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星空の下

 二階は私とセドの部屋がある階だ。部屋は一応8部屋あるんだけど、そのほとんどが物置になってる。家族で住んでる人も、仲間と住んでる人もいる。あと、セドみたいに時々お客さんも来る。そのセドとロドさんが住んでるのが201号室だ。


「セドとロドさんはどんなことにお水を使ってるの?」


「いや、フツーに風呂とかしか使ってねーけど。いっぱい使ってるやつは長風呂してんじゃね?」


 頭の中にたくさんお水を使ってる部屋の人数人を思い浮かべる。


「うーん、そんな感じはしないけどなぁ」


 201の向かいの202は私とオルガンテの部屋、その隣の203の部屋をコンコン、とノックをすればドアが開いて赤いかみが見えた。


「あら、どうしたの、チェカちゃん?」


「えっと、いまみんなが何にお水を使ってるのかちょうさしてるんです。アイリーンさんはどうですか?」


「そうねぇ…風呂とかを除けば道具の保管によく水を使うわ。チェカちゃんとセドくんは何故調査を行なっているの?」


「だってよ、自分の部屋以外の水を使ってたり大量の水を使ってるやつがいるって聞いたから、不公平じゃんか」


「そうかしら?別に被害を被っているわけじゃあないんだけどね。長期間空けている人も、ずっと居座っている人も家賃は平等よ。水道や電気は使った者勝ち状態だけど、なんでもそこら辺は屋敷の主が費用を出しているらしいわ」


「え、そうなんですか。よく知ってますね」


 私はオルガンテを手伝っているのに、そういえばどこからお金が出てるのか知らなかった。アイリーンさんはふ、と笑うと丸いメガネをおでこにあげて髪を触った。


「私はオルガンテの同僚よ。彼から話を時々聞くのよ。ここの主はよっぽどの道楽者のようね。設備と比べて家賃は低いし、足りない分はその主に請求すれば出してくれる、とオルガンテは言ってたわ」


 「露天風呂まで作るなんて、きっと主は風呂が好きなのね」といういらないじょうほうを最後に、アイリーンさんは部屋に戻った。


「…どうする?」


 もんだいが無くなっちゃったから、「じっちしょうさ」っていう言い訳ができなくなった。


「まぁ、困ってないなら…いやまてよ、じゃあなんで空き部屋の水道使ってるやつがいるんだ」


 そのもんだいの空き部屋は三階にある。三階はBランクの人用の部屋が15部屋ある。部屋のなかは大体おんなじ。空き部屋は301から303、307、314と315、あとは例の309。


「304はソン・リーさんの部屋だよ。セドも会ったことあるでしょ?」


「あのよく飯作ってる、デカい人か」


「うん。前はあいぼうの人と住んでたらしい。305の人は全然見たことないかな。306はメルケキさんだよ」


 ガチャ


「呼んだかな?」


「うわっ!!」


 突然ドアが開いてメルケキさんが顔を出した。


「地獄耳かよ!?」


「うん、当たり。何か用?」


 チラリ、とセドと目を合わせる。


「空き部屋のはずの309で、なぜか水を使ってる人がいるんです。メルケキさんは知ってますか?」


「え、知らなーい。隣の部屋のやつなら知ってるんじゃなーい?」


 メルケキさんは茶髪にメガネで服も真面目そうな見た目をしているのに、けっこう適当だ。


「面白いことあったら教えてね。ソンはいじっても面白くないし、シャスエルは二階に移っちゃったから退屈なんだよね〜」


 「じゃね」という短いあいさつと共にメルケキさんはドアの向こうに姿を消した。


「…変なやつばっかだな」


「うっ、反論できない」


 元シャスエルさんの部屋、現空き部屋の307、その隣の308も全然人がいない。


「309…ここだね」


「誰も住んでないんだよな?」


「多分。少なくとも私はみたことない」


 一応ノックをしてみるけど、やっぱりうんともすんとも言わない。


ガチャ


「お、開いてる」


 ドアノブを回したセドはそう言って部屋に入ってしまった。


「ちょっとセド、さすがにかってに入るのは…」


 慌ててセドを追いかけるけど、セドはげんかんからはいってすぐのリビングに立っていた。


「…」


「セド、電気つけるよ」


 パッと電気がつく。やっぱり何もおかしなところはない。


「…セド?」


 セドは寝室のドアノブに手をかけた。


カチャ


「カギがかかってる」


「あれ、私がそうじを担当してる二階の空き部屋は全部カギかかってないんだけどなぁ」


「…部屋、出るか。なんかイヤな感じするし」


「そんな感じするかな?」


 じっとしてみても、なんの物音もしないし感じない。部屋を出ても違いがわからない。


「なぁ、本当に人いねえんだよな」


「多分…他の人も309の人を見たことがないって言ってたし」


「そっか…」


 なんかセドが変。


「じゃあカギが閉まってることについてオルガンテに聞いとくよ」


 310の人も結構いないことが多い。


「311の人はわかる?ピレッスさんっていう、金と茶色の髪をした魔人の人だよ」


「あ〜、にゃは、とか言ってる人か」


「そうそう、今は昼だしいないみたい。312はグックさんって言う傭兵の人。313はフッツィお姉ちゃんだよ」


「そのフィッツィって人と仲良さそうだな」


「うん。今は都の学校にいるけど、前はよく遊んでくれたの」


 四階はAランクの人用の部屋が7部屋。けっこう広いらしいけど、いる人は少ない。


「私も、やしきの人が全員そろってるの見たことないんだ」


「え〜?家じゃないのかよ?」


「私にとっては家だけど、長い間他の国とかで依頼をしてる人とか、いくつもこういうきょてんがある人がたくさんいるから。401もそう言う人の部屋」


 あと、ここも狭いって言う人もいるからなぁ。このやしきはどんな役職でもBランク以上なら住める。でもじっけんどうぐがなんだとか研究しせつがほんにゃらだとか言って、ここしか家がない人はあんまりいない気がする。そう、たとえば…


ギャアッ!ギャアッ!


 ちょっと開いたドアのすきまから変な音…というか鳴き声が聞こえる。


「なんだよこの音…」


 そろりそろりとセドと一緒にドアに近づいて声をかける。


「モ、モトゥさ〜ん?」


 ブチブチッ!…ゴリゴリゴリゴリ…


「な、なぁチェカ、これ中で人殺してたりしないよな…?」


「…」


「違うよな?…なんでだまるんだ……!?」


 そっとドアを閉めた。カベは防音効果とかなんとかで、ドアさえ閉めればなんの音もしない。


 「…上行こっか」と笑顔で言えばセドはカタカタとふるえながらうなずいた。まぁ、本当はモトゥさんがいつものように動物のかいたいかなにかしてるだけだと思うけどね。見た目はちょっと…いやかなり怪しいけど、話してみると気のいい優しいお兄さんだ。


 ほぼ最上階の五階。Sランクのための、たったの3部屋。右側に1部屋、左側に2部屋あって、1部屋の方ーこのやしきの主さんには会ったことがないけど、ハイルさんの部屋には何回か入ったことがある。


「正直言って汚かったんだよね。ふけつじゃなくて、散らかってるって感じ。あと、けっこう広いベランダもついてたよ」


「へー」


「…もしかして飽きてきた?でもあとちょっとだから」


 ここら辺は私が説明できることもないしなぁ。この前こっそりオルガンテにお願いしたこと。みんなに私がきたらなるべく対応してくれるようにと、それから…


バタン


「…お、おぉ〜!!」


 屋上の開放。


 すっかり日はくれて、夏のきれいな夜空が見えはじめている。


 この街はかなり栄えているけど、やしきはちょっと中心から離れた位置にある五階だての屋上だから、なにものにもさえぎられず周りを見渡せる。


「そう言えばファーミアとジュース持ってたでしょ、一緒に食べよう」


 屋上のはしからイスを持ってくる。二つのイスを半分引きづりながら運んでるとセドが何も言わずに持ってくれた。


「ありがと。夏の星がたくさん見えるね。…あの一番明るい星がーーー」


 昔オルガンテが話してくれた星のお話。

最近ようやく予約投稿というものを覚えました。

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