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第17話 ~♪

 取りあえず沖縄に来たということなので、沖縄本島の観光名所をいくつか適当に回ってみることにした。

 首里城などにはあまり佐倉は興味がないらしく、ざっと見る程度だったけどな。

 国際通りも軽く見て回ったりもしてみているが。



「これ美味しいかも! あ、次はガイドブックにのってたアレ食べよう!」

(いや、そんなに連続であれもこれも食えねーってば)

「えー? 別に私はまだまだいけるんだけどなぁ」

(そりゃ佐倉はそうかも知れんが、俺はいけないっつーの!)


 食べ歩きをさせられる事になり、中々に大変である。胃が。

 更に、佐倉はアクセサリー店にも興味を示した。


「あ、このアクセサリー可愛い! どれどれ~、ほいっ!」

(おぉ、アクセサリーもちゃんと再現できるんだな)


 佐倉は星砂の入ったアクセサリーやら何やらをコピーと言えばいいのか? 自分の体に再現したりしている。

 そこら辺は流石女の子だなぁ。


「ふふ~ん。私にプレゼントできなくって残念っしょ?」


 何故か得意げな顔で言ってくる佐倉。


(いや、俺的にはお金かからなくて経済的だなぁと思ったけど)

「うわっ。デリカシーないわー。ないわ~」


 うっせ!


(わーったよ! 買うよっ)

「へ?」


 佐倉がコピーしていたアクセサリーを手に取る。


「ちょっ。冗談だって。別に本当に買わなくても――」

(そのコピーって、記憶が曖昧になったら出来ないんじゃないのか?)

「え? あぁ……そう、かも?」

(そういう事だよ)


 ま、折角沖縄まで来たのだしな。

 お土産的にこれくらいはかまわんだろ。


 そんなわけで、アクセサリーを買っておく。

 実際に佐倉にプレゼントは確かにできないので、持っているのは俺なのが締まらないところだけどな。


「その、あんがと……」

(いや、いいよ。これくらいはいい土産だろ)

「……こういう時はもっと言う事がさぁ」

(あん? 言う事?)

「うっせ! そんなんだから童貞なんだよっ」


 なぜいきなりキレる。

 意味わからん。


 まぁ、若い女の子。しかもギャルの心持ちなんて俺にわかるわけないしな。

 意味不明で当然か。


 童貞だしなっ!


「ほらっ。次の店いくよ!」

(はいはい。次ね。ん? 次って?)


 俺に向かって振り返った佐倉が、にやりと笑った。


「明日は海入るんでしょ? 着なきゃねぇ。み、ず、ぎっ」


 あ。

 わ、忘れてた……。



 その後。

 死ぬほど痛々しい視線を浴びつつ、女物の水着をあれこれ物色することになった。

 詳しくは覚えていない。

 ていうか、覚えていたくない。


「どう? どうっ? 似合う? 私可愛くないっ?」

(わかった、似合う。似合うからもうそれにしとこう。な?)

「えー? でもあっちも気になるー」

(いや絶対、それが一番似合うって! マジで!)


 佐倉のテンションがやたら高かったことだけは、覚えているけどな……。


 因みに、佐倉の選んだ水着はやたら布面積の少ないモノであった。

 まぁ、一応眼福ではあったのかも知れない。

 まともに見ている余裕なんてなかったけれど。








 観光と買い物を終えた俺達は、夕食を軽くすました後にホテルに向かった。


 夕食に食べたのは沖縄そば、というかソーキそばである。

 思ったよりあっさりとした味で食べやすかったなぁ。

 佐倉は、「う~ん。そばに似て……いや、ラーメン。むしろうどん?」などと怪訝な顔をしていたが。まぁ美味しかったようではあった。



 そして、車を飛ばしてホテルにたどり着いたわけだが。


 ホテルのフロントで鍵を貰うと、佐倉が声をあげた。


「え? カギ一個? 一部屋? 同室じゃん!」


 まぁ、そうなるわなぁ。


(しょーがないだろっ。一人で二部屋も取ったら不審だろうがっ)


 しかももったいないし。


「う~。 まっ、そらそうか。私らどうせいつも一つ屋根の下ではあるわけだしねぇ。ん~。しゃーない、許す!」


 なぜこいつに許してもらわなきゃならんのか。と思わなくもないが。

 佐倉からすれば、なんでこんなおっさんと同室で一晩過ごさなくてはならないんだというところだろう。


 つまりお互いさまなので、こちらも黙って。許す! しかない。



 部屋の中へ行き、荷物を降ろす。

 結構歩いたので、脚が疲れ気味だ。

 このホテルは大きい風呂やらサウナやらがあるので、そこで疲れをとるとしよう。

 風呂に行く準備を整えていると、佐倉が声をかけてきた。


「……あのさぁ。よくよく考えたら、優人にくっついていけば私もお風呂の感覚味わえるんじゃない?」

「はぁ!?」


 佐倉は、当然だが体が汚れることもないので風呂に入る必要もない。

 というか、入ることもできない。

 勿論、形として入った風にはできるだろうが。それじゃ意味ないしな。


 しかし、確かに俺に憑りつけば確かに風呂に入る感覚もわかるかも知れん。

 だが。


「そりゃ流石に、まずいだろ」


 風呂に入る以上、俺は裸にならねばならん。

 他にも、大浴場だから客もいるだろうし。


「大丈夫! 目閉じてるからっ。ねっ」

「ん~。まぁ、佐倉がそう言うなら……」


 そんなわけで、佐倉も一緒に風呂に入ることになった。




「ふぁぁ~! 久々のお風呂は気持ちいいわぁ~」


 俺が風呂に入ると同時に、形式上は湯船に一緒につかっている風の佐倉がそう声をあげた。

 佐倉の恰好は、身体にバスタオルを巻いた状態だった。ま、本当にバスタオルを湯船につけているわけじゃないから、別にいいのだが。

 とは言え。


(その恰好、恥ずかしくないのか?)

「え~? だって服着たままでお風呂は流石に変な感じだしー。かと言って全裸は流石にまずいしー。大体、水着のほうが露出度高いっしょ」

(まぁ……佐倉がそれでいいんなら、いいんだけども)

「つっても、私が目を開けないことをいいことに、あんまりじろじろ見ないでよね!」


 などと言いつつ、佐倉はちらちら薄目を開けていたような気がしたが。

 俺からなんか言うのも変なので放っておいた。


 

 このホテルの大浴場は、普通の大風呂の他にもいくつかの種類の風呂やらサウナやらが存在した。

 俺がのんびりと風呂につかっていると。


「ねぇねぇ。次行こう次!」

(あん? 次?)

「他にもお風呂あるじゃん。色々入ろうってことー」

(……んー、あいよ)


 もうちょっとゆっくりしたかったけど。

 つーか。


(やっぱり、お前見てるだろ)

「ちょ、ちょっとだけ! 薄目だけだもん! 湯気でよくみえねーからへーきだし!」

(佐倉がそれでいいなら、いいけど……)


 しかしこれ、幽霊って覗き放題って事なのではなかろうか。

 う~ん。

 でも、ま。俺にどうにかできることでもないし。どうでもいいか。

 もし、俺が死んで幽霊になることがあったのならその時に考えよう。




 明日も早いので、風呂を適当に切り上げてとっとと寝ることにしたのだが。


「~~♪ ~♪」


 暗い中。佐倉が空中で浮きながら寝そべってはいるが、ご機嫌なのか中々寝付けないようである。

 何しろ思わず鼻歌漏れてるしな。

 なんで空中で寝ているかと言えば、ベッドが一つだけだからだ。


「さくらー。ねれないのか?」

「あぁ、ごめんごめん。ついつい。もう寝るわー。おやすみ~」


 もしかして、明日の海が楽しみで寝付けないとかだったのだろうか?

 いやまぁ、佐倉は普通に寝るとかとはちょっと違うのだろうけれども。

 もしそうなんだったら、随分と可愛らしいことだ。


 ま、それなら連れてきたかいがあったということなのだろうなぁ。


 そう思うと、なんだか俺まで寝付けなくなってくるような気がした。

 小学生か俺は。


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