな。」
「おっかねぇ…」
仕事の依頼の殆どはやりがいと面倒の板挟みだけど。
今回はやりがいより面倒ごとの方が多すぎるけ、割に合わなすぎじゃないか…。
「ワタシは行くぞ、連絡は終わりだ。これは連絡先だ、置いておく」
「はいはい。ごくろうさん…もう来なくていいすよ。」
いやもう居ないんかい、開閉音しなかったで。
おっかねえ…。
アポイントなしで急に来られる訪問って恐怖でしかないわ。
普通に考えたらこれ受け取ってる時点でおかしいけどな。
見たかないけど、見たるかこのラブレター。
「『約何年か前、鈴岩一家が企てた施工プランで、打ち上げたシャトルが空中分解して爆破事故がありましたね。その搭乗者に貴方の御両親の名前がある。なんでも、当時は強行した打ち上げが見事に失敗したとされています。』」
鈴岩一家、この写真の男が鈴岩一家の倅って事か?
もう何年前だったか、覚えて無いな。
まぁ事実、実際にニュースにまでなった内容だからな。
結局、責任逃れで見つかってないって言ってたな。
てーか、よくほんま調べてんな、きもちわる。
「『写真の男女は、今回貴方を追い込んだ人物です。スヴァンバルの情報漏洩阻止のために君は狙われたわけだが、きっと致し方ない事だと理解しているだろう。』」
うっせ!
他人から言われると腹正しい事この上ないわボケェ!
阻止してきたのお前か!
「『そこで大事なポイントだが。君が別件で調べた枯れ木の情報は君が盗んだ情報とも一致している。その意味は分かるね?』」
はぁ?え?はぁあ!?ちょっ、ちょちょちょ。
これ差出人スヴァンバルの関係者じゃないん?!
なんで塩送ってくんねん!
あ?錯乱させようとしてんのか?いや分からんて!!
まず枯れ木を調べた事は羽柴さんと明智さん以外に知らせてないんだが…。
検査に入れた時にどっかで情報が漏れたか?
え、いや、え?身内の可能性もあるって事?
ウチの事務所の人間も疑う対象って事なん?
おいおいマジ…だるぅ。
「『調べた限りキーパーソンは女だ。女を止めれば今回の騒動は防げる。その箱は阻止するのに使うと良い』」
なんで女がキーパーソンなん?
ガラス玉を抑えりゃええんちゃうのかい!
どうしよう、羽柴さんに相談しよかな。
いや待てよ、自分の失態が思いの外、状況が悪くて煩わしさに消そうとか。
そう言う事か!羽柴さん…。
じゃぁ明智さんに相談………いやいや、羽柴さんとは違うベクトルで怖過ぎ。
なら事務所の誰かに助けを…いや絶対我関せずだろな。
なんなら羽柴さんファンからの妬みか。
…っふ、羽柴さんと肩を並べる俺に嫉妬か、出来る男は困っちまうぜ。
「…はぁ。」
今更、鈴岩一家が見つかった?
何で今更過去を掘られないかんねん。
「『連絡はこちらでしますので、ご参加下さい。』」
「だりいな…何やねん、クソが…。」
まだ治ってないんやて。
ーー
ーー
…先輩、怒るんかなぁ。
⌘⌒ ⌘⌒ ⌘⌒
スヴァンバル日本支社地下実験施設[会議室] ーーー
「ふぅ…。」
まだはっきりとフローは組み上がってないが、きっちり決めすぎても不意なトラブルで混乱を招きやすいからな。
あくまで目的地で植えると言う点だけが重要だろう。
今回は複数の場所に向かって欺く算段だ。
コストが上がるけど羽柴さんの人員を削ぐには十分だろう。
「さて当日のためのチェックをしましょうか。」
「ガラス玉以外で何か持って行くものあるの?」
「バット持ってく?」
「んな物騒な物、持ち運びませんよ大久保さん…」
予想外にも今回の作戦行動には大久保さんや松本さんも参加に加わってくれる。
一番厄介な仕事からは遠ざける事が前提条件の上での参加だけれど。
あとは彼の、椎名さんのコンディション次第か。
「僕はいつも通りキャンプ用品持って出ますね。」
「ぁ私もキャンプ用品持って行きたい。」
「遊びじゃ無いですよ、お嬢様。」
「えー良いじゃんちょっとくらい。」
当日は田中さんとその部下も参加してくれるとのことだし、これだけの人数なら充分だろう。
「今回は三班で行動します。恐らく大丈夫とは思いますが、山に入るので遭難時の対策もお願いしますね。」
「シイナくん、遭難時の対策って何が必要?」
「無線とかホイッスルですかね。ただ無線は資格が要るので、使うならホイッスルかな。」
「電波法ですね。」
「それです寿さん。」
「随分、アナログな物が必要なのね。」
「基本電気はないと思った方がいいです、それに一番嵩張らないと言うのが利点ですかね。」
「ふんふん。じゃぁラジオとか?」
「正直災害じゃなければ必要ないと思います。携帯用バッテリーを持っておく方が良いですね。」
「むぅ、じゃぁロープ!」
「建物とかで火災とか緊急脱出様にとかであれば使うかも知れないですが、外で使う事はほぼ無いかなと。蔦でいいレベルです。」
「くぅ!」
何を意地になってるんだか…。
手荷物になるものもあっても不便は無いだろうから車に積んで置くくらいはしておくか。
「缶詰とか乾物の非常食は持っとくのも良いです。一番大事なのは水ですね。」
野外の知識は植物に纏わることしか分からない、山の知識は彼にあやかる方が良いだろうな。
途中までは車で行くし、相当方向音痴じゃ無ければ道中の行き来は大丈夫なはず。
…心配なのはミリア嬢だけか。
「椎名さん、必要な物はリストに纏めて頂ければ、用意しておきますよ。」
「ありがとうございます、松本さん。」
「椎名さん、大事な日なので出し惜しみなくリストに書いておいて下さい。余っても構いませんから。」
「…わかりました。」
「じゃぁ、マスカットでも買ってく?」
「はは、そう言う事じゃ無いと思いますよ。」
「もう、真面目だなぁ。」
「マスカット好きなんです?」
「うん、ちょぉぉぉぉぉぉ好き!」
彼とは日が浅いのに、長く付き添った空気感出てるなぁ。
会議の時の椎名さんの発言が引き金になった。
本人は狙った演説だったんだろうか。
発言したなら責任を負うのが社会のセオリーだ。
彼にはその責任を負うその覚悟があったんだろうか。
こうして率先して行動していることが自然体に見えるのは彼自身の経験地の賜物なんだろう。
狙っても簡単に出来るようなことじゃ無い。
だから皆んな認めざる得なかったんだろうか。
さて。
「もうリストはこれで大丈夫そうですかね。」
「ぁ、はい。考えられる大凡の物は書かせてもらいました。」
「椎名さんありがとうございます。」
「それじゃぁリストを預からせて頂きます。」
「お願いします。」
箇条書きでサブタイも付いててマメなリストだ。
第三者が読んでも理解出来るように配慮を感じる。
ハハ、字を書くのは得意じゃないんだろうか少し荒い。
「とりあえずこれで揃えておきます。また何か必要そうなものを思いついたら遠慮なく言ってください。」
「分かりました。」
「さて、もうすぐ18時過ぎになりますけど、椎名さんは時間大丈夫ですか?」
「もうそんな時間だったんですね。」
「遅いので車で家まで送りましょうか。」
「あーそうですね…」
ん、なんか難しそうな感じか?
「門限とかあったりしませんか?学生ですし親も心配でしょう、お連れしたのはこちらですので私から説明しますよ。」
「いえ、親はいないので。ぁ」
「「「「え」」」」
「いや何でもないです、すみません気にしないで下さい」
「寿雄哉さん、地雷踏んでしまったのでは?」
松本さんの言うと入り地雷を踏んでしまったか?
帰る家がないとか、まさか。
じゃぁ今までどうやって過ごしていたんだろう。
ずっとキャンプ生活?
それにしては清潔感はある。
確かに服は傷んだりしているけど、汚れが目立つわけでもないし。
住む家はあるのか。
こうまで考えるのは失礼なものだろうか。
「椎名さん良かったら、この施設に社員寮があるので今日は一晩こちらで過ごすのはどうですか?一応生活する分には困らない機材は揃ってますので。」
「あ…あー、送ってもらうのも悪いから徒歩で帰ろうかなと思ってました。」
「いやいや、ここから歩いたら駅まで一時間はかかりますよ。」
「まぁそれは慣れてるので。」
そうか、キャンプはここの付近だし車もないのだから、いつも歩いているのか。
流石に夜も更けてくるし、こないだの熊の件もある。
こういう時にミリアが一声かけてくれたら、と思うんだけどな。
「…うん?ぁ。」
何でこういう時に限って気を利かせないんだ。
と思っても仕方ない事だよなぁ。
男を引き留めるなら女性が声掛ける方が効果的だ。
けど、それはあくまで男目線での話だしな。
「椎名くん折角だから今日泊まって行ってよ!キャンプの事とか教えて欲しいな。」
「ぇ。でも悪いですよ。」
「それが良いですよ。夜も更けてるし危ないですから、此方にとってもそれが都合良いです。」
「…それじゃぁ、そういう事にします。」
「うんうん、そうしよそうしよ!」
うーん、効率的と言うかロジカルな思想を持ってるのに、なんかこういう事には変に遠慮がちな気がする。
少し違う気もするが思慮深いと言うのか。
真面目、と言うのだろうか。
それも少し違う気がするな。
「それじゃぁ、このリストの買い出しは明日済ませるので、今日の賄いはひとっ走り行ってきます。」
「これから行くんですか?」
「そうですね、我々も今日はここで一晩過ごしますので、食材が足らないかと思うので。」
「付き合わせたみたいですみません。」
「いえいえ、知らない土地で一人で過ごさせるのも気が引けるので。それに、付き合わせてるのは此方です。」
「買い物手伝いますよ。」
「いえ、ミリア様に施設の案内をしてもらっていて下さい。時間掛かりますので、寝るまで忙しくしてもらいたくはないので。」
「…分かりました甘えます。」
「任せて!」
真面目だ。
年齢に似つかわしくないほどに。
この人の私生活が気になってしまう。
一体どう言う生活したらこういう思慮深くロジカルな生き方が出来るようになるんだろうか。
親の躾なのか?
それにしたらやり過ぎな気がする程だ。
きっと良くはない、そんな気がする。
でも親はいないと言った。
ずっと一人暮らし?
施設暮らしなのか?
それなら門限があるだろうな。
でも門限はないと言っていた。
うーん。
「それじゃぁ、行ってきます。また後ほど」
「お気を付けて」
「行ってらっしゃーい!」
⌘⌒ ⌘⌒ ⌘⌒
ーーー
「お疲れ様です。はい色々と。それに関しては大体合ってると思います。それはまだ確定してないですね。そうかもです。恐らく3日後です。特別なことは特に。ですね。僕も浅いので。はい。お願いします。お疲れ様です。ーーーー ふぅ。」
「…シイナくん」
「ーー!」
「あはは、そんな驚くことないじゃない」
「ごめん」
「何してるの?こんな夜更けに。寒いじゃん、早く戻ろ?」
「うん、ちょっと夜風に当たりたかった。」
「わかる。この静けさと虫の鳴き声とか草木が擦れる音とか、心地良いよね。」
「うん、キャンプする時の一番の醍醐味かな。…ミリアも寒そうな格好で出てきたね。」
「へへ、中が暖かいからね。うー、寒いよぅ」
「分かったよ。戻ろうか」
「あはは、戻ろ戻ろ。ここ、嫌じゃなかったでしょ?」
「…うん」
ーーー
⌘⌒ ⌘⌒ ⌘⌒




