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世界の果てに  作者: つなまる
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第二話 箱庭にて

「っ……!」

眼前に広がる風景にカムルは思わず息を呑んだ。

 暖かな日の光。川のせせらぎ。心地良い風。そしてその中心には、長く伸びた支柱に手脚を淡く銀色に光る鎖で縛られた人?がいた。

「人?なのか?」

腰まで流れる銀髪。強調しすぎない程度のスタイルの良さ。整った顔立ち。そして垂れる涎……

 「ん?ヨダレ?」

カルム困惑である。

「ジュル……ハッ!」

「……」

「……」

「ようこそ!私の箱庭へ!」

「……」

「よ、ようこそわた」

「ヨダレの後ついてるぞ」

「……グググ」

謎の効果音を発しながら、銀髪残念系美女は口を拭い、赤面しながら睨みつけてくる。

 なんとも眼福である。

 「やり直そうか?」

 「結構です!」

扉からやり直そうかと提案してみたが、食い気味に断られてしまった。

 「…何かの儀式の最中なら出直すが……」

「そうみえますか?」

にっこり満面の笑みではあるが言葉にすごく棘を感じる。

これは死線を潜り抜けて来た俺だからわかる

     すごく怒っていらっしゃる。

 「えっと…お名前は?」

「ほーん、縛られた女性を前にして自己紹介ですか、あなたの感性はとても面白いですね」

くっ、とりつく島もないとはこのこと…

「お、おろしましょうか?」

「あら、気が利くのね!すごーく助かる!」

棘を含んだ言葉とは裏腹に凄く可愛くウィンクしやがったぞこの残念美人。

 とは言っても一歩前進した。

 次の問題だ、どうやって下ろそうか。

 俺の身長は175センチ程、対して縛られてる手の部分は地面から4.5メートル上どうしたものか。

いや、降ろすのは簡単だ、だが触れていいものなのか?

そう思案していると

「私に考えがある」なんともドヤ顔である。

「とりあえず近くまできてくれる?」

自信に満ちた顔に軽く苛立ちを感じながらおおよそ五メートルの距離を詰めていく。

 「すとーおっぷ!」

1メートルないほどの距離まできたところで声がかかる。

「後ろを向いて、中腰!手は膝に!」

何を言っているんだこのダメ美人は、そんな困惑している俺を

「ほらはやく!」と急かしてくる。

とりあえず言う通りにするかと後ろを向いて中腰にした瞬間!

 ガシャンと言う何かが壊れる音と共に背中に衝撃が走った。

「げふぅっ……!」

「着地成功!」

あの衝撃はダメ美人が背中を足場替わりに踏み込んだものだった。

しっかりと深呼吸をし、俺は叫んだ

「自分で降りれるじゃねえかぁ!!」

そんな俺の魂の叫びも虚しく

「降りれないとはいってません」とケラケラと楽しそうに笑うダメ美人であった。


お互い、主に俺が一息つき、ここはどこで君は誰だ、縛られていたのは趣味か、などと矢継ぎ早に質問した。

「質問が多いですね、まず、私の名前はフェルノート。フェルと呼んで下さい。そしてここから長い話になります。座って話ましょうか、それとそんな趣味はありません!」とフェルは先程まで無かったであろうテラスを指差した。



1200年前、人と魔族は互いの領土権のため小競り合いを続けていた。それは大小はあれ、国境付近の小競り合いに過ぎなかった。そして1000年前、その小競り合いに終止符が打たれることになる。

英雄と呼ばれる五人の転移者の出現である。

五人はそれぞれに特殊な【スキル】と言われる力と、それぞれが、火、水、地、風、聖、の属性を持っていた。

英雄の出現により人は魔族の領域に大きく進軍し、そしてあっという間に魔族の領土は三分の一にまで減ってしまったのである。


「英雄記か」

これはこの世界の人間ならば一度は聞いたことがある英雄記と呼ばれる物語だ。

「で、英雄の活躍により不可侵条約が結ばれた。めでたしめでたし、だろ?」

「英雄記…か随分と都合の良いように書かれているものね」

そう言ってフェルはどこか悲しそうに笑った。

「おかしいと思わない?」

「そこまでの力がありながら、何故滅ぼさなかったのかということか?」

俺の答えにフェルは目を丸くして驚いた。

「簡単な話だ。滅ぼせない何かがあった、そしてそれは人間にとって不都合な何かだ、だから語られなかった」

「それともう一つ、魔族は人より遥かに強いはずだ、いくら英雄が現れたからといって、そこまで簡単に負けるのか?」

余程感心したのかフェルはおお〜と小さく拍手をしている。

「その疑問も含めて本題はここから何故滅ぼせなかったのかそして私は誰なのか」


そうしてフェルは話し始めた。
















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