あいつら、ばかだから
ある山にきつねの兄弟が住んでいました。
さむいさむい冬の夜。
小高い山の頂で、兄弟ぎつねはならんで座り、夜空を見上げていました。
寒空には、まるいお月さまと、いっぱいの星が輝いています。
すると、スッと星の光がひとすじ流れて、あっという間に消えました。
「あんちゃん、いまの流れ星だね」
「そうだね」
「まえに里の人間が、流れ星に手をあわせてたのをみたけど、なにしてたのかな」
「ああ。それは、おまじないだ。
流れ星が消えるまでに、三回願いごとを言えば叶うと人間は信じてるんだ」
「ほんとにかなうのかな」
「どうだろう。流れ星は速いから、三回言うだけでも難しいだろうし」
「なら、あんちゃん。みじかいお願いなら、だいじょうぶかもしれないね」
弟ぎつねは前足を合わせました。
じっとみつめていると、また流れ星が夜空に輝く線を引きます。
「モチたべたい! モチたべたい! モチたべたい!」
流れ星が消えるほうが早いか。
それとも願いごとを言い終えるのが早いか。
「いまの、まにあったよね、あんちゃん!」
兄ぎつねにはわかりませんでした。
「なんだ、お前。餅なんか食べたいのかい」
「うん。あんちゃんはたべたことあるの?」
「ないな」
「食べたらすごくうまいから、里の人間はわざわざ集まって作るんじゃないかな」
「美味いなら一人占めすれば、いっぱい食えるのに」
兄ぎつねは、遠くからこっそり見た餅つきを思い出しました。
臼の中の餅を取ろうと手を出しては、杵で叩かれそうになり、急いで手を引っ込める人間。
「きっと、みんなでちからをあわせないと作れないんだよ」
そういわれてみれば、泥棒が相手なら出した手でなく頭を殴りそうなもの。
もしかすると、あの人間、餅泥棒ではなく、別のことをしていたのかもしれない。
それがなにかは、さっぱりわからないけれど。
「でもなあ。餅をのどにつまらせて、死ぬ人間もいるらしいぞ」
「命をかけてもいいくらい、うまいのかもしれないよ」
「生きるために食べるのに、食べて死んじゃあ元も子もないだろうに」
「でも、人間ってそういうところあるよね」
「ああ。あいつら、ばかだから」
「あっ! また流れ星だ!」
弟ぎつねがびっくりして声を上げました。
兄ぎつねも夜空を見ると、いっぱいの星が次々と流れていきます。
でも、どうしたことでしょう。
その流れ星は落ちてくるのではなく、上へ、ななめに飛んでいきます。
しかも、うるさい音を立てながら。
また、弟ぎつねは前足を合わせました。
「人間がかしこくなりますように! かしこくなりますように! なりますように!」
流れ星は、まだまだ続いていました。
山の向こうに消えていきます。
遠くのどこかが、夜明けのように明るく光りました。
雪崩みたいな大きな音が何度も響いてきます。
「いまの、まにあったよね、あんちゃん!」
「どうだろうな」




