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6.妹の英里

 



 双子の妹――英里――は最初、鏡と姉の区別がついていなかった。


 自分の姿が鏡に映ると姉が現れ、姉の鏡に映った姿が自分だと信じていたのだ。


 幼い頃は姉が転ぶこともあったし、それを妹が助ける場面も存在した。


 それが徐々に妹が助けられることが多くなる。



 鏡に映るのが、実像を映した虚像であるならば、姉が実像で妹は自分が虚像なのだと思うようになっていく。


 周囲の評価は妹の中では濁っていった。







 そんなとき親の都合で夜遅くなるために幼馴染の子の家で夕食を頂き、親が帰るまで預かられることになった。


 そこで宿題をしているときに、そこのお兄さんが姉妹の違いを指摘する。


 つまり利き手の違いだ。


 お兄さんも左利きだったために苦労した分、その違いを直ぐに見つけた。



 そこで語られる左利きの不遇。


 日常生活に潜む、左右の違い。


 鍵開けの捻りや自転車のペダルがチェーンの位置で違ったり、電車に乗るための駅の改札、自販機のボタンの配置、捻るタイプの蛇口、トイレのドア、包丁やハサミなど。


 右利き優先の世界。左利き用の品もあるが、日常では、学校では、共用であるからこそ多数派の右利き用で作られている。左利き用が逆に使い慣れていないからこそ使いづらかったりもするみたい。


 左利きには生き難いと言う話。ストレスからか平均寿命が短いという。


 スポーツでは左利きは有利だというのは対人戦、しかも個人戦が特に良いという。それは右利きが多いために左利きとの対戦経験が少ないから、やり難さがあるのだと。


 しかし団体戦のチームで行うものだと逆に排除されやすいとも。


 また食堂などで食べる際に机の左端に行きやすい行動をしていたりするようだ。右利きの右側だと左腕と右腕がぶつかることがあるから自然と邪魔にならない様に移動する癖が身に付く、など。



 双子の妹は、自分が悪いわけではないという弁護をしてくれるその幼馴染のお兄さんに救いを見た。


 それは光明であり、希望である。


 だからと言って、何がどう変わったわけでもない。それでも気分が良くなったのだ。





 姉といないときを見計らって、いじめを受けていた。


 だから、左利きの子と仲良くするようになって行く。



 もし姉ではなく自分が右利きだったなら、と思いながら姉に羨望を向ける。


 運動を巧く熟せる姉。素早く宿題を片付ける姉。羨ましく思うも、それだけではなく、悔しくて嫉妬もあった。高が利き手の違いで、遺伝的には同じはずなのに、と。





 想像の中で自分を姉の重ねる。





明日次回7.虚像

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