装備を揃えよう
カン、カン、カンと音が響いてる。鍛治エリアに来た。普段はこっちの方に来ないから独特の雰囲気にちょっとびっくりする。
「とりあえず買うのは採取用ナイフと、短剣。最初はまぁ、数打ちものだな。チェカ、4000ミリアやるから自分で店を周って買いたいものを考えてみてくれ」
そう言ってオルガンテはお金をくれた。持ってる財布の普段使ってない所にお金を入れる。とりあえず目の前にあるお店に入ってみると、いろんな剣とか盾があってよく分からない。値段の横には説明が書いてあって、とりあえず初心者向け、子供向けって書いてあるいくつかに目をつける。
「やぁ、オルガンテさんじゃあないですかぁ!珍しいですねぇ!今日はどうしたんです?」
「ああ、今日は俺じゃなくてな。この子が買うんだ」
「なるほどなるほど、ではオススメの剣を持ってきますよ!いや、オーダーメイドにします?」
「最初から便利なものに慣れると基礎ができない。自分で考えさせて数打ちものを買わせるさ。それにこいつはまだ子供だからな。すぐに剣も変わる。だから普通の初心者に接するつもりでやってくれ」
「なるほど、流石はオルガンテさん!よく考えてますねぇ!」
「変に持ち上げないでくれ…」
そう言ってオルガンテはがっくりした。2人は知り合いみたい。
「お嬢ちゃん、ケースに入ってない剣は持ってみてもいいからね」
「はい…」
おじさんがそう言ってくれたので目をつけてた剣の一つを持ってみる。
(ちょっと…重いかも?)
その隣のもう少し小さいのも持ってみる。こっちは重さはもちろんあるけどそこまで重くはない。もう一つ隣のも持ってみる。重さは同じくらい。
(やっぱりよく分かんないなぁ)
「お嬢ちゃん、軽くなら振ってみていいよ?剣によって微妙に重心が違う。同じくらいの重さでも振ってみると随分違く感じられるよ?」
軽く上下左右に振ってみると、確かに二つの剣に違いがある。
「じゃぁ、こっちにしま…」
「ん?」
二つの剣を持ったまま固まった私をおじさんが不審がる。でもそれどころじゃなかった。
(まだ、このお店しか見てない…!)
「す、すみません…他のお店も見てきたいので、一旦返します…」
「だっははははぁ!正直だなお嬢ちゃん、気にせず他も見てきな!」
グギグギと言う私を見ておじさんは豪快に笑った。二つの剣を元の場所に戻して店を出る。隣の武器屋も剣ばっかりで同じような感じだった。同じように試し持ちをさせてくれくれたけど、最初のお店の方がしっくりきた気がする…。
さらに隣のお店に入ってみると、ちょっと雰囲気が違った。
「…お嬢さん、君は冒険者ランクいくつかな?ここはあまり初心者向けじゃあないんだよ…っとオルガンテさん。投擲ナイフですか?」
「いや、今この子に自分の武器を選ばせてるんだ」
このお店はさっきの二つのお店より値段が高かった。それだけじゃなくって、弓矢とかも置いてある。
「初心者向けはこっから右だよ。さらに奥へゆくと質も値段も高くなる。マニアックな武器とかもね」
「ありがとうございます」
結局、私は最初のお店の剣を買った。採取用のナイフも同じ店で買ったらお得になるとかで、店員さんのおすすめを買った。値段は3850ミリア。ギリギリだ。
「あとは、手袋、ロープと、袋、靴だろ、それに…」
「買うものがいっぱいだね。今日中に買い終われるかな」
「いけるさ。あとチェカ、目を瞑って手を出してみろ」
「…?」
手を伸ばすと、すぐに重みのある何かがのせられた。ざらざらした冷たい触感。
「はい、目を開けて」
恐る恐る目を開けると、手には一振りのナイフ。
「わ、いいの?」
「ああ、俺からの冒険者祝いだ。短剣が折れた時の予備用な。なかなかに頑丈だぞ」
「ありがとうっ!大切にするね」
見た目は質素だけど、私にはごうかな剣よりも価値があるように思えた。それに、あのオルガンテが「頑丈」なんていうんだから、きっと折れないに決まってる。
その日はいろんなお店を回っていろんな物を買って終わった。アパートに帰ってその日の出来事をそこにいたメルケキに言ったら「ずるい!僕もそのナイフ欲しいっ」って言われたけど勿論あげない。