初めての依頼
次の日、昨日と同じように早起きをして、オルガンテとか他の人と一緒にテレビで予報を見た。しばらくすると、慌ただしくリビングの扉が開いた。
「ごめんチェカちゃん!ちょっと寝坊しちゃった!すぐに朝ごはん作るね!」
私と同じ、Bランク以上の冒険者じゃ無いけどここに住んでるアイリーンさんだ。朝ごはんはだいたい当番の人とか都合がいい人が作るけど、アイリーンさんのご飯は特に美味しい。
「あっリトがもうない…パンでいいか…」
少し待つと、美味しそうなサンドイッチが出てきた。材料は普通のはずなのに美味しく感じるサンドイッチ。冒険の朝にはピッタリ。
昨日と同じような荷物に加えて、買った道具ともらったナイフ。準備はバッチリ。
「いってきます」
自分の手でドアを開けて、ギルドに向かう。ギルドの扉も自分で開けると、中の人たちがチラッと私を見てくる。堂々とした足取りでボードに向かって、簡単そうな依頼を探す。左下にある依頼の中でも、近い場所で、今持ってる道具でできる依頼。
昨日も思ったけど、ルージョ草の採取が良いかもしれない。ルージョ草なら本で知ってる。受ける依頼は決まった。受付に持って行こうとしたその時、
「その依頼受けんならこっちも受けたほうが効率いいぜ?」
私に声をかけた同い年くらいの男の子はそう言った。短い黒髪で私と同じような格好をしてる。
「こっちの依頼はルージョ草の生えてるとこと同じ場所に生えてる薬草の採取だし、難易度もおんなじくらいだ」
「…や、教えてくれてありがたいんだけど、私、依頼受けるの初めてだし一つにしようかな」
私がそう言うと男の子はちょっとわざとらしくうーん…と考えてパチンと指を鳴らした。
「じゃあ俺と一緒に受けようぜ!分からんことがあったら俺が教えてやるイデエエエッ!」
ゴンっと鈍い音がして、男の子が頭を押さえる。いつのまにか男の子の後ろに立ってる男の人が男の子と頭をガシッと掴んで下げた。
「悪ぃ嬢ちゃん!うちの倅が舐めた態度を取って!!こいつぁさっきまるで自分が依頼に慣れてるみてぇに言ったけどこいつもまだ冒険者になって1ヶ月なんだ!さっきのは忘れてくれ!」
あまりの勢いにちょっとびっくりしてると、他の冒険者と話してたオルガンテが見かねてきてくれた。
「ああ、あまりお気になさらず。誰でもそう言うことはありますし、なんなら一緒に受けませんか、依頼」
「オ、オルガンテさん!あっはいっ勿論喜んで!…テメェよりによってなんつー子に舐めた態度とってんだ…!」
なんかよく分からないけど、4人で依頼を二つ受けることになった。
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「俺、俺な!セドっていうんだ!親父と一緒にずっと旅してて、そんでこの前8歳になったから冒険者に登録したんだぜ!つまり俺の方が先輩な!イデッ!」
どうやらこれは親子で日常茶飯事らしい。私の周りにこう言う人はいないから新鮮だ。
「えっと、私の名前はチェカで、今日が初めての依頼です。ずっとこの街にいるので、いろいろ教えて欲しいです」
「うちとなんたる違いだ…。ええと、改めて、俺はセドの父でロドって言います。オルガンテさんの噂はかねがね…」
「誰だよこのナヨっとしたやイデエエエッ!!」
「バッカやろう!オルガンテさんっていやぁ10年くらい前まで有名だったBランク冒険者じゃねぇか!あ、いや勿論今でも有名ですけど…」
慌ててロドさんが取りつくろうと、オルガンテはふっと笑った。
「別に変に気を使わなくてもいい。実際ここ10年くらいはあまり大きな依頼を受けていないしな。チェカがいるからこの街を離れる依頼は極力避けているんだ。まぁ、チェカも冒険者になったことだし、これから少しずつ再開するさ」
依頼の受付をして、今4人で街の門から少しのところにある草原に向かってる。街の外のはあまり出ないから緊張するかもと思ってたけど、会った2人がにぎやかなせいかあまり不安に感じない。
「あ、あれ、ルージョ草だよね?」
図鑑で見た草と全く同じ見た目をしてる。確か本にはルージョ草は根っこごと取る必要はないって書いてあった。だから採取用ナイフで切り取ろうとすると、
「ちょっと待った。その切り方でも別に悪くはないんだが」
オルガンテに引き止められた。
「植物には良い切り方がある。ルージョ草は斜めに切った方がいい」
へぇと3人揃って感心すると、セドはロドさんに20年以上も冒険者やってるのになんで知らないんだって言ってロドさんはセドにそんな細かいこと知らないだとか、相変わらず喧嘩した。
そのあとはみんなでルージョ草の採取をした。4人でやるとすぐに袋はいっぱいになって、休憩することになった。ギルドの途中で買ったパンをカバンから出して地面にシートを出して座る。ちょっとしたピクニックみたい。
食べながら午後について話す。ルージョ草はもう集まったから、受けたもう一つの依頼、ヴァッケ草の採取について。ヴァッケ草は同じ草原で取れるけど日陰に生えやすいからこれから森との境目、木の下を見て回る。
「よっしチェカ!どっちが沢山取れるか競争しようぜ!!」
「…うん、いいよ」
片付けをして、オルガンテから「あまり森に入るなよ」と言われて許可をもらったから、2人で森に向かって駆け出した。