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Bランクのフィッツィ

 オルガンテに聞いたら、倉庫の板は好きに使って良いって言ってたから折り畳みできる板を持って行くことになった。そして、靴のトゲトゲは意外にも持っていないらしい。オルガンテはお金を出すと言ってたけど、なんとか自分が依頼で増やしたお金で買えそうだから自分で買うことにした。


 セドとサラハちゃんも持っていなかったから、3人でお店に行く。武器屋では見かけたことがなかったけど、冒険者用の雑貨屋には売ってそう。ギルドに一番近いところは便利だけど、ちょっと値段が高いんだよね。オルガンテに教えてもらったロープとかを買ったお店に行こう。ギルドで11時に待ち合わせだから10分前には着かなきゃ。


「サラハちゃん!早いね」


 私が着く頃にはもうサラハちゃんがいた。


「やっほーチェカ。まぁ、早くて損はないからね」


 ちょっと手を上げて答えると、お茶を取ってきてくれた。


「あいつくるの遅そうだしお茶でも飲んで待ってよ」


「そうかな?セドは結構適当だけど…来るんじゃないかな」


 そうは言いつつもお茶を取って飲む。しばらく雑談して、時計の針が11時を出した。


「ほら、来ないじゃ」「セーーーーーフッ!!」


 その瞬間、セドが滑り込んできた。顔に汗を垂らしながらも満足げにドヤりとした表情をしている。


「…呆れた。少しは早めにきなさいよ」


「間に合ったんだから良いだろ?」


「何かあって遅れたらどうするのよ」


 二人は早速言い合いを始めた。


「まぁまぁ、セドも時間通りに来たんだし、時間を気にするならお店に行こう。早くて損はないんでしょ?」


 そういうと、サラハちゃんは「そうね、さっさと行くわよ」と言ってカバンを肩にかけ、コップを元の場所に戻した。


◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆


 穴場の雑貨屋さんは、いつも怪しげなお兄さん?が店番をしている。


「あっ!君は…オルガンテさんのところのチェカちゃんだね!」


 私たちが入るとひらひらと手を振ってにこやかに挨拶をしてきた。


「こんにちは。今日はルドピーを狩るための…ええと、くつのトゲトゲを買いに来たんですけど…」


 名前がわからなくて、恥ずかしいことになっちゃった。


「ああ、スパイクなら左奥にあるよ」


 奥の棚には靴に巻きつけるタイプのスパイクが二つと、靴に初めからついてるやつが一つ。私たちは3人だ。


「セド、あんたはよく動くからこの着脱可能なやつにしときなさいよ。普通の地面でスパイクじゃちょっと走りづらいだろうし。チェカはどうする?」


「うーん…」


 最近はサラハちゃんから練習用の弓を借りて的で練習してるけど、まだ全然上手じゃないし…。私もルドピーを捕まえる係なのかな?


「じゃあチェカもセドと同じやつにしよ。私はどうせあまり動かないから、今回は買うのをやめておく」


 サラハちゃんはこういう時にテキパキ決めてくれる。時々教会の他の子が性格がキツイとか言ってるけど、私みたいにのんきな性格にはちょうど良い。


「あと何か買うものある?」


「えーっと…、あ!袋がいるかな。お肉用の」


 ルドピーの依頼は毛皮もお肉もいるらしい。今まで薬草の依頼ばっかりだったから、それ用の袋しか持ってない。


「液体が漏れ出さないやつね。結構高いと思うけどチェカお金持ってる?」


「うん、ちょっと多めに持ってきたから」


 オルガンテから貰ってちょっとずつ集めてたお小遣いと依頼で頑張ってためたお金を合わせたらそれくらい買える。


「セドは?」


「どうせまともなもの買わないわよ」


 棚でゴソゴソしてたセドは振り返って「ひっでー言い方!」と声を上げた。その手には膝当てがある。


「まぁそんな転んだりなんてしねぇけど、あったほうがいいかなって…」


「はい。じゃあさっさと買いましょ」


「はーい」


「ノーリアクションかよ!?」


◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆


 その日の朝10時。フィッツィお姉ちゃんは狩の約束をしてから全然会ってない。ご飯は後で自分の部屋に持って行って食べてるみたい。今日の朝ごはんもいなかったし、ちょっと待ち合わせの時間に来るか不安になってきた。


 今日はいつもより早めの9時45分に着くように出発したのに、サラハちゃんはもういて、いつも通りお茶を用意してくれた。53分ぐらいにセドとロドさんが。そして…


「はぁーい、到着でーす」


 「ちょっと遅れちゃった」と言いながらフィッツィお姉ちゃんが2分にやってきた。


「今日はよろしくお願いします。ロドと言います。こっちはセド」


「うんうん、チェカから聞いてる!じゃあ早速行こう!」


 フィッツィお姉ちゃんは大体いつもあるルドピーの依頼を取るとカウンターに持って行った。私たちもあわてて荷物を持って追いかける。いつものところじゃなくてレタカさんのいる高ランクの人用のカウンターだ。


「すみませーん!この依頼を合わせて5人で受けたいんですけどぉ」


「はい。臨時のパーティメンバーですね?でしたらカードをお願いします」


 私たちのカードを集めて渡す。あ、ロドさんのDランクのカードは緑色なんだ。


「…確認が取れました。他に確認事項などありませんね?」


 私たちがうなずいたのを確認してレタカさんは頭を下げた。


「それでは、無事に依頼が達成されることを祈ります」


 フィッツィお姉ちゃんはレタカさんの方を見ずにギルドのドアに向かって歩き始めた。私は、なんだか嫌な感じがした。


 ギルドを出たらフィッツィお姉ちゃん、セド、ロドさん、私、サラハちゃんの順番で歩き始めた。とは言っても、フィッツィお姉ちゃんはちょっと先で歩いてる。


「なぁチェカちゃん。俺はあのBランクの魔人の嬢ちゃんを知らねぇんだ。ちょっと教えてくれるか?」


 いつも屋敷の人の名前をあげたらロドさんはだいたい知ってるけど、フィッツィお姉ちゃんのことは知らないみたい。


「えっと、フィッツィお姉ちゃんは四年くらい前から屋敷にいる人で、王都にある学院の生徒なんです。だから夏休みとかしかいなくて」


「なるほど、Bランクになってすぐ学院にいりゃあ名前もそんな広がんねぇな」


「ロドさんはどうしてフィッツィお姉ちゃんが魔人だって分かったんですか?」


 フィッツィお姉ちゃんのことを知らないし、耳とか尻尾があるわけでもないのに。


「ああ、確証があったわけじゃねぇけど、あの人チョーカーつけてんだろ?大体の魔人は耳とか尻尾を隠すために魔石の飾りをつけてんだよ」


「魔石…?」


 一番後ろを歩くサラハちゃんが近づいてきた。


「魔力を貯めておける意志のことよ。魔力を使う道具には大抵ついてるわ」


 ほら、と言って差し出された弓を見てみると、持ち手の近くに小さなとうめいな石がついている。


「きれい。宝石みたい」


「実際あまり意味なくアクセサリーにする人もいるみたいよ」


「まぁ、魔石は高いからそんなの金持ちだけだな。んで、どんなってんのかは知らねぇけど魔人は一部の魔力を魔石に入れとくことで姿を人間にできるんだよ」


「へぇ」


 そういえばハイルさんはネックレスと髪飾りをつけてるし、オルガンテもピアスとかをたくさんつけてるなぁ。あれ?でもガイアスさんもブレスレットを付けてるし…あれは魔石じゃないのかな?


「人ってもんは見た目が違えば差別するもんだからな。魔人と人間の違いが限りなく無くなったって今は国同士で争ったりしてらぁ。いくら魔人の方が普通強いとはいえ魔石があって助かるだろうよ」


「…」


 オルガンテも魔人らしいけど、じゃあ本当はどんな姿をしてるんだろう…。

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