夜が明けると
嵐が過ぎて、朝日が、高度電脳帝国の町を照らしていた。
すると、嵐の傷跡を治すための作業ロボットが、どこからともなくやってきて、修理を開始した。作業の指示は、どこかの制御ルームから遠隔で出しているようで、作業ロボットを指示している人はない。
しかし、作業現場に、人が立ち入らないように、赤と白のストライプのコーンを設置して、その周りで、交通を整理している人はいる。
コータ「申します、申します。電脳板。近所の被害状況を教えてください。」
電脳板「この近所で、落雷が3件あり、それに伴う、火災、倒木がありましたが、現在、復旧中です。変電所に落雷がありましたが、配電を切り替えてありますので、被害はありません。」
コータ「それじゃ、大したことはありませんね。」
電脳板「まあ、日ごろの対策が出来ていますからね。」
コータ「頼もしいね。」
ケイタ「散歩に行こう。」
コータ「そうだね。あれ!、電脳板は?」
ケイタ「それは、おいておけ。散歩するには、邪魔くさい。」
コータ「そうだね。」
ケイタ「高度電脳帝国は、電気の支配する国だな。僕たちの行動も、思考も、経済も、生まれた時から死ぬまで、すべて、丸裸だ。高度電脳帝国で、生きる以上、そこから逃れることはできない。」
コータ「でも、そのことによって、高度電脳帝国は、犯罪もほとんどないし、平和だし、こんないい国ないと思うけど、それが、なにか悪い?」
ケイタ「たしかに、高度電脳帝国は、犯罪もほとんどないし、いい国だ。しかし、変な国ではないか。なんか、元気がないような気がしないか?。かれらは、100メートルも走れない。重いものも持てない。なんというべきか、ひ弱なモヤシの国だあ。人々が、不健康で、ひ弱だ。無気力というべきか。」
コータ「そうかな。みんな、元気で、活発だと思うけどなあ。」
ケイタ「病気じゃないという意味では、健康かもしれん。しかし、トガリ山の人々に比べると、違うだろう。僕たちは、トガリ山の人たちを知っているから、高度電脳帝国の人と比較すると、わかるだろう。」
コータ「そうか。」
ケイタ「いいか。これは、電脳板に絶対聞かれちゃいけない。トガリ山の人々の身体能力は、高度電脳帝国に知られてはならない。高度電脳帝国の人たちの身体能力にくらべたら、トガリ山の人たちは、スーパー人類、モンスター人類という感じだな。それを、高度電脳帝国に知られてはならない。つまり、この話題を、電脳板の前でしゃべってはならない。申します、申しますと言わなくても、24時間365日、情報を収集して、分析しているのだ。今は、散歩だから、聞かれていないと思うが、どこかのカメラに写っているかもしれない。もしかすれば、くちびるの動きで、どんな会話をしているのか、分析できているかもしれんな。」
コータ「絶対に秘密なんですね。」
ケイタ「そうだ。絶対だ。電脳板は、24時間365日、僕たちの情報を集めている。しかも、電脳板なしで、高度電脳帝国で生活することはできない。いたるところで、監視カメラが撮影している。そこから、逃れることはできない。だから、この話は、もうしない。」
昨日の嵐の傷跡の修復状況をみながら、二人は散歩を終えて、家に戻ってきた。
コータ「冷たい飲み物が飲みたーい。」
ケイタ「冷蔵庫にアイスはあるか?」
コータ「あるさあ。昨日の内にちゃんと買っておいたからなあ。」
ケイタ「お前は、賢い奴だな。」
電脳板は、ケイタとコータはアイスが好きだと記録した。