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双つ花  作者: 淡雪
16/30

第16話「沈黙のSOS」

その夜。

咲良は布団の中でスマートフォンを握りしめていた。


画面には、加奈の連絡先。

何度もタップしかけては、キャンセルを繰り返している。


(返事がない……)


今日一日、学校を休んでいた加奈。

メッセージを送っても既読にならない。電話も通じない。


(まさか、本当に――)


心の奥に、冷たい恐怖が広がっていく。


そんなとき、不意にスマートフォンが震えた。

咲良は反射的に画面を開く。


差出人:非通知番号

件名:「彼女の最後の場所」


添付されたのは、一枚の画像だった。


薄暗い屋上、手すりの前に立つ加奈の後ろ姿。

制服の背中が、強い風に揺れていた。


(これって……学校の、屋上――!?)


咲良は息を詰めた。


時間は、夜の9時13分。

――ほんの数分前に撮られたものだった。


胸が苦しい。

喉の奥に鉛を流し込まれたような感覚。


(今からじゃ、学校には……)


そう思ったとき、もう一通のメッセージが届いた。


差出人:結依

本文:「お姉ちゃんが行くなら、彼女は助かる。行かないなら、知らない」


その言葉に、背筋が凍りついた。


(これは――脅しなんかじゃない。あの子は、本気で……)


咲良は跳ね起きると、部屋を飛び出した。


鍵を閉める音も、足音も気にせずに。

ただ、加奈の元へと――


(間に合って、お願い)


靴ひもを結ぶ時間すら惜しんで、サンダルのまま外へ駆け出した。


風が強い。

夜の空気は、夏の終わりの熱と、何か不穏なものを孕んでいた。


咲良はただ、走る。


呼吸が乱れ、足がもつれても。

脳裏には、加奈の後ろ姿と――あの、結依の無表情な瞳が、ずっと焼きついていた。

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