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双つ花  作者: 淡雪
12/30

第12話「壊れゆく視線」

「やっぱり、お姉ちゃんは加奈さんを選ぶんだ」


その一言を最後に、結依はゆっくりと図書室へ足を踏み入れた。

スカートの裾が揺れるたび、床に硬質な音が落ちる。


咲良の手の中で、加奈の指先が小さく震えた。


(逃げなきゃ――)


そう思って立ち上がろうとしたとき。


ガシャンッ!!


結依の手から、何かが床に叩きつけられた。

それは、陶器の小さな箱――かつて咲良が誕生日にあげた、音符模様のアクセサリーケースだった。


「返すよ、お姉ちゃん。これも、記憶も、気持ちも、全部いらないってことだもんね?」


結依の声は、笑っていた。

でもその目は、笑っていなかった。


「加奈さん。……ねぇ、あなた、なにをしたの?」


「わたしは……っ、咲良ちゃんを守りたいだけ……!」


「違う。あなたは、“盗んだ”んだよ。わたしから、お姉ちゃんを」


机の上の本が、一冊ずつ床に叩き落とされていく。

無言で、淡々と。

けれどその所作の一つ一つが、尋常ではなかった。


「じゃあ、返して」


結依が、加奈に近づく。


「返してよ……お姉ちゃんを……返してよッ!!」


その叫びと同時に、結依の手が加奈の髪を掴んだ。


「やめて!!」


咲良が叫び、ふたりの間に割って入る。

加奈がよろけて尻もちをつく。

結依は、呆然と咲良を見た。


「……なんで、あの子を庇うの……? わたしが、どれだけ、お姉ちゃんのこと……」


そのまま結依は、その場に崩れ落ちた。

床に膝をつき、両手で頭を抱えながら、嗚咽のような笑い声を漏らす。


「ははっ、あはっ、ねえ……お姉ちゃん……」


彼女の目に、理性はもう残っていなかった。


「これで終わり、なんて思わないでね。まだ、ぜんぜん足りてないから」


そして――結依は静かに立ち上がり、

図書室の棚の奥に手を伸ばした。


そこには、鋏があった。



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