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サプライズゲスト

 野犬に負けないくらい強くなって、依頼に連れて行ってもらう。そのためには強くなればいい。だから、


「私に、ナイフの使い方を教えてください」


 オルガンテに頭を下げてお願いした。


「なんだ、それくらいいいぞ。夕方くらいは俺もこっちにいるし、倉庫で4時半からにしよう。それでいいか?」


「うん」


 倉庫、っぽい建物。そこらへんのお家はすっぽり入っちゃう大きさだ。私はあんまり入ったことないから中がどうなってるのか知らないけど、みんなはあそこから大きな道具とか、乗り物を出したりしてる。なんか秘密基地みたいで少しワクワクする。


 今日はもう何もすることはない。ベッドにのって髪を解いて目覚まし時計をセットする。


「ああ、そうだ。明日二階の部屋を一つ片しておいてくれ。客が来るんだ」


 そう言ってオルガンテはちょっと悪そうに笑った。お客さんは時々くるし泊まる人もいる。オルガンテはやしきの管理を任されてるから別におかしいことはないのに。


「…?分かった。じゃあ、おやすみなさい」


「おやすみ、チェカ」


 カチリ、とオルガンテが電気を消すと部屋が暗くなって、私も目を閉じた。


◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆


 次の日。いつも通りの時間に起きて、朝ごはんを食べて、オルガンテを見送って、そういえば部屋の掃除をしなきゃ、と思い出した。二階のどことは言われてないし、ほとんどの部屋は大体同じだから、私たちの部屋の向かいにある部屋を掃除しよう。


 私とオルガンテの部屋は二階の端っこにあって隣はアイリーンさんの部屋しかない。ドタバタと片付けをしてたらガチャリ、と隣のドアが開いた。ひょっこり顔を出したのはアイリーンさんだ。


「忙しそうだねチェカちゃん。手伝おうか?」


「いいの?」


「うん。ちょっと前に大きめの仕事したからしばらく休みを貰ってるの。今日はあいつもいないし、まぁ、部屋でゴロゴロして過ごそうかなって思ってたし」


「えっと、じゃあ今部屋にあるものを別の部屋に移しているのでお願いします」


「はーい」


 2人で物を移して、お掃除して、必要な物を運べばすぐに終わった。


「ありがとうございました。じゃあ教会に行ってきます」


「はぁい、いってらっしゃい」


 アイリーンさんに見送られていつも通り教会に向かった。


◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆


(今日はセドと会わなかったな)


 1人で買い物をしながら思う。サラハちゃんは友達だけど来る時間が少し違うし来ない日もあるから教会でいつも一緒にいるわけじゃない。周りの子とは話さないわけじゃないけどそこまで仲良くない。ここ最近いろんな事があったから寂しく感じる。そういえばセドとロドさんはどこに泊まってるんだろう。


「ただいま」


 玄関の横にある外出中ボードと在宅ボードを見ると特に変わったところはない。お客さんはまだ来てないみたい。買ったものを片して自分の部屋へ戻ろうとした瞬間ーー


「おっじゃましまーす!!」


「っ!セド!?」


 ドアが突然開いてセドが入ってきた。びっくりしてる私にロドさんが声をかけた。


「…お邪魔します。これから少しの間よろしくな、チェカちゃん。……って、もしかして、俺たちのこと、聞いてない?」


「ああ、言ってないぞ」


 さらにその後ろからオルガンテが入ってきた。そして在宅ボードの下のお客さんのところに「セド」、そして「ロド」と名前を書いた。


「…なんで教えてくれなかったの?」


「サプライズサプライズ。いい驚きだったろ?」


 ポスっと頭をなでられる。確かにちょっと嬉しいから何も言えない。


「さーてと。俺は今日の飯当番手伝うからチェカは2人を案内してくれ」


「うん、分かった」


 私の後ろにセド、その後ろに荷物を持ったロドさんが続く。2階に上がって掃除した部屋の前まで来た。


「ここがお部屋。向かいの部屋は私とオルガンテの部屋だから何か困ったことがあれば聞いてね。その隣のお部屋も使われてはいるけど人が居ないことが多いから」


 鍵を取り出してドアを開けて部屋を見渡す。うん、どこも変なところはない。


「おー、思ったより普通。俺たちが普段とまってる宿以上ホテル未満って感じ」


 そんなセドの感想に私から鍵を受け取りながらロドさんが苦笑する。


「分からなくはねぇけど堂々と言うなよ。ごめんなチェカちゃん」


「初めて来るお客さんはよくそう言うから別に気にしてないです。それにここはお客さんとか、私とオルガンテみたいな人のための部屋だから、みんなが想像してるようなすごい部屋は上の階のお部屋」


 入ったことはないけど、ハイルさんの部屋を一瞬のぞいたことがある。ごちゃごちゃしてたけどこの部屋よりもずっと広かった。なんだかよく分からない機械もあったし。


「壁を汚したり物を壊したりしなきゃ何しても大丈夫だそうです。あ、水の使いすぎとかはもちろんダメです」


「要するに常識の範囲内でってことだな。まぁ普通に宿みたいに振る舞えば大丈夫だろ」


 そう言ってロドさんはなれた様子で荷物をおいて部屋を見て回り始めた。テーブルや冷蔵庫、洗面所とは普通の宿とあんまり変わらないらしい。でも…。


「…湯船がある」


「…冷暖房ついてるぜ」


「武器の手入れ道具まである…ここらは普通とは違うな」


 びっくりするところもあるみたい。普通の宿には泊まったことがないからよく分からないけどみんな驚くから珍しいのかな。そのあとは共用の部屋とかを案内して、2人と分かれて自分の部屋に戻った。


 どれくらい居るか聞いてないけど、あくまで「お客さん」らしいから1ヶ月もいないだろうな。多分依頼が完了される時まで入るだろうけど。


 オルガンテにナイフを教えてもらえることになったし、セドとロドさんがしばらく一緒にいてくれるっていう嬉しい驚きもあった。


 ご飯まで微妙な時間だ。下に行って手伝おう。そう思って階段を下って行った。

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