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探検希望(望み薄し)

 一階に行くと、もうご飯はほとんど出来てた。今日のご飯当番はBランク冒険者のソンさんだ。ソンさんは体が大きくてゴツゴツしてるけど静かで優しい人だ。


「ソンさん、オルガンテ、何か手伝うことある?」


「…台を拭いてコップと飲み物を用意してくれ」


「それ終わったら食器出してくれ。あとは他の奴らに知らせてくれ」


「はーい」


 木目に沿って台を拭く。長くて広いテーブルだけど何回も手伝ったし慣れてる。それから玄関にあるボードを見て今誰がいるのかを見て、人数分コップを出す。セドはお水とかお茶よりジュースのほうがいいのかな。


「あ、今日シチューなんだ」


 キッチンに入った瞬間美味しそうなシチューの匂いがした。シチューなら丸いあのお皿だな。引き出しからお皿を取ってお鍋の横に置く。あとはみんなに知らせるだけ。


 勝手にみんなの部屋に入っちゃいけないし、部屋の数は多いからいちいち誰それの部屋にノックしてって5階まで知らせていくのも手間だから、ここではベルを使ってる。


 階段近くにある取手を引くといくつかのボタンが出てくる。そのうちの緑のやつを押すと、屋敷全体にチリンチリン、とベルの音が鳴る。これはどの部屋にいても聞こえる。


 みんなが来るのをちょっと待ってると、ある事に気がついた。


(セドとロドさんはこのことを知らないかも…)


「ええ、そうなの。きっかけは私だけど、Bランク冒険者なのは夫の方で…」


 でもそれはいらない心配だったみたいで、アイリーンさんと一緒に降りてきた。2人はアイリーンさんと知り合いになったみたい。みんなが席についた。


「いただきます」


 みんなでそう言ってご飯を食べ始めた。


◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆


 セド達と話してるとすぐにご飯は食べ終わった。いつもはテレビを見たりしてちょっと休憩するんだけど、セドに「部屋で話そう」って言われた。


「え、でも私の部屋はオルガンテも居るから…」


 そう言ってチラッとオルガンテを見ると、オルガンテはちょっと手を上げて、


「俺は仕事の話でアイリーンの部屋に行くから」


 って言ったから、セドが私の部屋に来る事になった。


「で、何を話すの?話すだけなら下でもいいじゃん」


「いや〜俺はこの前チェカに街を案内してもらえなかったじゃんか?だから今度こそ街を案内してほしくて」


「別にそれくらいいいいけど…いつ?」


「俺はいつでも。それだけじゃなくてな、チェカにこの屋敷を案内して欲しいんだよ」


「え?お昼に軽く案内したよね?」


「ちげーよ、探検だよ!昼に案内してないとこ!俺一階と二階しか知らない」


「でも私もあんまり知らないよ。危ないかもしれないし勝手に入るのはいけないこと」


「つまんねーこと言うなって!」


 セドが私の背中をバシバシ叩く。ちょっと痛いかも。


「それに今から探検したらご飯から帰ってくる人たちに見つかる…」


「それは確かに。じゃあ別の日に探検!」


「いや、何も言わずにやったらダメだよ…」


「それじゃつまんねーよ…とりあえずチェカの部屋から案内してくれよ!」


「ふぇ?」


 そういうとセドは立ち上がって扉を開けた。


「ちょっと!別にいいけど…なんか言ってからにしてよ」


「わりーわりー」


 特に反省してる感じもないけど、教会の時みたいに本人はたいして気にしてないんだろうな、と思って諦めて案内する事にした。


「えっと…大したものないけど、本棚は勉強の本と、図鑑とか、あとちょっと普通の本」


「……」


「クローゼットも普通のものしかないかな。お出かけする用の服はあるよ。もちろんドレスじゃないけど」


「……」


「あとは…どうしたのセド」


「つまんねー!もっとこう、ワクワクするようなもんとかねーのかよ!特別な宝物とかさぁ!」


「宝物…じゃああれかな」


 上から2番めの引き出しを開ければ、さらに小さな箱がある。それを取り出して机の上で開ける。


「うぉお?」


 出てきたのは小さな金の鎖のようなブレスレットや小さくて普通のヘアピンとかの小さなもの。


「ここら辺は貰ったものとか大切なものが入れてあるの。大きさ的に入んないやつは一個下の引き出しに入れてる」


「へー。んで、これ何?」


「えっと、私のお母さんから貰ったの。もうあんまり覚えてないけど…」


 ギリギリ覚えてる三歳の頃の記憶。見た目は私と似てたと思う。優しく私のことを撫でてくれて…。


(あれ?)


 何か、大切なことを忘れてる気がする。


(お母さんは死んだ。オルガンテがそのあと私を育ててくれた。でもなんでお母さんは死んだんだっけ。オルガンテはお母さんが生きてるうちに来た?死んでからだった?)


 なんだかうまく思い出せない。


「おーいチェカどうした?」


「…なんでもない。えっと、こっちはフィッツィっていう私とよく一緒に遊んでくれたお姉さんから貰ったヘアピン、これはハイルさんとガイアスさんに貰ったリボン」


「貰ったもんばっかだな。自分でみっけたもんとかねーのかよ」


「ない。…けどこれから増えるかも。今まで本ばっかり読んでたけど、冒険者になったから。ここにないものでも冒険者になる時にオルガンテから貰ったナイフとかも宝物だよ」


「ほーん…」


「あと面白そうなものあったかな…他はオルガンテのものが多いし…。もうこの部屋に今見せられて面白そうなものはないかも」


「許可なきゃ見ちゃいけないのは面倒くせーな。うし、屋敷の探検は諦める」


 その言葉にちょっとホッとした。巻き込まれて怒られるのは嫌だから。


「だから!本人達に直接案内してもらいてーんだ!」


 取り消し。面倒くさいことになりそう。ていうか、いない人が多いから無理だと思うな。そのあと、今日はもう夜だしセドは自分の部屋に戻って行った。


 明日からナイフの使い方教えてもらって、セドをほっとく訳にはいかないから付き合って…教会で勉強しなきゃ…。そうだ、お母さんのことオルガンテに聞こう、って思ってたのに何故だかオルガンテが部屋に戻ってくることにはすっかり忘れてた。

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