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屋敷の案内

 いよいよ夏がやってきた。


「なぁ〜暇すぎて死ぬ〜」


 セドはエアコンのきいた涼しい共同のリビングでジュースの入ったコップの氷をカラカラとならしながらダレてる。


「暇なら手伝ってよ。手伝ってくれたら屋敷の案内するから」


 私はそんなセドの目の前で屋敷の仕事の手伝いをしている。チラッと私の持ってる紙を見ると、こちらをジッとにらんだ。


「お前…最近俺のこと物でつろうとしてるだろ!」


「うっ…!」


 痛いところをつかれた!でも、きっとセドはもうすぐ別のまちにいっちゃう。昨日からロドさんが少しずつ荷物を片付けている。だから最後にちょっとくらいいいじゃん。


「それに俺計算できねーし」


 そういいつつもセドは一枚紙をめくった。


「それは3階の水道代」


「へー、誰が水をめっちゃ使ってるやつとかがわかるわけだな」


「それがよく分かんないんだよね」


 紙には部屋の番号と水道代が書かれてる。どこの部屋が一番水を使ったかは分かるけど…。


「誰も住んでない部屋もお水が使われてたりするし、自分の部屋のお水はあんまり使わないで共同の部屋ばっかり使う人もいるから」


「ずりー」


「まあ、けいやくで共同の部分はある程度自由に使っていいってことになってるから」


「でも不公平じゃねーか?…よし、こうなったら『じっちちょーさ』ってやつに行こうぜ!ついでに案内してくれよな」


 セドはそう言ってジュースを飲み干し、流しにコップを置いた。まぁ、なんか違う気がするけどいっかと思って、屋敷の案内が始まった。


「まずは外から行く?」


「おっけー」


◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆


 屋敷は全体をぐるっと塀に囲まれている。

門から芝生や花の中を通る道を通れば本館につく。


「ここら辺の植物はオルガンテとソンさんとか、いろんな人がお世話してるみたい」


「そういえばここっていつからあるんだ?」


「ハイルさんとガイアスさんと、あともう一人のSランクの人が作ったらしいよ」


「らしいって…会ったことねーの?」


「うん。私以外でも会ったことない人はけっこういるみたい。オルガンテは会ったことがあって、その人はぜんぜん屋敷にいないから代わりに管理人をやってるんだって」


「知らねーやつの家に住んでんのか…?」


 セドは混乱した顔をした。ちょっと面白い。


「あと、時々ある木は果物が取れるんだよ。今はまだ花が多いけど…」


 分かれ道を左に進めば倉庫がある。倉庫、というより別館みたいな感じだけど。


「倉庫の一階は倉庫だよ。あ、勝手にさわらないでね」


 ガチャリと扉を開けるといろんなものが見える。


「うをぉ!なんだこれ!杖か?こっちはなんだ?」


「私も分からない。みんなの仕事道具だからね。倉庫の二階は立ち入り禁止だし」


 コツ、コツと一階の奥を目指す。


「やっぱりあんまり知れることねーな。次行こうぜ、次!」


 そう言ってセドが引き返そうと振り返った瞬間


「うわああああああああっ!!」


「あ、何っ!?」


 セドはガクガクと震え、壁の方を指差した。布を被せられた大きなものがある。布の下から何かが見えている。


「…うううう、腕ダァ!!」


だらりと垂れた人の手。


「………」


バサッ!!


「…人じゃないよ」


 近づいて思いっきり布をとれば全体が見えた。確かに、肌色で人の形をしてるけどこれは…


「人形だね。知らない?王都の貴族とかなら持ってるらしい、人そっくりの動く人形」


 セドはツンツンと人形をさわって、「趣味悪いんだな」とつぶやいた。


「他にも乗り物とかあるけど、触っちゃいけないって」


「…もういい、見れて面白いとこない、それより明るいところにいく」


 セドはそういうと足早に倉庫を出て行った。次…倉庫のうらにはお墓があるけど、セドにはつまらないだろうし本館に戻るか。


「玄関には屋敷にいる人の名前が書かれてるボードがあるの。これで大体のご飯の人数をかくにんしてるんだって。で、ご飯の時間になったら階段のとこにあるちっちゃな扉を開けてヒモを引っ張ればそれぞれの部屋に聞こえる鈴の音がなるの」


「大体の人数でいいのか?」


「うん。なんか食べない人もいるし、余ったらたくさん食べる人がその人の分まで食べたり、次の日とかに勝手に食べる人がいるから。ご飯作るのは当番制だよ。ちなみに代わってもらうこともできる」


 玄関にはボードや靴箱、杖やかさ置きがあって扉を開けると左側にリビング、右側にダイニングがある。リビングにあるテレビのそばにはざっし入れと本だながあってごちゃごちゃしてる。


「まーここら辺は俺も知ってるからなぁ。あ、おかし箱になんかねーかな」


 ゴソゴソとセドはおかし箱からファーミアというふわふわしっとりしたお菓子を取り出した。


「…自分の家みたいに」


 ついでにジュースを取り出しセドはルンルンでろうかを曲がった。


「この部屋は…なんていえばいいんだろ…」


「とりあえず開けるか」


 扉を開ければ机や本だなとかが見える。私も時々この部屋をつかって仕事をしてる。


「ここの本だなとリビングの本だなはどう違うんだ?」


「こっちは真面目な本だよ。地図とか、図かんとか、いろいろ。同じパーティの人が作戦かいぎを開いてるの」


「おお!なんかかっけーな!」


 かべにはられている地図にはいろいろ書き込んであってもうぐちゃぐちゃだ。新しいの買わないのかな。


 ろうかの左側には共用のお風呂と洗濯機。

それぞれの部屋にも小さいのがあるけど、布団とかマットはここで洗うし、何よりここのお風呂は…


「外につながってるんだよ」


「おお!空が見えて気持ちいいな!でも冬は寒そう…」


「お湯につかってたらそんなに寒くないし、むしろちょうどいいよ。ダメなところは葉っぱとか虫とか入ってくるところ」


 着替え置きの隣の人がロッカーを開けてアミを取る。


「このアミでささっとそうじするの。はい、ちょっとやってみて」


 セドがくつ下をぬいでお湯に入る。といっても、今はお水なんだけどね。水面をすべらせるようにアミを沈めて進めれば、すぐに葉っぱと他のゴミが入った。


「はい、バケツに入れて。これをくり返すの。大体使う人がそうじするんだけど、みんなそうじしたくないから誰かがそうじするのを待ってるんだよね」


 私も昔はよくオルガンテと入ってたなぁ。夜に入るとよく星が見える。オルガンテはなんでも知っていて、星についてもよく話してくれた。私はその話を聞くのが好きだった。


『あれがラルド。神話に登場する英雄にちなんで名付けられた。その隣がメリ。ラルドの妻で、民衆を希望へ導いたと言われている』


 星の話をするオルガンテの顔はどこかなつかしそうで、悲しそうだった。


「…次は二階かな」

提出物を期限までに提出できない種の人間です。超不定期投稿に目を瞑っていただけるとありがたいです。

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